TOYOTA GAZOO Racingは、WEC参戦車両として「GR010 ハイブリッド」を初公開しました。レース用のハイブリッド技術を搭載したスーパーマシンとは、どのようなものなのでしょうか。
■WECに参戦する新型マシン初披露!
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、ル・マン・ハイパーカー(LMH)の「GR010 ハイブリッド」を発表し、2021年シーズンFIA世界耐久選手権(WEC)に参戦します。
ワールドチャンピオン獲得、そしてル・マン3連覇を成し遂げたTGRは、新たに始まるハイパーカーカテゴリーにおいてタイトルを防衛すべく、「TS050 ハイブリッド」で磨いてきたレース用のハイブリッド技術「レーシングハイブリッド」を搭載したGR010 ハイブリッドで参戦します。
GR010 ハイブリッドはLMHのレギュレーションに則ったプロトタイプカーで、ドイツ・ケルンのチーム本拠地のエンジニアと、日本の東富士研究所に本拠を置くハイブリッドパワートレーンチームが開発しました。
680馬力を生み出す3.5リッターV型6気筒ツインターボエンジンで後輪を駆動。4輪駆動のパフォーマンスを発揮させるべく、アイシンAWとDENSOが共同開発した272馬力を生み出すモータージェネレーターユニット(MGU)をフロントアクスルに配置しています。
また、開発中の次世代ハイパーロードカーを彷彿とさせる印象的な外観と、レースと市販車の強いつながりを示す「GR」の文字をコンセプトとする新しいカラーリングを備えました。
TGRは、2019-20年シーズンにおいてル・マン24時間レース優勝、ワールドチャンピオンを獲得したのと同じドライバーラインナップで、参戦開始以来9シーズン目のWECに参戦。
マイク・コンウェイ選手、小林可夢偉選手、ホセ・マリア・ロペス選手がGR010 ハイブリッドの7号車、セバスチャン・ブエミ選手、中嶋一貴選手、ブレンドン・ハートレー選手が8号車をドライブ。ニック・デ・フリーズ選手も引き続きテスト兼リザーブドライバーとして参加します。
チームは新レギュレーションに対応すべく、3日間におよぶGR010 ハイブリッドの集中的なテストプログラムをすでに2回実施。
レギュレーションに組み込まれたコスト削減の一環として、GR010 ハイブリッドはTS050 ハイブリッドと比べて162kg重くなり、パワーが32%絞られ、ル・マンのラップタイムは10秒程度遅くなる見込みだといいます。
車両のサイズは全長4900mm×全幅2000mm×全高1150mmと、TS050 ハイブリッドより250mm長く、100mm幅が広がり、100mm高くなります。
TGRはWECプロジェクト開始以来、初めてリアのモータージェネレーターユニット(MGU)を廃し、フロントアクスルにのみMGUを配置した状態で参戦。このためGR010 ハイブリッドはスターターモーターを組み込み、リアブレーキは油圧によってのみ作動する必要があります。
GR010 ハイブリッドは最先端のエアロダイナミクスが特徴で、高性能な流体力学ソフトウェアと風洞を使用し最大の効率を生み出すよう開発されました。
新しいレギュレーションでは、シーズン中に特定の車体パッケージを持ち込むことを禁じており、GR010 ハイブリッドは、ダウンフォースが求められるサーキットにおいても、低ドラッグが要求されるサーキットにおいても、同じ仕様で戦います。
WEC、そしてル・マンのトップカテゴリーに、初めてBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)が導入されます。
WEC シリーズオーガナイザーがエネルギー使用量や車両重量を規定し、各社のハイパーカーの均一なパフォーマンス実現を目指して、レース毎に車両のパフォーマンスをコントロール。
これにより、TGRとスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスやバイコレス、さらにLMP1カーで参戦を表明しているアルピーヌといった競合チームとの接戦が展開されることが予想されます。
WEC 2021年シーズンは、2021年3月19日のセブリング 1000マイルを皮切りに、スパ6時間レース(5月1日)、そしてシリーズのハイライトであるル・マン 24時間レース(6月12-13日)を迎えます。
さらに1992年以来となるモンツァ(7月18日)、富士スピードウェイ(9月26日)、バーレーン(11月20日)の6時間レースが続きます。
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トヨタは2018年6月のル・マン24時間レース会場において「GRスーパースポーツコンセプト」を公開し、市販に向けた開発に着手したことを発表しています。
今回公開されたGR010 ハイブリッドはレース仕様ですが、1億円を超えるともいわれる市販モデルも同様のスタイルで登場するのか、今後の展開が注目されます。
■新しいカラーリングのヤリスWRCで参戦
さらに、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamは、2021年 FIA世界ラリー選手権(WRC)に参戦する、ヤリスWRCの新しいカラーリングを発表しました。
2021年シーズン仕様のヤリスWRCは、FIA 世界耐久選手権(WEC)ハイパーカーカテゴリー参戦のために開発した新型GR010 ハイブリッドと同様に、WRC参戦で得た知見を活かして開発した「GRヤリス」のような市販車と競技車両との強いつながりを示す「GR」の文字をコンセプトとする新しいカラーリングを備えています。
実績のあるヤリスWRCを新しいカラーリングで包み、チームは5年目のシーズンに臨みます。
なお、2022年には新しいテクニカルレギュレーションが導入されるため、現行のヤリスWRCにとっては2021年が最後のシーズンとなります。
ヤリスWRCは、これまでに出場したWRCイベントの3分の1以上にあたる17勝と、322回のステージ優勝を獲得。
2018年にはマニュファクチャラーズタイトルを、2019年と2020年にはドライバーズタイトルとコ・ドライバーズタイトルを手にしており、2021年は3つの選手権タイトル獲得を目指します。
また、今シーズンからイタリアのピレリがWRCトップカテゴリーチームに対する単独タイヤサプライヤーとなったため、ヤリスWRCは新たにピレリタイヤを装着してシーズンを戦います。
WRCの2021年シーズンは、1月21日から24日かけて、モナコおよびフランスで開催される、伝統のターマック(舗装路)イベント「ラリー・モンテカルロ」で開幕します。