国産ミニバンを中心に最近のトレンドとなっている「オラオラ顔」。直近の動向はどうなっているのでしょうか。
■ファンは健在も、SUVに流れるユーザー増?
近年、ミニバンを中心に人気を集めるのが「オラオラ顔」と呼ばれる強面のフロントマスクデザインです。賛否の分かれるデザインですが、そのブームは今後も続くのでしょうか。
オラオラ顔は、ミニバンを中心に採用されている威圧感のある強面なフロントマスクデザインです。
その特徴は、大きな開口されたフロントグリルや吊り目を基調としたヘッドライト、メッキパーツを多用しているといった点が挙げられ、どのフェィスデザインも威圧感のある印象を与えています。
近年では、各メーカーのミニバンには必ずといっていいほどオラオラ顔モデルがラインナップされており、その人気ぶりがうかがえます。
また、ミニバン以外でも、軽自動車やコンパクトカーなどでも採用されている車種があることから、幅広いユーザー層に受け入れられていることがわかります。
しかし、このオラオラ顔は多くのファンを持つ一方で、「ダサい」「みっともない」といった批判の声もあり、たびたび議論を呼ぶことでも有名です。
では、賛否の分かれるオラオラ顔の現状や、今後の展望はどう見られているのでしょうか。
直近の2020年9月の新車販売台数ランキングにおいて、オラオラ顔と称されるモデルの順位をみていきます。
販売好調なのは、4位にトヨタの高級ミニバン「アルファード」、7位にタンクと統合した「ルーミー」、9位にトヨタの5ナンバーミニバン「ヴォクシー」、12位に日産の人気ミニバン「セレナ」、15位にヴォクシーの兄弟車「ノア」となっています。
売れ行きではトップ20内に5車種がランクインしており、好調ぶりがうかがえます。では、実際の販売現場におけるユーザーの反応はどうでしょうか。
オラオラ顔モデルを多数ラインナップするトヨタの販売店スタッフは以下のように話します。
「今もオラオラ顔は安定した人気があります。とくに、アルファードやヴェルファイアが、若い世代には存在感があるデザインという点、高年層には高級感があるという点で、高い評価を得ています。
しかし、かつてほど右肩上がりではなくなったのも事実です。根強いファンがいらっしゃるのと同時に、まったくハマらないという方もいて、二極化してきている印象があります。
また、ハマらなかったお客様のうち、SUVを購入するという人が増えています。
最近では、存在感や使い勝手では『RAV4』、高級志向では『ハリアー』、コンパクトでは『ライズ』や『ヤリスクロス』が人気です。
現在はSUVブームも加速しているので、オラオラ顔でなければSUV、という流れは今後も続くのではないでしょうか」
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販売台数にも現れている通り、オラオラ顔は現在も販売は好調なようです。しかし、「好き嫌い」が分かれているデザインであることも、販売店スタッフのコメントからわかりました。
そして「嫌い」と感じたユーザーは、ミニバンではなくSUVを選んでいるようです。
オラオラ顔の人気は今も続いていますが、SUVを筆頭にほかの選択肢が多くなっていることで、今後は「好きな人は好き」というハッキリした立ち位置になっていくのではないでしょうか。
■ミニバンでは賛否両論も、高級車では威厳となる?
ミニバンでは賛否の分かれたオラオラ顔ですが、国産高級車ブランドのレクサスでは事情が異なるようです。
首都圏のレクサス販売店スタッフは以下のように話します。
「オラオラ顔と呼ぶべきかわかりませんが、レクサスの『スピンドルグリル』は、存在感やスタイリッシュさ、高級車らしい重厚感があると大変好評です。
2012年頃から各車種で採用され始めましたが、新規のお客さまだけでなくそれまでオーナーだった方からも『新しい顔の方が良い』という声を多く頂きます。
また、先日は『あおり運転に遭わないように存在感のあるクルマが欲しい』と来店したお客さまがいらっしゃいました。たしかに強面すぎるという意見もありますが、それはレクサスの『威厳』ともいえます」
スピンドルグリルが初めて採用されたのは、2012年にデビューした4代目(日本国内では2代目)の「GS」といわれています。
BMWの「キドニーグリル」やアウディの「シングルフレームグリル」など、海外メーカーではグリルデザインの統一化は進んでいましたが、日本国内ではレクサスが先駆けといわれています。
また、BMWのキドニーグリルは年々巨大化しています。なかでも、「4シリーズ」ではフロントフェイスの大部分をキドニーグリルが占めるようなデザインを採用するなどオラオラ顔を超越した造形となっています。
また、近年ではあおり運転が問題視されており、「なめられない」クルマ選びをするユーザーも現れているようです。
オラオラ顔は、強面で好き嫌いの分かれるデザインといわれていますが、レクサスのスピンドルグリルやキドニーグリルのように、それを「威圧」ではなく「威厳」や「アイデンティティ」と捉えて好むユーザーも一定数存在していました。