スーパーカーを大胆にモディファイするチューナーとして知られているマンソリーが、芝刈り機をカスタムした。どうしてマンソリーが芝刈り機を手がけたのかその謎を探る。
■マンソリーが「エアジョーダン」をリスペクト
ロールス・ロイスやメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、マクラーレンなどをベースにしたコンプリートカーや、オリジナルのアルミホイールを開発することで有名なドイツのブランド、マンソリーが、芝刈り機をワンオフで製作した。
マンソリーのデザインポリシーは、各車両を独自の美学でワイルドに仕立て上げることだ。カーボンパーツやメッシュを基調としたスタイリングは、力強く野性味にあふれたものとなっている。現代のスポーツカーに、見ようによっては懐かしく、そして過激な印象を与えている。
21世紀も20年近くが過ぎたいま、マンソリーのつくるクルマは、1980年代から1990年代に生み出された過激なクルマを知らない若きデザイナーに、大きな影響を与えて続けているのも頷ける話だ。
さらにマンソリーは、装甲車の製作でも知られている。
メルセデス・ベンツ「Gクラス」をベースに、ボディシェルには防弾処理をおこない、防弾ガラスを装備した装甲車「G63アーマード」は、世界のセレブから支持されていることはご存知の方も多いだろう。
そんなマンソリーが、ワンオフ製作したライドオンタイプの芝刈り機「BSTN GT XI」とは、いったいどのようなものなのだろうか。
このマシンは、マンソリーとドイツのセレクトショップ「BSTN」とのコラボレーションによって生まれた。BSTNは、ジョーダン・アイテムを始めとするスニーカーやナイキ、THE NORTH FACEなどのセレクトブランドのアパレル、オリジナル商品を取り扱っている感度の高いミュンヘンにあるショップだ。
さて、マンソリーが手がけた芝刈り機のデザインは、伝説的スニーカーであるエアジョーダンへのオマージュとなっている。
装甲車もつくるワイルドなコンプリートカーメーカーと、エアジョーダン。一見、まったくつながりがないように思えるのだが、どうしてマンソリーが芝刈り機を手がけたのだろうか。
■エアジョーダンXIは、芝刈り機をヒントにしていた!
ナイキが初代モデルであるエアジョーダンを発売したのは、25年前のことである。そのエアジョーダンを「3」から「15」までデザインしたのは、ティンカー・ハットフィールドというデザイナーだ。
彼がエアジョーダンXIを開発した際、ライドオンタイプの芝刈り機のデザインにインスパイアされたそうだ。
芝刈り機というと、日本では手で押すタイプが主流となっていて、ライドオン、つまり人が乗って操縦するタイプの芝刈り機は、グラウンド整備などでしかお目にかかる機会がない。
ところが欧米では、土地が広いということもあるのだろうが、ライドオンタイプの芝刈り機が広く普及している。
物好き、ということもあるのだろうが、ライドオン芝刈り機にハイレベルなチューニングを施し、最高速チャレンジやドラッグレースなどもおこなわれていたりする。
そんな伝説を持つエアジョーダンXIを目にしたマンソリーとBSTNは、ナイキが「エアジョーダンXI Jubilee」を発売したのを機に、そのスニーカーにインスパイアされたライドオン芝刈り機の開発を開始した。
BSTN GT XIとネーミングされたこのモデルは、カスタムメイドのカーボンボディと、レザーカーボンシート、レザーカーボンステアリングを装備している。
シートやボディ各部には、ジャンプマンの意匠とBSTN、マンソリーのロゴを配していて、誰が見てもエアジョーダンを意識させるものとなっている。
BSTNのイメージキャラクターとなっているのは、ブンデスリーガの強豪、FCバイエルン・ミュンヘンのフォワード、アルフォンソ・デイヴィス。
UEFAチャンピオンズリーグの優勝メンバーのひとりでもある彼は、エアジョーダンXI好きでも知られるサッカー選手だ。
ワンオフ製作されたこのライドオン芝刈り機。エアジョーダンマニアやクルマ好きもそうだが、サッカーファンにとっても注目すべきモデルといえそうだ。