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EVまだ早い? トヨタ「シーポッド」にマツダ「MX-30 EV」と電気自動車次々登場 充電問題は解決するか

くるまのニュース 2021年1月29日 9時10分

2020年にホンダ「ホンダe」やトヨタ「C+pod」。2021年にはマツダ「MX-30 EV MODEL」、日産「アリア」が相次いで登場するなど国産EVの新車ラッシュとなっていますが、かねてから充電時間や航続距離などの課題は山積みでした。今後、EVが普及するにはどのような対応が必要なのでしょうか。

■EVは環境に良いというが…充電問題が不安要素?

 2021年1月28日にマツダはコンパクトSUV「MX-30」のEVとなる「MX-30 EV MODEL」(以下、MX-30EV)を発売しました。
 
 各社から続々と登場するEVですが、現時点ではどのようなラインナップが存在し、課題となる充電インフラはどうなっているのでしょうか。

 国産EVは、2010年に日産「リーフ」と同時期に三菱「i-MiEV」が登場。そして、三菱「ミニキャブMiEV」(2013年)や日産「e-NV200」(2014年)、2代目リーフ(2017年)などが登場した後、2020年には、ホンダが10月30日に「ホンダe」、前述のMX-30EV、2021年中頃には日産「アリア」と、一般ユーザー向けのEVが続けて日本市場に投入されます。

 また、トヨタは軽自動車(超小型モビリティ)「C+pod(シーポッド)」を、2020年12月25日に法人や自治体向け限定で販売を開始。個人向けを含めた本格販売については、2022年を目途に開始する計画だといいます。

 このように、さまざまなボディタイプのEVが登場していますが、昨今のユーザーはEVにおいて1回の充電で走行可能な距離を重視している傾向にあります。

 現在、公表されている各EVの航続距離(WLTCモード)ではリーフの40kWh仕様322km、62kWh仕様が458km。MX-30EV(35.5kWh)は256km。 

 一方で、都市型コミューターのホンダe(35.5kWh)では、259kmから283km。さらに、近隣移動をメインとするシーポッド(9.06kWh)が150kmです。

 また、2021年中頃に発売予定のアリアは2WDモデルの65kWh仕様が450km、90kWh仕様が610kmとなり、4WDモデルの65kWh仕様が430km、90kWh仕様が580kmと大容量バッテリーを搭載するため航続距離も従来のガソリン車並みとなります。

 これらのように同じEVでもコンセプトによって、バッテリー容量や航続距離は異なり、一概に比較は出来ないことがわかります。

 しかし、ユーザーが航続距離を重要視する背景には、従来のガソリン車と違いガソリンスタンドと充電スポット、給油時間と充電時間で大きな差があることが要因としてあります。

 一般社団法人 次世代自動車振興センターによると2020年3月時点の充電スポットは全国に約1万8000箇所となり、ガソリンスタンドの約6割に匹敵するといいます。

 設置場所は、自動車販売店やSA/PA、道の駅、商業施設など身近な場所にあるものの、1回あたりの充電時間は急速充電を使った場合30分で80%というのがほとんどです。

 ガソリン燃料であれば、多くても5分ほどで給油時間は済みますが、充電の場合30分から60分掛けて80%と不安要素は残るほか、EVが普及するにつれ充電待ちの渋滞が発生します。

 現時点でもリーフオーナーなどからは、「PHEVが充電したままどこかに行って帰ってくるまで1時間くらい待った」というような充電時間やマナーに関する課題が聞かれます。

 では、今後の日本におけるEV市場はどうなるのでしょうか。国産メーカーのパワートレイン開発者は次のように話します。

「乗用車ならび商用車のEVは、世界的な電動化によってラインナップは拡充すると思います。

 さらに、2、3年後には従来のリチウムイオン電池よりも大きく性能が向上する全固体電池が実用化され、搭載されるモデルも出てくるでしょう。

 全固体電池の充電時間はリチウムイオン電池よりも大幅に短縮出来るといわれています。

 そうなると問題となるのが、リチウムイオン電池を搭載するEVと全固体電池を搭載するEVが街中の充電スポットで混在することです。

 充電時間の問題において30分以上掛かるEVと10分ほどで終わるEVがあることで、新たなトラブルに発展する可能性もあります。

 そのため、充電スポットを増やすことはもちろんですが、異なる充電性能を持つEVが混在することを予想して充電方法のルール化をすることで、効率的なEVインフラが整うのではないでしょうか」

■EVは車両価格が高いのも普及の弊害?

 EVが普及しづらい要因として、前述の充電問題以外に車両価格が従来のガソリン車より高価格なことが挙げられます。

 リーフの場合、40kWh仕様が332万6400円から418万9900円、62khW仕様が441万1000円から499万8400円(NISMO、AUTECH除く)。

 ホンダeは2グレードのみで451万円と495万円。MX-30EVは3グレードとなり451万円、458万7000円、495万円と、どちらも35.5kWh仕様となるためか同等の価格帯です。

 また、アリアの車両価格は公表されてませんが、日産は「お客さまの実質購入価格は約500万円からとなる見込みです」と説明しています。

 この実質購入価格とは、各種補助金を差し引いたことを指します。現在、EVへの補助金は住んでいる地域などにより異なるものの、基本的には国の補助金、都道府県の補助金、市区町村の補助金などが用意されています。

マツダ初の量産EVとなる「MX-30 EV MODEL」。EV購入に不安なユーザー向けのサポート体制が充実している?

 EV普及のためにメーカーや国、地方自治体がさまざまな取り組みをおこなっていますが、MX-30EVを新たに発売したマツダでは従来のガソリン車などと同等の残価率を設定したといいます。

 最近では、新車の購入方法として定着化している「残価設定ローン」ですが、これは将来、クルマを買い換える際に残っている下取り価格(残価率)を購入時に設定しておくことで、その価格を引いた残価に対してローンを組んで支払う方法です。

 そのため、人気モデルのほうが残価率は高い傾向にあります。一方で、EVはバッテリーが消耗していくことで売却時の価格が下がりやすいといいます。

 しかし、マツダでは従来のマツダ車(ガソリン/ディーゼル)と同等の3年で55%の高い残価率を設定することで、EVの購入面のサポートをおこなうとしています。

 マツダは、MX-30EVの購入について次のように説明しています。

「お客さまにEVを選択肢のひとつとして検討いただけるように、従来のエンジン車同等の残価率を設定しました。

 また、購入前の不安を和らげるために、EV生活が体感出来る『1DAYモニター試乗』やEV専用ダイヤル』を設定することで、EVの購入をサポートします」

※ ※ ※

 従来のガソリン車やディーゼル車とは、さまざまな面で異なるEV。かつてリーフが登場した際には「まだEVは早い」というような声が聞かれましたが、各社が続々とEVを投入することで、着々とEV時代の到来が近づいています。

 今後、充電インフラや購入時の負担などがどのように解決されるかが、EV市場拡大の鍵となりそうです。

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