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ホンダに続きアウディやBMWも!? ドイツ勢もモータースポーツから撤退する事情とは

くるまのニュース 2020年12月13日 11時10分

2020年10月に、ホンダは2021年シーズンをもってF1から撤退すると発表しましたが、複数のドイツメーカーもモータースポーツ参戦終了を発表しました。一体なにがあったのでしょうか。

■ドイツ大手が続々とモータースポーツから撤退!? なぜ?

 ここへきて、大手自動車メーカーのモータースポーツ撤退が相次いでおり、今後の動向が気になります。

 直近では、アウディが2020年11月30日、国際格式のEVレースであるFIAフォーミュラE世界選手権から2021年シーズンをもって参戦終了と発表しました。

 今後は、ダカールラリーとル・マンへ24時間レースへの挑戦に切り替えるということです。

 その翌日の12月1日に発表した、アウディの母体であるフォルクスワーゲンの状況はさらに深刻です。

 ドイツのハノーバーにあるフォルクスワーゲン・モータースポーツ社に所属する169人を配置転換し、事実上のモータースポーツ全面撤退となります。

 それにともない、ラリー用完成車の「ポロGTI R5」生産も2020年末で終了します。

 さらにその翌日の12月2日、BMWもFIAフォーミュラE世界選手権から次シーズン限りで撤退することを明らかにしました。

 今後は、電動車の量産開発に資金と人材と集中的に投じるといいます。

 BMWは日本のスーパーGTに相当する、ドイツのツーリングカーレースDTMからも2020年シーズン末で撤退しています。

 日本メーカーではホンダが2020年10月、2021年シーズンでのF1参戦終了を発表。オンライン会見でホンダの八郷隆弘社長は「参戦終了とは再参戦しないこと」と明言しました。

 F1開発を担ってきた、ホンダR&D Sakura(栃木県さくら市)のエンジニアの多くが、電動車の先行開発や量産開発の部署に転籍します。

 なお、スーパーGTやアメリカのインディカーレースなどへの参戦は継続するとしています。

 それにしても、なぜこのタイミングで自動車メーカー各社が一気にモータースポーツからの撤退を発表したのでしょうか。

 きっかけは、やはり、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大です。

 自動車産業界は近年、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング等の新サービス・電動化)という「100年に一度の大変革」に直面しています。

 そのなかで、各メーカーの経営者は決算報告などの場で「選択と集中」という言葉を使う場面が目立ちます。

 次世代に向けて生き残るために、自社が得意とする技術や販売市場に対して経営資源を集中するという意味です。

 自社だけでは対応が追い付かない分野では、たとえばホンダがGMが開発するEVプラットフォームを北米市場向けで共用するといった、ほかの自動車メーカーや異業種との連携を深める傾向が強まっています。

 そうした大きな時代の転換期にあって、大規模なモータースポーツへの多額の資金投入や優秀な人材の導入について「選択と集中」が必要になってきました。

 自動車メーカー各社の経営陣としては、さまざまな理由からモータースポーツ存続を考慮するも、新型コロナ禍で経営状況の急速な悪化に直面し、最終決断を迫られたといえます。

■モータースポーツ三種の神器は通用しないのか?

 さらに一歩踏み込んで考えると、アウディやBMWがEVのフォーミュラEから撤退したという事実は、自動車産業全体に大きなインパクトを与えたといえます。

 なぜならば、電動化シフトという名目だけでは、モータースポーツ存続の理由付けにはならないからです。

コロナ禍で注目されるバーチャルレース(BMW)

 米・カリフォルニア州では2020年9月に「2035年までにインターナルコンバッションエンジン(内燃機関)の新車販売禁止」を目指すとの発表がありました。

 また、日本でも菅政権での「2050年カーボンニュートラル」の一環として、「2030年前半(または半ば)にガソリン車販売禁止」の最終調整に入ったという報道が12月に入ってから相次いでいます。

 こうした量産車の電動化が、自動車メーカーにとって必須アイテムとなっても、その技術開発やマーケティング活動として、資金面でフォーミュラE参戦が見合わないという判断をアウディもBMWも下したことになります。

 これからのモータースポーツはどうなっていくのでしょうか。

 そもそもモータースポーツは欧州の富裕層の娯楽として始まり、1960年代に入ってからは世界的なモータリゼーションの高まりのなかで、技術研究のための「走る実験室」といわれました。

 また、新車販売に直結する宣伝活動として、「走る広告塔」という側面もあります。

 1970年代半ば以降は、自動車以外の産業からスポンサー活動も盛んになり、たとえばアメリカのNASCARでは「レース・オン・サンデー、セル・オン・マンデー(日曜にレース、その翌日月曜日に実売につながる)」というキャッチコピーが生まれています。

 さらには、自動車メーカー技術者の「究極への体験の場」として活用されてきました。

 それが近年になり、モータースポーツに直結する新型車は高額、または限定車として一部のファン向けという色合いが濃くなり、メーカーのブランドイメージ全体を維持するための費用対効果を高めることが難しくなってきました。

 一方で、Eスポーツなどバーチャルレースは、新型コロナ禍でリアルレース活動が中断されたことでさらに注目が集まっています。

 今後のモータースポーツは、国や地域、ターゲットユーザーをしっかりと絞り込んだ上で、リアルとバーチャルを組み合わせた形へと大きくシフトしていく可能性が高まってきました。

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