クルマの「パドルシフト」は、普段運転するときはまったく操作しなくても運転することができる装備です。では、いったいどのようなときに使うことが想定されているのでしょうか。
■使わなくても運転できる「パドルシフト」 いつ使うと良い?
最近のクルマには、ハンドルの付け根に「パドルシフト」が設置されている事例があります。使わなくても運転することはできますが、いったいどのようなときに使う装備なのでしょうか。
市販車に装着されるパドルシフトは、かつてはスポーツカーを中心に装着されていたものの、現在ではミニバンやコンパクトカー、軽自動車でも見られる装備となっています。
機能としては、通常はシフトノブでおこなう変速を、ハンドルから手を離さず手元でできるようにすることが目的です。
前述のとおり、市販車においては幅広い車種に採用されているほか、有段ATのクルマだけでなく、変速比が連続的に変わるCVT(無段変速機)のクルマにも搭載されています。
パドルシフトを使うときとしてイメージしやすい場面としては、ギアを自分で操作(CVTの場合は擬似的な有段変速)して走りたいときが挙げられるでしょう。
パドルシフトはF1マシンに代表されるレーシングカーにも搭載されていることから、スポーティな走りを楽しみたいときに操作してみたい、というのは自然なことといえます。
それ以外の実用的な使用方法としては、長い下り坂でエンジンブレーキを強く効かせたたいときに操作する、ということが挙げられます。
長い下り坂でフットブレーキを多用しすぎると、「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が起きてブレーキの効きが悪くなる場合があります。
そうした状態に陥るのを防ぐために、AT車のシフトパターンには「D」の下にエンジンブレーキの効きが強くなる「3」「2」「L」「B」「S」などのいずれかが配されているのですが、パドルシフトでギアを下げることはそれと同じ操作にあたるのです。
■変速機が無いクルマのパドルシフト 何のために装備される?
パドルシフトは、ホンダ「ヴェゼル」のハイブリッド仕様や、三菱「アウトランダーPHEV」など、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも採用されることがあります。
トランスミッションは、ヴェゼルのハイブリッド仕様の場合は7速DCTが組み合わされますが、アウトランダーPHEVではトランスミッション自体が搭載されていません。
EV走行モードとシリーズ走行モードではモーターに直結し、パラレル走行モードはエンジン直結で走行するシステムということが理由ですが、ではアウトランダーPHEVに装備されるパドルシフトはなにを操作する装備なのでしょうか。
アウトランダーPHEVに装備されるパドルシフトは、正式には「回生レベルセレクター(パドル式)」といい、回生ブレーキの強さを調節する装備になります。
パドルシフトでギアを下げるのと同じように、長い下り坂を降りるときに役立つほか、バッテリーの充電量回復にも寄与します。
三菱の販売店スタッフは、アウトランダーPHEVの回生レベルセレクターについて次のように説明します。
「パドルで調整できるアウトランダーPHEVの回生レベルは6段階で、回生ブレーキをもっとも強くすると充電量が多くなるほか、反対にもっとも弱くするとアクセルを戻してもスピードがほぼ落ちないという特徴があります。
弱くすれば、ある程度のスピードまで加速したあとにアクセルを戻しても、車速を落とさずそのまま走行することができるなど、お客さまの好みにあわせてさまざまな走らせ方に対応できる点を案内しています」
ちなみにハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の多くでは、パドルがなくても、シフトセレクター部に「B」などのレンジを設け、ここで回生ブレーキを強くする操作ができるようになっています。