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ハイブリッド車でもバッテリーが上がる!? DIYでのバッテリー交換が難しい訳

くるまのニュース 2020年10月27日 18時10分

最近のクルマはさまざまな部分で電動化が進んでいます。なかでもハイブリッド車は、駆動用のバッテリーだけでなく、補機バッテリーと呼ばれる、ナビやオーディオ、車載コンピュータなどシステム起動のためのバッテリーも搭載していますが、補機バッテリーが上がると、エンジンが始動できなくなってしまいます。

■ハイブリッド車はバッテリーをふたつ搭載している!?

 1997年にトヨタが世界初の量産ハイブリッド車の「プリウス」を発売してから20年以上が経過した現在、さまざまなメーカーから多様なハイブリッド車が登場しています。

 一般的にハイブリッドは、エンジンと電気モーターという異なる動力源を組み合わせたものを指します。

 たとえば現行モデルのプリウスでは、大容量の駆動用バッテリーと高出力なモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「THS-II」を搭載し、高効率化を実現しているのです。

 ハイブリッド車のバッテリーというと、この駆動用バッテリーが思い浮かびますが、じつは補機バッテリーと呼ばれるバッテリーも搭載しています。

 電動化されたクルマでも補機バッテリーが上がってしまうと、ドアの開閉やエンジン始動などができなくなってしまうのですが、それはどういうことなのでしょうか。

「ニッケル水素電池」や「リチウムイオン電池」いった種類のバッテリーは、駆動用モーターを動かすための駆動バッテリーです。このバッテリーの性能によって航続距離や燃費が決まったりする重要なもので、原則としてメンテナンスフリーになっています。

 しかし、スタート時にハイブリッドシステムを稼働させる電力は、別に搭載される補機バッテリーから供給されています。またこの補機バッテリーが、ドアやトランクの施錠やナビゲーションの電力も賄っています。

 つまり、駆動バッテリーが高性能になっても、補機バッテリーが上がってしまうとクルマを動かすことができません。しかもたいていの補機バッテリーは、ガソリン車やディーゼル車と同じ鉛蓄電池タイプなので、定期的な交換やメンテナンスが必要なものなのです。

 埼玉県の某販売店の整備担当(メカニック)であるH氏に聞いてみました。

「最近のクルマは、ナビやオーディオ、ライト類といった従来からある装備だけでなく、パワステやパーキングブレーキまで電動化されるケースが増えています。つまりそれだけバッテリー(補機バッテリー)にかかる負荷が高く、酷使している状態ともいえます。

 トヨタ系のハイブリッド車などはエンジンルームに十分なスペースがないために、後部座席の下など車内かトランクに補機バッテリーが設置されています。

 鉛蓄電池を使用したバッテリーは、オルタネーターから発電された電気を充電している間に発火性の水素ガスが発生するのですが、車内にガスが充満する危険性もあるため、この水素ガスが車外にきちんと排出できるような構造になっている必要があり、対策が施されたハイブリッド専用の補機バッテリーを使用しないといけません」

 鉛蓄電池タイプのバッテリーにはいくつかの種類があり、アイドリングストップ車やハイブリッド車には専用のものが必要になります。しかも専用バッテリーは通常のバッテリーより高価なケースが多いといいます。

■DIYでのバッテリー交換で不具合発生!? なぜ?

 ハイブリッド車の補機バッテリーは、本体の設置方法は一般的な鉛蓄電池のバッテリーと大差ないのですが、通常のガソリンエンジンように、最安値のバッテリーをネットで購入して自分で交換するというわけにはいかないようです。

バッテリー交換は比較的簡単なDIYだが、ディーラーで再設定が必要になることも

「ハイブリッド車の補機バッテリーを何も考えずに交換してしまうと、車載コンピュータもすべてリセットされてしまいます。

 いまのコンピュータは優秀で、放電と充電を繰り返した回数などを記録しており、この記録データでバッテリー交換時期などをお知らせしてくれるわけです。

 ハイブリッド車でなくても通常のエンジン車でも、そのままバッテリーを交換してしまうと、さまざまなデータがリセットされることがあります。

 バッテリー交換時には、それまでの記録を消す必要がありますが、逆に残さないといけないデータもあるのです。そのために専用の『メモリーバックアップ』機器を使用して引き継ぐデータを一時保管し、再設定する必要があります」(H氏)

 H氏曰く、少し昔のガソリンエンジン車なら大丈夫だったDIYによるバッテリー交換で不具合が出るケースが増えているそうです。

 これは過去のデータの消去と残すべきデータがうまく処理できず「フォルトコード」と呼ばれる失敗データが残ってしまい、コンピュータが不具合と判断してエンジン始動をストップしてしまうパターンです。

 これに近い現象がハイブリッド車の補機バッテリー交換でも起こるということです。そのため、専用の機材があるディーラーや販売店、整備工場などで交換してもらう必要があります。

「取り扱い説明書には『電流積算値』や『内部抵抗値』という表記になっていますが、これらのデータをリセットする必要があります。

 しかし、バックアップを取らずにバッテリー交換してしまうと、パワーウインドウが動かなくなり(挟み込み防止機能の再設定が必要)、バックギアに入れてもバックガイドモニタ(クルマがバックで進む先を画面上に表示してくれる、赤や黄色のガイド線)も初期化されてしまいます。また電動式バックドアも開かなくなるケースもあります」(H氏)

 ほかにもラジオのチューニングやトリップメータ類、時計などもリセットされてしまうなど、複雑なシステムを搭載したハイブリッド車では、自己流でメンテナンスできない部分もあると覚えておきましょう。

 従来のレシプロエンジンであれば、始動時のセルモーターの回り方でバッテリーの状態を推測できましたが、近年のハイブリッド車の場合、スタート時はEVモードとなりエンジンが始動しないモデルもあります。

 補機バッテリーの状態をうかがい知ることができないため、突然バッテリーが上がってしまうケースもありえるのだそうです。

「従来のオルタネーターは、エンジン始動中は常に稼働して発電と充電を繰り返していたので、常にバッテリーは満充電状態でした。しかしそのぶん、もう充電できないのにガソリンを燃やして無駄に発電していた部分があったのです。しかし最近は燃費を稼ぐために充電制御や発電制限機能が働き、発電機を休ませる機能も搭載されています。

 いままでガソリンを使用していた発電は、回生エネルギーで補い、バッテリーに蓄電する形式になりました。そのため、高い頻度で使用しているクルマの場合は問題ないのですが、たまにしか乗らないなどの場合は十分に蓄電されない状態になってしまい、交換時期より早くバッテリー交換が必要な場合があります」とH氏は話します。

 バッテリーの交換時期は、目安とされている保証期間の2年ごと、高性能バッテリーの場合は3年ごとが好ましいそうです。

 補機バッテリーの寿命についてH氏は「ハイブリッド車の場合はとくに電力を多く使うため、実質2年も持たないケースもあります。また補機バッテリーの不具合は乗っていても気づきにくいので、車検時などには思い切ってバッテリーも交換しておいたほうがいいと思います」と、アドバイスしています。

※ ※ ※

 ハイブリッド車は構造が複雑になるとともに、電力への依存が進んだことで、エンジン車以上にバッテリーを酷使している状況です。

 普通のエンジン車でも、エンジンのスターターの回り(始動)が重く感じたり、ヘッドライトが暗い気がしたら、まずはバッテリーをプロにチェックしてもらいましょう。

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