クルマのシートに付いているヘッドレスト。「レスト」の意味は、じつは「休む」ではありません。そして、万が一の際に重要な役割をするヘッドレストは、正しい位置にしていないと効果が発揮されないといいます。正しい調整はどのようにするのでしょうか。
■車のヘッドレスト、実は「頭」と「休憩」の意味ではない
クルマの座席には、後頭部に当たる位置に「ヘッドレスト」が装着されています。名前からして、英語が由来であるということは推察できますが、じつは英語の「ヘッド(head:頭)」と「レスト(rest:休憩)」を単純に合わせた単語ではないといいます。
本来の意味や正しい役割はいったい何なのでしょうか。
今回は、ロードサービスを全国で展開するほか交通安全の啓発活動にも取り組む、JAFの交通環境係で勤務する内藤氏に話を聞きました。
内藤氏は、ヘッドレストの役割について次のように説明します。
「そもそもヘッドレストは何のために装着されているのかご存じでしょうか。
レストと聞くと、『休む』や『休憩』という意味から、頭を休ませるためのものと思われる人もいらっしゃるかもしれません。
しかしながらレストは省略された言葉で、正式には『レストレイント(restraint)』、つまり、『拘束』という意味になります。
すなわち、ヘッドレストは頭を拘束する装置となり、シートベルトと同様に乗員保護装置となっています。
ヘッドレストを正しく調整することで、背後からの衝撃などで首が後ろにしなる、いわゆる『むち打ち症』を防ぐことができるのです」
2020年現在販売される新車のなかには、シートとヘッドレストが一体となっているものも一部あるものの、シートに差し込み、位置を上下に動かすことのできるタイプのヘッドレストが主流となっています。
ヘッドレストが動く理由は、枕の位置を調節して快適に座るためではなかったのです。
■ヘッドレストの正しい調整方法とは?
では、ヘッドレストの正しく調整するには、どのようにすればよいのでしょうか。頭が後ろにしなるのを防ぐ(むち打ち症を防ぐ)目的であれば、極力高めの位置で設定するのが単純に思えますが、そうではないようです。
前出の内藤氏は次のように説明します。
「ヘッドレストの正しい調整方法としては、ヘッドレストの頂上部が頭の頂上部と同じ高さになるように合わせます。
眼鏡をかけている人であれば、眼鏡のつるとヘッドレストの中心部が同じ高さになるように合わせるようにしましょう。
体型やクルマによっては同じ高さに合わせられない場合がありますので、その際は、可能な限り理想の位置に近づけるようにしましょう」
また、ヘッドレストの位置と密接に関わるクルマの運転姿勢についても、内藤氏は次のようによびかけます。
「運転姿勢をとる際に、頭とヘッドレストの間は隙間がないように調整しましょう。
隙間があいてしまう場合は、正しい運転姿勢ではない可能性があります。シートに深く腰掛けていない、背もたれを倒しすぎているなど、誤った姿勢で運転していないでしょうか。
ヘッドレストの調整だけをするのではなく、シートの前後位置や背もたれなどを正しい位置に調整する事により、自然と頭とヘッドレストの隙間もなくなります。いま一度、正しい運転姿勢を確認してみてください」
※ ※ ※
後席の場合、3人掛けであってもコストダウンのためか、ふたつしかヘッドレストが装備されていないクルマもあります。また、商用車の場合は後席にまったくない場合もあります。
後席に人を乗せることがある場合は、クルマの購入前にヘッドレストの装備の有無もチェックしたいところです。
そして、ヘッドレストが装備されていても、ヘッドレストを適切な位置で使っていない場合、万が一の衝突事故で十分な効果が発揮されません。ドライビングポジションとともに、ヘッドレストの調整もあわせておこなうことが重要です。