近年、国内市場では「SUVジャンル」が人気を博し、さまざまなボディサイズやパワートレインを設定したモデルが増えています。そうしたなかで、「SUV」や「クロスオーバー」といった呼び方をしますが、それぞれにはどのような違いがあるのでしょうか。
■「SUV」と「クロスオーバー」に明確な定義はあるの?
最近、流行りの車種にSUVが挙げられることが多いですが、各社によって「SUV」や「クロスオーバー車」「クロスオーバーSUV」とさまざまな名称で呼んでいます。
では、SUVとクロスオーバーにはそれぞれどのような定義があるのでしょうか。
SUVは、「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の略語で、アメリカからやってきた言葉です。
1960年にアメリカで流行っていた「ピックアップトラック」がきっかけで、1980年代になってアメリカでピックアップトラックにシェルを被せるカスタムが流行し始め、これが今のSUVの始まりといわれています。
日本でSUVの元祖ともいえるトヨタ「ハイラックスサーフ」や日産「テラノ」が1980年代に登場して人気を博しました。
一方で、クロスオーバーはSUVの形をしていますが悪路走行より舗装路走行に重点をおいたクルマのことを指しているのが特徴で、SUVのなかでも乗用車に近いクルマのことを指しています。
1990年代に登場したトヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」など、コンパクトさに加えカジュアルなスタイルがユーザーの支持を得て大きな反響を得ます。
このスタイルの人気がSUVを悪路走行だけでなく普段でも使えるクルマという認識をユーザーに植え付けることに成功し、次第にクロスオーバーという言葉が使われるようになります。
クロスオーバーの見た目はSUVにとても近く、見分けがつきにくいですが明確な違いはあるのでしょうか。
SUVとクロスオーバーの違いについて、SUV専門店のスタッフは以下のように説明します。
「SUVはオフロード向けの車種となっており、車高が高く、走りもパワーがあります。
どちらかというとアウトドアやスポーツなど多目的で利用される人が多いです。
一方でクロスオーバーは街乗りをメインとしている車種となっており、トヨタ『ハリアー』や『C-HR』がその代表モデルです。
クロスオーバーはあくまで、SUVのなかのひとつの分類といわれており、グレードで違いを出していたり、メーカーによってすみ分けは変わっており、明確な定義はありません」
■代表的なクロスオーバーとクロスオーバーではないSUVとは?
SUVの分類はメーカーによって線引きは異なりますが、棲み分けのひとつとしてフレームの違いが挙げられます。
SUVのなかで「クロスカントリー」と呼ばれる悪路走行さが重視された車種には、ラダーフレームが採用されており、フレームが頑丈であることから悪路で高いタフさを発揮し、トヨタ「ランドクルーザー」シリーズにはこのフレームが使用されています。
とくにフレームとボディが切り離すことが出来ることから、悪路でボディにダメージがあってもフレームさえ問題なければ走り続けることが出来るといったメリットがあります。
一方で、ほとんどの乗用車に採用されているモノコックフレームはクロスオーバーの多くに採用されています。
モノコックフレームは、ラダーフレームより軽量化できることから燃費性能が高く、衝突時の安全性の高さも挙げられるほか、優れたハンドリングを実現します。
トヨタでは、クロスオーバーは街乗りを重視した都市型のSUVを指し、一般的に乗用車と同じモノコック構造を採用した本格的なクロスカントリーを除いたSUVをクロスオーバーと呼んでいるとしています。
実際に各メーカーのSUVを見てみると、前述のRAV4や日産「エクストレイル」などは、見るからに悪路走行をメインとしたスタイルであり、メーカーのキャッチコピーからも普通のSUVではないように取られがちです。
ですが、見るからに本格的に悪路走行ができるスタイルで、実際にハイテク技術を使用して悪路走行が可能となっていても、フレームがモノコックを採用していることため、これらのモデルはクロスオーバーと分類されます。
反対に、SUVのなかでクロスオーバーに含まれない代表国産車には、前述のランドクルーザーや「ランドクルーザープラド」、スズキ「ジムニー」「ジムニーシエラ」が挙げられます。
ジムニーは軽自動車ですが、本格的に悪路を走行できる車種として古くから知られています。
その秘密は堅牢なラダーフレームのおかげですが、現行モデルもラダーフレームを受け継いでいることから、クロスオーバーには分類されません。
トヨタの高級SUVとして知られるランドクルーザーも、街乗りに利用しても違和感がなく都会的なデザインであることから、クロスオーバーと間違われやすいです。
しかし、実際はラダーフレームを使用し、本格的な悪路走行を可能としていることから、やはりクロスオーバーには分類されません。
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車種によってクロスオーバーに見えて実は違うクルマ、反対にクロスオーバーに見えないけど実際はクロスオーバーに分類されるクルマがあります。
そのため、輸入車に目を向けてもジープ「グランドチェロキー」のように、クロスオーバーに見えなくてもクロスオーバーに分類されるといった車種が数多く存在します。
しかしフレーム構造の違いにより分類分けをされているため、実際は先進技術により悪路走行も可能としている都会派クロスオーバーも数多く存在するため、「クロスオーバーSUV」といった造語も出てきています。
また、トヨタ「アクア(クロスオーバー)」やホンダ「フィット(クロスター)」「フリード(クロスター)」、先代の日産「ノート(シーギア)」などはコンパクトカーながらクロスオーバーテイストに仕立てているなど、その定義はさらに広がりつつあるようです。
このようにSUVやクロスオーバーといわれるクルマに細かな違いが出来てきた背景には、ユーザーのニーズが多様化したことに対応するメーカーの答えだといえます。