Infoseek 楽天

一般道も合格! ランドローバー「ディフェンダー」の未来はいかに?

くるまのニュース 2020年11月28日 19時10分

いまホットなSUVであるランドローバー「ディフェンダー」の一般道と高速道路でのポテンシャルを、モータージャーナリスト武田公実氏が実感。新たなデザインも含め、ディフェンダーの未来を予想する。

■公道で快適さを手に入れた「ディフェンダー」

 2019年9月のフランクフルト・ショーにてデビューし、日本でもオーダー受付がスタートした直後から大ヒットを博している、ランドローバー2代目「ディフェンダー」。

 歴代のランドローバー各モデルにとっては「ホームグランド」というべき、オフロードでのテストドライブにおいて卓越した走破力とパフォーマンスを示したことは、すでにVAGUEでもすでにレポート済みである。

 今回は、現代における都市生活者の使用状況に近いかたち、つまりアスファルト舗装された一般道と高速道路で、新型ディフェンダーを試してみることにした。

●圧倒的な快適さを身につけたディフェンダー

 テストドライブの拠点である、横浜みなとみらいのホテル駐車場で初めて目にしたディフェンダーは、ちょっと気おくれしてしまうほどの雄大さを見せつけてきた。

 4945mm×1995mmの全長×全幅もさることながら、特に1970mmという全高がランドローバー・ディフェンダーであることを誇示しているかにも感じられる。

 したがって、乗り込む際には「ヨイショッ」と(小声で)気合いを入れてしまうのだが、ひとたびシートに収まってしまえば、ランドローバーが「コマンダーポジション」と自認する高い着座位置から周囲を見渡すことは容易。狭い場所での取り回しも、ボディサイズを思えば非常に優れている。

 そして一般道に向けてスタートした瞬間から、新型ディフェンダーが当代最新のSUVとしての資質をパーフェクトに備えていることを思い知らされることになったのだ。

 今回の試乗車は、ロングホイールベース/4ドア版の「110」に、直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載した「P300」。排気量だけを取り上げれば、1950年代の元祖ランドローバー「シリーズ1」と変わらないもの。

 ところが約2.3tにおよぶヘビー級の車体を、まるでコンパクトカーのように軽々と、しかも排気音を荒げることもなく粛々と加速させる。

 P300というネーミングが示すように、300psという大排気量スポーツカーはだしのパワーを標榜するものの、そのトルクフィールやレスポンス、サウンドはかなり実直な印象が強く、実用車の極みであるディフェンダーのキャラクターにはよく似合っているかに感じる。

 またシャシの出来ばえも上々で、当代最新のクロスカントリーカー/SUVでは当たり前のことかもしれないが、街中で舗装の荒れたところを通過しても、まるで何ごともなかったかのごとくスムーズに進んでゆく。

 そして高速道路に乗り、クルージングでの快適至極な走りに身を委ねることで、新型ディフェンダーは長距離ツアラーとしての優れた資質も見せてくれることになった。

 110系に標準装備されるエアサスペンションの効力だろうか、高速クルージングにおいては矢のようなスタビリティを披露する。また、ブロックの大きなオールシーズンタイヤを履いているにもかかわらず、乗り心地やロードノイズの点でも非常に秀逸。シートの座り心地の良さも相まって、長距離・長時間のツーリングも悠々とこなすだろう。

 この日筆者が乗ったのは、3グレードのうち真ん中のグレードである「S」にインフォテイメント系や安全運転支援システムなどのオプションを満載した1台。ACC(アダプティブクルーズコントロール)やレーンキーピングなどのアシストも装備し、ドライバーの負担を最小限に抑えてくれる。

 その一方で先代ディフェンダーは、たとえ最終期のモデルであっても、過大なノイズと振動、あるいは前時代的なスタビリティの低さも、ある種の「個性」として受容しなければならない。

 仕事や遊びの場に到着するまで、あるいは帰宅する際にも、行程のほとんどはアスファルトの道路を走行することがデフォルトとなっている現代においては、ディフェンダーの身上であるツール(道具)としての能力は、新型が圧倒的に勝っていることを認めるべきと思われたのである。

■「ディフェンダー」は長いライフサイクルを見越している!?

 1948年4月30日開幕のアムステルダム・ショーにて発表された元祖ランドローバーは、もともと「あらゆる作業に適応する農民の従僕」というコンセプトのもとに開発されたという。また、定置型の動力源としても使えるように考慮されていたことも併せて、農業用トラクターとしての使用も見越していたともいわれている。

●新しいディフェンダー像の構築

アスファルトの道路を走行することがデフォルトとなっている現代においては、新型ディフェンダーは最上のツールである

 そして、元来の会社名「ローバー」に引っ掛けて名付けられた「ランドローバー(大地を征服する者)」のネーミングに相応しく、元祖ランドローバーとその進化・改名版である初代ディフェンダーの活躍するフィールドは、イングランドやウェールズの農園から全世界へと拡大。厳しい自然環境にも立ち向かい、カントリーサイドでの仕事や日常生活、ひいてはスポーツや趣味のためのツールという本分をまっとうしてきた。

 英国製クラシックカーを愛してやまない筆者は、そんな元祖ランドローバーと初代ディフェンダーには、ひとかたならぬ憧れを抱いてきた。

 しかし、これまで複数の旧き良きランドローバーたちを運転してきた経験からすると、元祖ランドローバーはもちろんのこと、数年前に生産を終えたばかりの旧ディフェンダーであっても、現在の路上で乗るには「日常のツール」というよりは、クルマそのものを楽しむことが主な目的となる「エンスー車」としての要素が強いといわざるを得ないのだ。

 新型ディフェンダーが2019年に初公開されて以来、旧き良き先代とは大きく変貌したスタイリングや、モノコック化されたフレームに異論が続出したようだが、筆者はディフェンダーの変節を支持したいと考えている。

 車体、とくに全幅が大型化したことも、ディフェンダーというクルマが誕生以来70年以上にわたって金科玉条としてきた、ツールとしての実用性を追求したゆえの決意と思われる。

 そしてアルミ製モノコックの採用については、「ディフェンダー」の名を冠するモデルは長寿であらねばならないと宿命づけられた、ひとつの答えであると推察している。

 元祖ランドローバー+初代ディフェンダーのごとく、限定ファイナルモデルを合わせれば、実に70年もの長命を維持するなんてことはさすがに困難だろうが、おそらくはこの新型ディフェンダーも一般的なクルマたちに比べれば、かなり長いライフサイクルを想定しているに違いあるまい。

 その傍ら、英国政府は2030年から内燃機関単体を動力源とする乗用車の販売を実質的に認めない方針を打ち出しているという。また、ランドローバー社が主なマーケットと見なしている世界の国々も、早かれ遅かれ同様の政策に舵を取る可能性が高いと目されている。

 新型ディフェンダーが2030年代以降の生産継続を視野に入れているならば、プラグイン式を含むハイブリッドとなるのか、あるいはフルBEVまで乗り出すか否かは現状では未知数ながら、いずれにしても電動化の波に背を向けることはできないだろう。

 そのためには、大容量のバッテリーを搭載するスペース効率を追求することが必須条件であり、古典的なラダーフレームは開発の初期段階から除外されていたと思われるのだ。

 加えてソフトになったエクステリアのデザインも、近未来に向けた新しいディフェンダー像を構築しようとする、ランドローバー社の強い意志の表れと感じられた。

 時代とマーケットの要請に応えて姿かたちこそ変われども、「あらゆる作業に適応する農民の従僕」から発展したディフェンダーの哲学は不変。それが、筆者の偽らざる結論なのである。

●LAND ROVER DERENDER 110 S
ランドローバー・ディフェンダー110 S
・車両価格(消費税込):692万円
・全長:5018mm(スペアタイヤ含む)
・全幅:2105mm
・全高:1967mm
・ホイールベース:3022mm
・車両重量:2186kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー
・排気量:1997cc
・エンジン配置:フロント横置き
・駆動方式:四輪駆動
・変速機:8速AT
・最高出力:300ps/5500rpm
・最大トルク:400Nm/1500-4000rpm
・0-100km/h:8.1秒
・最高速度:191km/h
・燃料タンク容量:88.5リッター
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)255/60R20、(後)255/60R20

この記事の関連ニュース