かつて日本の乗用車の主流だった「5ナンバーセダン」が、絶滅の危機となっています。2020年12月現在、新車販売するメーカーはトヨタ以外に無く、トヨタ内でも継続されるのは旧型の「カローラアクシオ」のみ、という状況です。販売店スタッフやユーザーにはどのような影響があるのでしょうか。
■5ナンバーセダンにとって激動の1年となった2020年
かつて、乗用車の定番といわれた5ナンバーセダンにとって、2020年は激動の1年となりました。トヨタとホンダが相次いで5ナンバーセダンの生産終了を発表したことで、2021年には国内ラインナップで1車種のみとなることが確実となっています。
販売現場のセールスマンや、実際に5ナンバーセダンに乗っていたユーザーはどのように受け止めているのでしょうか。
5ナンバーセダンの減少は突然始まったものではなく、モデルチェンジにあわせたボディの拡大化などの要因により、2020年初頭の段階ではトヨタに3車種、ホンダに1車種が存在していた状況。
トヨタの3車種の詳細を見ると、3車種のうち1車種は2019年9月にフルモデルチェンジした12代目の新型「カローラ」と併売される旧型の11代目カローラのセダンタイプ(カローラアクシオ)です。
12代目カローラは3ナンバーサイズのボディとされていたため、あくまでも商用ユース向けのセダンとしてカローラアクシオが残されたかたちとなります。
そして、2020年の中頃を過ぎるとさらに状況が変化し、ホンダは2020年7月に同社唯一となっていた5ナンバーセダン「グレイス」の生産終了を発表。
さらにトヨタは、2020年12月に5ナンバーセダンの兄弟車「プレミオ/アリオン」を2021年3月末に生産終了すると発表し、国産5ナンバーセダンがカローラアクシオのみとなることが確定したのです。
日本市場では長年、厳しい道路事情・駐車場事情の関係から5ナンバーサイズの車種が何かと重宝されるといわれてきましたが、最近のユーザーはどのように受け止めているのでしょうか。
トヨタの販売店スタッフに聞いたところ、次のように話します。
「新型カローラは全幅が3ナンバーサイズにはなったものの、大きく拡大された訳ではなく、5ナンバーサイズに近い水準で維持しています。
また、衝突被害軽減ブレーキをはじめとした予防安全装備について、最新のものが搭載されているのも大きいです。
カローラアクシオは、あくまでも商用ユース向けという意味合いで残している部分が多く、新型カローラとは予防安全装備の性能もかなりの差があります。
また、全幅もそれほどは大きくないので、新型カローラを選ぶお客さまのほうが多いです。
あと、5ナンバーサイズのクルマとしては『ヤリス』があり、これまでの古いカローラに乗っている人がこちらを選択することもあります」
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12代目の新型カローラは、セダンのほかにワゴン(カローラツーリング)とハッチバック(カローラハッチバック)がありますが、このなかでもっとも全幅が狭いのはセダンタイプのカローラです。
トヨタは新型カローラの開発にあたり日本市場向けのナローボディを開発したこともあり、国内ユーザーに配慮されたことがわかります。
■5ナンバーセダンが激減しても、ユーザー的には問題なし?
一方、これまで5ナンバーセダンに乗っていたユーザーは、新車購入のときにどのように感じているのでしょうか。
これまで乗っていた5ナンバーセダンから3ナンバーサイズの国産コンパクトSUVに乗り換えた50代・60代の夫婦に話を聞いたところ、次のように話します。
「今回選んだ新車は、見た目がカッコよかったことが一番の決め手として選びました。
これまでセダンだったので、派手な外観のクルマを契約することに一瞬躊躇しましたが、近所の友人が若々しいハッチバックのクルマに乗り換えていたのを見て背中を押されたのもあり、踏み切れました。
自宅の駐車場事情や道路事情に対応できたのか、という点についても聞いてみたところ、「全幅が3ナンバーサイズになったことについて、取り回しにくくなる懸念は少しありましたが、試乗時に駐車場に停めてみたものの、思ったよりも駐車が難しくないと感じ、問題ありませんでした。
駐車場がすごく広いという訳ではないのですが、立体式の月極駐車場ではなかったのも良かったのだと思います」と話します。
都心部でときどき見かける立体式の月極駐車場の場合、5ナンバーサイズが入庫の条件ということもあります。
しかし、自宅敷地内に駐車場がある人をはじめ、とくに条件が定められていないのであれば、試乗をすることでユーザーの懸念点が払拭された、というケースも少なくないのかもしれません。
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近年はSUVの人気が日本のみならず世界的に高まっており、そうしたなかで企画されるSUVは世界戦略車として登場することが多いです。
そうした流れのなかで、日本専売車の減少に伴い、5ナンバーセダンも車種を減らしていっているのが実情ですが、あわせて5ナンバーサイズにこだわるユーザーも減少しつつあるのかもしれません。