2020年10月7日に登場したアウディのベストセラーモデル、改良新型「A4」は、フルモデルチェンジに近いほど大幅にエクステリアデザインを一新した。BMW「3シリーズ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」とともに、ドイツ・プレミアムスリーと呼ばれるブランドのDセグメントセダンは、今回どのように進化したのだろうか。実際に乗ってみた。
■フルモデルチェンジに近いビックマイナーチェンジを受けたA4
アウディ「A4」がフルモデルチェンジに近いビッグマイナーチェンジを施し、よりスポーティなモデルへと変身した。
エクステリアでは、もうお馴染みになった六角形のシングルフレームグリルが大きく変更された。
横の角がヘッドライトの下まで広がり、ワイド&ローのスタイルを強調するようになった。グレードにより、グリルとボンネットの下のデザインが異なり、Sラインには往年の名車「クワトロ」をイメージさせるスリットを設けている。またヘッドライトも精悍なイメージにデザイン変更されている。
これまで、ボンネットサイドの開口部の線を延長するように後ろまで伸びていたキャラクターラインは、ドア付近ではラインが一旦消えて前後のタイヤハウスの上だけが強く印象付けられるように変わった。
さらにドアの下のサイドシルには整流板のようなフィンが付き、レーシングカーをイメージさせる。かなり横に出ているので、雨の日や、雪道、泥道などでのボディサイドへの石跳ねや汚れの付着を防げそうだ。サイドビューはこれらによってスポーティな印象になった。
搭載エンジンは、従来の1.4リッターターボから2リッターターボになった。これに12Vのマイルドハイブリッドが組み合わされる。つまりベルト駆動のオルタネータ、スターターになったのだ。この電気モーターにより60Nmが加わるから、アクセルペダルの踏みはじめのトルクの立ち上がりが良くなり、遅れのないスムーズな加速が実現できている。
今回試乗した「A4 45 TFSIクワトロ Sライン」の最高出力は249ps/5000-6000rpm、最大トルク370Nm/1600-4500rpmという十分にパワフルでトルクフルな心臓を持つ。
ちなみに「A4 35 TFSI(FWD)」もエンジン排気量は同じ2リッターで150ps/3900-6000rpm、270Nm/1350-3900rpmを発揮する。さらにスポーツモデルの「S4」は、354ps/5400-6400rpm、500Nm/1370-4500rpmと強烈になる。
AWDクラッチ付きクワトロシステムは、先読み型に進化した。路面状態を読んで前後の駆動力配分を安全性とトラクションが最適になるように制御しているという。
試乗車はオプションの19インチタイヤを履いていた。銘柄はピレリP ZEROで、サイズは245/35ZR19 93Yだった。高さのあるリムプロテクターが目立っていたが、ホイールを縁石でガリッとやってしまうのをある極力防いでくれそうだ。
■走りも外観もスポーティ度が高まった
走り出して最初の印象は、思いのほか乗り心地が良いことだった。
思いのほか、と書いたのは、スポーティなルックスになったことと、装着される19インチのピレリP ZEROのせいだ。タイヤは偏平の19インチで空気圧はフロント2.7bar、リヤ2.5barで硬めなショックはあるものの、ボディ剛性が高く振動が残らないから、乗り心地が良い。
またハンドルまわりやサスペンション系の締まりがあり、シャキッとした感じのハンドリングが気持ち良かった。
操舵力は軽めだが、路面からのインフォメーションはきちんと伝わってくるので、軽さが不安に繋がらない。これはしっかりしたボディがベースにあるからだ。もちろんこれは乗り心地にも関わってくることで、ボディが締まっているから振動があとに残らず、気持ちの良い乗り心地が得られているのだろう。
ボンネットを開けると、左右のストラットタワーからバルクヘッドに向かってリーンフォースメントが腕を伸ばして重要な部分の剛性を高めているのがわかる。
インテリアはアウディ得意の美しい仕上げに変わりはなかった。見やすいインストルメントパネル、ダッシュボード中央のモニターも見やすい。横に長く伸びたエアコンの吹き出し口も穏やかな風を出すために効果があるだろう。
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A4のライバルといえば、同じドイツのメルセデス・ベンツ「Cクラス」とBMW「3シリーズ」が思い浮かぶ。
Cクラスは格調の高さが際立っているが、3シリーズはスポーティ度では群を抜く位置にいる。A4は、今回のビッグマイナーチェンジで、かなりスポーティに振ってきた感がある。
スポーティ度が高まったA4だが、クワトロでは後輪から押し出すような加速感とコーナリングフィールはフロントの重さを忘れさせる。そのスポーティさに、尖った感じや雑な感じは一切しないのが良い。高いボディ剛性によって締まったハンドリングと乗り心地は高級なスポーティさとでもいう位置にきたようだ。
3シリーズも、2019年にデビューした当初は荒削りの硬さがあったが、デビュー直後の7月生産からはサスペンションチューニングの見直しがあり、乗り心地も改善している。前後50:50の重量バランスによって作り出すコーナリングの愉しさとスポーティさは3シリーズならではだ。
AUDI A4 45TFSI quattro S line
・車両価格:627万円
・試乗車オプション込み価格:747万円
・全長:4770mm
・全幅:1845mm
・全高:1410mm
・ホイールベース:2825mm
・車両重量:1610kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
・排気量:1984cc
・駆動方式:4WD
・変速機:7速Sトロニック(DCT)
・最高出力:249ps/5000-6000rpm
・最大トルク:370Nm/1600-4500rpm
・ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク
・タイヤ前後:245/40R18(試乗車はオプションの245/35R19)
・WLTCモード燃費:12.9km/L