フェラーリであってフェラーリではないフェラーリ、「ディーノ」。新車当時はそうしたこともあって廉価版フェラーリのイメージもあったが、そのスタイリングやパッケージ性能などで高い人気を誇っているが、オークションではどのような評価を受けているのだろうか。
■フェラーリではなく、ディーノ・ブランドで登場
オンライン・オークションが一般化するなかで、徐々にその出品車リストにも魅力的なモデルの名前が連なるようになってきた。
今回紹介するのは、例年のペブルビーチ・オークションに代わり、RMサザビーズが開催したオンライン・オークション、「シフト・モントレー」に出品されたフェラーリ・ファンにも憧れの「ディーノ」だ。
●エンツォの息子の名を冠したクルマ
1960年代から1970年代にかけて、量産化を重要な経営課題に掲げていたフェラーリは(実際にはその親会社となっていたフィアットだが)、よりコンパクトなミッドシップ・スポーツ、ディーノを市場へと投じることで、生産台数を大幅に向上することを狙っていた。
搭載エンジンの基礎となったのは、1957年から施行された新たなF2のために設計された1.5リッターのV型6気筒だったが、そのエンジンが後にアウレリオ・ランプレディとともに開発を進めた、エンツォ・フェラーリの子息、ディーノの名で呼ばれるようになったのである。
ディーノのV型6気筒エンジンを最終的に完成させたのは、かのビットリオ・ヤーノだが、その先進的な設計は現代の目で見ても驚きを隠し得ない。
ディーノ・ユニットはその後、圧倒的な強さをサーキットで披露し、最後のフロントエンジンGPマシンとなった「ディーノ246F1」にも、排気量を2.4リッターにまで拡大して搭載された。
サーキットからオンロードへ、ディーノ・エンジンが活躍の場を変えるのはここからだ。1967年のトリノ・ショーで、フェラーリはディーノの生産化を発表した。
最初に登場した「ディーノGT」は、2リッターV型6気筒エンジンを搭載するもので、車名は「206GT」となる。
■ディーノは、タルガトップではなくクーペのほうが人気!
ディーノ206GTには横置きでエンジンが搭載され、ホイールベースの短縮に貢献している。ボディは軽量化のためアルミニウム製とされ、エンジンブロックもまたアルミニウムが採用されていた。
●1970 「ディーノ246 GT」
だがその軽量化への取り組み、そして2リッターエンジンの扱いにくさから、フィアットはディーノのマイナーチェンジを指示。エンジン排気量は2.4リッターに拡大され、またブロックはそれを容易におこなうために鋳鉄製とされている。
最高出力は206GTの180psから、「246GT」では195psにパワーアップ。エンジンフードのエアアウトレットが7個に増えたのも、246GTの外観上の大きな特徴だ。
246GTは、最終的に1974年まで生産されるが、そのなかでも大きな成功の理由となったのは、タルガトップ形式のオープンモデル、「246GTS」の存在だった。
現在では逆に生産台数の少ないクーペの246GTの方に価値が見出されているようで、今回シフト・モントレーに姿を現したのも、このクーペボディの方だ。
さらに246GTは生産時期によって、細かいマイナーチェンジを受けており、今回出品された「ティーポL」のほかに、「ティーポM」、「ティーポE」などの仕様がある。
出品車は初期に生産されたティーポLで、2010年のキャバリーノ・クラッシックでは、FCAゴールド・アワードを受賞するなど、素晴らしい経歴を持つ1台。エスティメートは30万ドルから35万ドルであったが、注目の落札価格は44万ドル(邦貨換算約4620万円)だった。
最近のクラシック・フェラーリの落札価格を見ると、比較的リーズナブルに感じるこの数字だが、やはりフェラーリとディーノというブランドとでは、それなりの差があるということなのだろうか。今後の動向に注目したいところだ。