近年、世界的に人気が高まっているSUVですが、コンパクトなモデルから3000万円クラスの超高級モデルまで、あらゆるセグメントでSUVが出揃っています。なかでも注目されているのがクロスオーバーと呼ばれるジャンルで、ワイルドなSUVのイメージが普通の乗用車でも味わえると大人気です。そこで、国内外のクロスオーバーモデルを5車種ピックアップして紹介します。
■見た目重視ならクロスオーバーという選択はアリ!
ここ数年で、世界的に人気となっているクルマといえば、SUVです。各メーカーとも、もっとも力を入れているジャンルで、次々と新型モデルが登場し、コンパクトなサイズのモデルから巨大かつ高額なモデルまで多種多様なモデルが販売されています。
ひとことにSUVといっても大きくふたつに分かれ、ひとつは本格的なクロスカントリー車をイメージさせるモデルと、もうひとつはステーションワゴンやコンパクトカーなどをベースに、SUVに仕立てた「クロスオーバー」と呼ばれるモデルで、とくに後者の人気が高まっています。
クロスオーバーモデルはドレスアップに近く、SUVのワイルドなイメージがありつつも、一般的な乗用車からの乗り換えでも違和感なくドライブできるということが、ユーザーから絶大な支持を得ました。
また、メーカーにとってもSUVをゼロから開発するよりも安価に仕立てられることと、オンロードがメインと割り切って、必ずしも4WDを設定する必要が無いなどメリットが大きく、積極的に展開。
そこで、現在人気となっている国内外のクロスオーバーSUVを、5車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「フィット クロスター」
2020年2月に4代目へと進化したホンダ「フィット」。これまでと変わらずコンパクトカーに分類されていますが、進化したハイブリッドシステム「e:HEV」を採用したモデルや、最新の先進安全運転支援システム「Honda SENSING」が標準装備されるなど、次世代コンパクトカーに求められる性能が充実しているのも特徴です。
4代目フィットではライフスタイルに合わせた5グレードが展開され、なかでもSUVのイメージをまとって登場したのが「フィット クロスター」です。
外観のデザインは、ベーシックなフィットはグリルレスなのに対し、フィットクロスターにはフロントグリルが設けられ、専用デザインの前後バンパー、サイドシルガーニッシュやホイールアーチプロテクターなどの専用樹脂パーツを装着。
ボディサイズは全長4090mm×全幅1725mm×全高1545mm(ルーフレール装着車は1570mm)となり、シリーズ初の3ナンバーサイズとなっています。
また、16インチタイヤが装着され、最低地上高が標準より+25mmの160mmとなったことで、よりSUVらしさを表現しています。
パワーユニットは1.5リッター直列4気筒エンジンに2個のモーターを組み合わせたハイブリッド仕様=e:HEVと、1.3リッター直列4気筒エンジンを設定。
駆動方式も生活に密着したコンパクトカーとあって、クロスターのみならず全グレードでFFと4WDが用意されています。
4代目フィットは、従来型よりAピラーの太さを半分以下することで前方視界が向上し、クラストップレベルの広い室内空間を有するなど、とにかく使い勝手の良さを重視して開発され、歴代フィットのコンセプトをさらにブラッシュアップしたモデルといえます。
●トヨタ「アクア クロスオーバー」
1997年に世界初の量産ハイブリッド車、トヨタ「プリウス」が発売されると、一気にハイブリッド車の普及が加速。プリウスと並んでハイブリッド車普及の立役者といえるモデルが、コンパクトハッチバックの「アクア」です。
アクアのパワーユニットは2代目プリウスのものを基本に開発され、よりコンパクトなサイズのボディと安価な価格で、大ヒットしました。
その人気はいまも高く、2011年にデビューしてから現在に至るまで、基本的なスタイルは変えずに現在でも売れている超ロングセラーモデルといえます。
このアクアに2017年、SUVテイストの新グレード「アクア クロスオーバー」が追加されました。
アクア クロスオーバーは上級グレードの「G」をベースとして、フロントグリルや前後バンパー、スキッドプレート、サイドマッドガード、フェンダーアーチモール、ルーフモールが追加され、タイヤも16インチに変更。
これらの装備によってボディサイズは全長4060mm×全幅1715mm×全高1500mmとなり、アクアとしては初の3ナンバーボディになっています。
SUVらしいしっかりした操舵感を演出しながらも、27.2km/L(WLTCモード)の低燃費を実現。システム出力135馬力のパワーに、バッテリーやモーターを搭載しながら1100kgの軽量ボディが相まって、軽快感のある走りも獲得しています。
メカニズム的にも熟成の進んだアクアだからこそ、安心感もあるクロスオーバーといえます。
●スバル「XV」
スバルは1995年に「レガシィ ツーリングワゴン」をベースとして最低地上高を高くし、オフロードテイストを強めた「レガシィ グランドワゴン」を発売。クロスオーバーモデルの先駆け的存在で、後に「レガシィ アウトバック」に名を変え、世界中のメーカーに影響を与えました。
そして、2010年には3代目「インプレッサ」をベースにしたクロスオーバーモデル「インプレッサ XV」が登場。現在は2017年にデビューした3代目となり、インプレッサから独立したスバル「XV」として販売しています。
都会的なデザインとスバル車らしい悪路走破性、先進の安全装備を搭載したモデルで、レガシィ アウトバックの弟分的な存在です。
ボディサイズは全長4485mm×全幅1800mm×全高1550mmで、全高は低く抑えつつもSUVらしい堂々としたサイズとなっており、クロスオーバーモデルでは定番のアンダーガードを模したバンパーや、樹脂製フェンダーアーチ、サイドステップなどに力強さを表現。
パワーユニットは1.6リッター水平対向4気筒ガソリンエンジンと、2リッター水平対抗4気筒エンジン+モーターの「e-BOXER」を採用し、チェーン式CVT「リニアトロニック」を介した全車AWDです。
スバルが提唱する左右対象のレイアウトかつ低重心化が可能な「シンメトリカルAWD」に加え、フルハイブリッドシステムのe-BOXER搭載により、スムーズかつ安定したパワフルな走りが可能となりました。
■ハイエンドな2台のクロスオーバー・ステーションワゴンとは!?
●メルセデス・ベンツ「E220d 4MATICオールテレイン」
メルセデス・ベンツのSUVというと、本格的なクロスカントリーモデルの「Gクラス」や、オンロードでの走りを重視した「GLシリーズ」がありますが、世界的にクロスオーバーが注目されるなか、同社初のクロスオーバーとして2017年に登場したのが「Eクラス オールテレイン」です。
ベースは「Eクラス ステーションワゴン」ですが、メルセデス・ベンツのSUVに共通する2本のフィンからなるラジエーターグリルや、前後バンパー下部には「シルバークロームアンダーライドガード」と名付けられたアンダーガード、ブラックのホイールアーチカバーなどでSUVの持つワイルド感を演出。
19インチの専用アルミホイールを装備し、タイヤサイズは245/45R19とスポーツカー並みの扁平タイヤを標準装着しています。
ボディは全長4950mm×全幅1860mm×全高1495mmと堂々としたサイズで、日本で販売されている「E220d 4MATICオールテレイン」に搭載されるパワーユニットは、194馬力の2リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載。シームレスな加速を実現する9速ATに、4WDシステムが組み合わされ、あらゆる気象条件でも安定した走りを実現しています。
また、Eクラスにふさわしくラグジュアリーなインテリアや、安全運転支援システム「レーダーセーフティパッケージ」などを含む「インテリジェントドライブ」が標準装備されており、まさに最上級のクロスオーバーとも呼べる仕上がりになっています。
●ボルボ「V60 クロスカントリー」
ボルボというと、1990年代頃までは高い安全性を誇る質実剛健なクルマというイメージが先行していましたが、近年のラインナップではデザイン面が大きく変わり、スタイリッシュなモデルに変貌しています。
とくに日本ではSUVの「XCシリーズ」とともに、ステーションワゴンの「Vシリーズ」に力を入れており、現在も主力商品となっています。
2010年にボルボ「S60」をベースとしたステーションワゴンとして登場した初代「V60」は、クーペのような流麗なフォルムが話題になりましたが、2018年に発売された2代目では力強さのあるフロントフェイスに、低く伸びやかなデザインの対比が美しいと評されています。
このV60にはSUVテイストの「V60 クロスカントリー」がラインナップされています。
外観では「トールハンマー型」LEDデイタイム・ランニング・ライトや、リアゲートに回り込む造形のテールライトなど、近年のボルボを象徴するデザインを随所に採用。
さらにバンパーからサイドステップに至るまでプロテクター状の樹脂パーツが装着され、力強さを表現しています。
ボディサイズは全長4785mm×全幅1895mm×全高1505mmで、V60に対して最低地上高が65mmアップされ210mmとし、流麗なフォルムはそのままにSUVらしさのあるスタイリングです。
搭載されるパワーユニットは250馬力を誇る2リッター直列4気筒ガソリンターボに11馬力のモーターが組み合わせたマイルドハイブリッドで、トランスミッションは8速AT、駆動方式は全車4WDを採用。
優れた走行性能だけでなく、世界でもトップクラスの性能を誇るボルボ独自の先進安全装備を全グレードで標準装備しています。
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日本ではSUV人気の影で、セダンやステーションワゴン、クーペの人気低迷が顕著です。北米でもステーションワゴンが激減してしまい、撤退したメーカーもあります。
SUVが一時の流行ならば、今後、セダンやステーションワゴンの復活もありえますが、現在の状況からするとSUV人気はまだまだ続き、ミニバンと同様に定番化しそうな勢いです。
クルマに限った話ではありませんが、市場でのユーザーニーズの変化は避けられないため、ある意味仕方ないことなのかもしれません。