最近、クルマのヘッドライトにLEDが採用されるケースが増えるとともに、SNS上では「眩しい!」という声が出ています。しかし、警察庁や各団体からは「ハイビーム」を推奨する啓蒙がおこなわれています。なぜ、眩しいといわれながらもハイビームを推奨するのでしょうか。
■なぜ「眩しい!」という声多いなか、「ハイビーム」を推奨するのか?
夜間、クルマを運転していると後続車や対向車のヘッドライトが眩しいと困惑する人が多いといいます。
しかし、警察庁や各団体からは「ハイビーム」を推奨する啓蒙がおこなわれています。なぜ、眩しいといわれながらもハイビームを推奨するのでしょうか。
クルマのヘッドライトには、ロービームとハイビームが存在。道路運送車両法上では、ハイビームは「走行用前照灯」と明記され、前方100m先までを照らすことができるものとなっています。
対して、ロービームは「すれ違い用前照灯」といい、前方40mが視認できるものと定められています。
このロービームとハイビームの使い分けは、街灯が少ない暗い道などを走行する際には、ハイビームを使用することで歩行者などを遠くから発見することができ、早期の事故回避が可能です。
ただし、ハイビームはほかの車両などを眩惑させる恐れが増すため、対向車とすれ違う場合などにロービームを使用します。
そのため、交通量の多い都市部や市街地などでは、基本的にロービームで走行するケースがほとんどです。
しかし、最近では積極的にハイビームを活用するよう推奨する動きが出ています。
警察庁の「平成29年上半期における交通死亡事故の特徴」では、ハイビームを活用したことによる事故抑止効果を公表しており、半数以上がハイビームの場合に衝突を回避出来た可能性があったようです。
また、JAFが過去に実施した「ハイビームとロービームでの停止位置の違い」というテストでは、時速80kmでの走行時に障害物を発見して停止するまで、ロービームでは平均5.6m手前、ハイビームでは平均82m手前という結果が出ています。
このようにハイビームの上手な活用は各都道府県警察庁や市区町村などが推奨していますが、実際のユーザーからは「ハイビームが眩しくてかえって危ない」という声も出ているようです。
JAFがおこなったハイビームに関するアンケートでは、「眩しい」と答えたユーザーが96%と回答しています。
また、「とくに眩しい」とおもったシチュエーションについてのアンケートでは、もっとも多かったのが「運転中の対向車のヘッドライト」で「運転中の後続車のヘッドライト」、「交差点で停止中の対向車のヘッドライト」と続いています。
最近のLEDヘッドライトについて、ライト製品を扱うアフターパーツメーカーの担当者は次に話します。
「最近では、純正ライト類にLEDの採用が普及しています。
LEDは従来のハロゲンと比べると白色の光となりますが、これは人によって眩しく感じる色味なため、『眩しい』と感じる人が増えたのではないでしょうか。
また、デイライトが義務付けされたことで、これまでヘッドライトとフォグ、ウインカーだけだった光源が増えたことにより全部が点灯した際の眩しさは増す傾向にあります。
さらには、LEDによりライト類のデザインの自由度が上がったことで、光源位置の範囲が広がったことも、余計に眩しさを感じるようになった要因だといえます」
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最近では、先行車や対向車のライトを認識し、ハイビームとロービームを自動で切り替え、夜道の視界を確保するオートハイビームと呼ばれる機能が増えています。
ただし、歩行者や自転車を認識しないこともあり、市街地などでは手動で切り替える必要もあります。
なお、かつて信号待ちの際にヘッドライトを消灯する人がいましたが、周囲のクルマや歩行者、自転車が気づかない可能性もあるため、ロービームの状態を保つのが適切です。