モダン・フェラーリのV12モデルは、新車当時の価格からするとかなりお買い得感のあるプライスに落ち着いているが、それがオープンモデルあるとどうなのか、最新オークションでの落札価格から検証してみよう。
■エンツォの息子がファーストオーナーだった「550バルケッタ」
2020年8月14日−15日に開催された、RMサザビーズのオンライン・オークション、「シフト・モントレー」、そして9月20に開催されたボナムスの「ザ・ボンモント・セール」、ともにモダン・フェラーリの限定オープンモデルが出品されたので、その詳細を紹介しよう。
●2001 フェラーリ「550バルケッタ」
フェラーリが12気筒モデルをベースにオープンモデルを製作することは非常に珍しい。
現在でこそ「812スーパーファスト」をベースとした「812 GTS」がプロダクションモデル・ラインナップに加わっているが、それ以前を調べてみると、いずれも限定車のみで製作されている。
バルケッタというネーミングに至っては、1952年の「225S・ツーリング・バルケッタ」、あるいは「212エクスポート・ツーリング・バルケッタ」以来、約半世紀ぶりの復活である。
さて、「550バルケッタ」というネーミングを聞けば、フェラーリの事情に詳しい人ならば、その大体の成り立ちは想像できるだろう。
ベースとなっているのは、もちろん12気筒FRの「550マラネロ」で、485psを発揮するエンジンやミッションといったパワートレインも同様だ。エアロダイナミクスがクーペから若干劣るため、最高速はマイナス20km/hの300km/hと発表されていた。
気になるルーフは、あくまでも簡易用のソフトトップとなる。フロントウインドウは100mm短縮され、リアデッキも大きくその姿を変えている。
ボナムスによれば、今回出品された550バルケッタは、448台のみ生産されたなかの1台で、驚くべきはそのファースト・オーナーだ。なんとエンツォの息子であるピエロ・フェラーリ本人にほかならなかったという。
エスティメートは27万−32万スイスフランであったが、実際の落札価格は29万9000スイスフラン(邦貨換算約3500万円)であった。意外に買い得な取引になったようだ。
■「スーパーアメリカ」では、限定モデルという神通力は通用するのか!?
もう一方のオープンモデルは、シフト・モントレーに出品された2005年にフェラーリが限定車として発表した「スーパーアメリカ」だ。
すでにこの年、ベースとなる12気筒FRの575Mマラネロの生産が中止されることは決定されており、オープン仕様のスーパーアメリカは、そのラストを飾るアニバーサリーモデルとしての役も果たしていた。
●2005 フェラーリ「スーパーアメリカ」
スーパーアメリカというサブネームが表しているとおり、これはオープンモデルに圧倒的な人気があるアメリカ市場を意識して製作されたものである。
ロサンゼルス・ショーでの発表時から世界限定599台とアナウンスされていたが、もちろんアメリカ外の諸国にもスーパーアメリカは少数が割り当てられ、日本にも20台が上陸している。
スーパーアメリカの特長は、やはりそのルーフの開閉方法だろう。リアガラスと同時に作動するルーフが沈み込みながら、ルーフがリアデッキ上に収まるメカニズムは、かつてピニンファリーナに在職したレオナルド・フィオラバンティが持つ特許技術である。
それまでの550バルケッタが、手動による簡易な幌のようなルーフしか持たなかったことを考えると、これは大きな進化といえそうだ。
搭載するエンジンもさらにチューニングされている。実際には575Mから25psパワーアップされ、オープンエアの快適さのみならず、フェラーリの12気筒GTの魅力を存分に味わえるモデルに仕上がっている。
ミッションを6速MTと6速DCTの2種類から選択できたのもカスタマーには大きな魅力だっただろう。
今回出品されたスーパーアメリカは、走行距離が新車からたったの8700km。オプションのフィオラノ・ハンドリング・パッケージも装備されており、フェラーリ・クラシケの認定はもちろん取得済みだ。
オンライン・オークションという事情はあったものの、エスティメートの24万−26万ドルに対して、落札価格は23万5000ドル(邦貨換算約2500万円)であった。フェラーリの限定車もずいぶん買い求めやすくなってきたという印象が強い。