近年、高速道路の休憩施設は各地でリニューアルが進み、トイレも明るく美しく豪華に進化しました。その先陣を切ったのは、伊勢湾岸道刈谷PAに隣接する刈谷ハイウェイオアシスの「デラックストイレ」です。
■刈谷ハイウェイオアシスの豪華トイレ 16年経過した現在の姿は?
2004年12月にオープンした刈谷ハイウェイオアシスは、観覧車を備える遊園地や温泉施設、産直市場、カリモク(刈谷木材工業)の高級家具をふんだんに取り入れた飲食スペースなど、道路の休憩施設としてはこれまでにない斬新な施設として瞬く間に有名になりました。
なかでも、とくに注目を浴びたのが「デラックストイレ」です。
高級ホテルや一流デパートの豪華なトイレにも引けを取らない「デラックストイレ」は、その清潔感と居心地の良さから、トイレ内のラウンジで食事をする利用者も少なくなかったといいます。
2011年のリニューアル時と合わせた総工費はなんと2億円。とくに豪華なのは女性トイレで、床には高級なカーペットが敷かれ、フラワーアレンジメントで飾られた中央スペースには座り心地の良いソファも置かれています。
オープンから7年が経過した2011年に大規模なリニューアルを実施。現在のスタイルになりました。
刈谷ハイウェイオアシス施設管理課の担当者は、次のようにいいます。
「驚きや変化を楽しんでもらうのも、デラックストイレの大事な要素のひとつだと考えていましたので、設備が傷んできたから交換という考えではなく、新たな楽しみを提供するという考えに基づいて『花』をコンセプトに大規模なリニューアルをおこないました。
それまでラウンジの周囲に展示されていた『常滑焼』のタイルから、華やかで人目を引くフラワーアレンジメントに改装。デラックストイレの外壁にも美しい造花がちりばめられるデザインに一新しました」
先日筆者(加藤久美子)も訪れてみましたが、大規模リニューアルからすでに9年が経過しながらも美しさをキープ。無料の公共トイレとして考えると驚異的な美観維持です。
一体どんな方法でメンテナンスをおこなっているのでしょうか。
「高速道路SA・PAのトイレは原則として24時間利用できますが、デラックストイレは朝6時から夜22時までとしており、夜間は閉館となります。この夜間閉鎖があることで、デラックストイレの美しさを維持できているといえるでしょう。
閉館後、毎日、清掃スタッフが入って入念にデラックストイレの各所を掃除します。お客さまがいるとなかなかできない作業も完全に閉館していれば問題ありません」(刈谷ハイウェイオアシス施設管理課)
夜間に閉まるトイレだからこそ、毎晩時間をかけた清掃が可能ということでした。
ちなみに、デラックストイレは計2億円の工費が掛かっていますが、それよりも清掃費のほうが確実に多いそうで、とくに手間がかかっているのが床の清掃です。
通常のトイレ掃除ならタイル張りの床に水を流しておこないますが、デラックストイレはフロアがカーペット敷きになっているため水が使用できません。
水を使わずきれいに掃除し、月に1回はカーペットのクリーニングをおこなっているそうです。
■まだまだある! スゴいトイレたち
日本道路公団が解散し、民営化されて以降、高速道路のトイレ近代化にいち早く踏み切ったのはNEXCO中日本です。
「おもてなしトイレプロジェクト」と題して、最新技術を盛り込んだ驚きのトイレが管内のSA・PAに続々と登場しています。
●新東名 NEOPASA駿河湾沼津(上り)
お城のような外観でおなじみのNEOPASA駿河湾沼津(上り)には、お姫様気分を味わえるトイレがあります。
商業施設の2階にあり、柔らかさや華やかさを演出する丸みを帯びたデザインやオシャレな照明、楕円形の鏡など、女性ゴコロをくすぐる工夫が満載。なかでも1台ずつスペースが確保されているパウダールームが人気です。
●新東名 NEOPASA清水
『日本トイレ大賞~国土交通大臣賞~』を受賞したトイレがNEOPASA清水にあります。
凄いのはトイレの数。快適なロビー空間や、ユニバーサルデザイン、使いやすく清潔なパウダールームなどの最新設備はもちろんですが、評価対象となったのは、トイレの利用率のログデータを集め、そのビッグデータを独自のロジックで解析して、最適なトイレ数を割り出したそうです。
むだに多すぎず、けっして少なすぎない、“行列ができないトイレの数”をずばり算出することに成功したことが日本トイレ大賞受賞の理由です。
なお、同様の方法で算出された「最適トイレ数」は、NEOPASA清水以外にも新東名高速道路の各SA・PAで導入されています。
●東名 日本平PA
近代化トイレが初めて導入されたのは、東名高速の日本平PAです。
開放的で明るい空間を演出するトップライトの採用や、快適で機能的なロビー。そしてつねに清潔感をキープできるよう、床の素材にはそれまでのタイルからデパートで使用されているようなゴムを採用しています。
混雑が起こらないように、トイレの数とレイアウトも大きく変更しています。
●東名 EXPASA足柄(下り)
東名 EXPASA足柄(下り)では、必要なときにエリアキャストが飛んでくる「清掃依頼ボタン」の実験中です。
ボタンを押すとわずか数分でエリアキャストが到着。汚れている箇所を確認し、すぐさま清掃を実施してキレイしてくれるのですが、この間わずか約15分とスピーディに作業してくれます。
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NEXCO中日本管内のトイレでは究極のトイレ美化をおこなっています。
人の手が届かないパイプや浄化槽などの匂いを独自配合の洗浄剤を使って清掃。納豆菌や酵母菌、乳酸菌を使った洗浄剤で、尿石を食べ、その数を自ら増やして汚水槽に入り込み、さらに臭いの元から食べてくれるとのことです。
愛媛県産業技術研究所が製法を公開している「えひめAI」という洗浄剤を参考に製造した洗浄剤で、効果は抜群。1か月でほとんど匂いを感じなくなったそうです。
世界でもほかに例がないほど充実した日本の道路休憩施設ですが、これからも最新技術を駆使したユニークなトイレが登場するのではないでしょうか。