気温の低くなる冬季シーズンに注意すべき軽油の「凍結」。どのような部分に注意が必要なのでしょうか。
■なぜ軽油は凍る可能性があるのか?
冬場は、降雪地帯でなくても山間部などでは気温低下により、路面や水道管が凍結する可能性があります。
さらには、ディーゼル車の燃料である軽油も条件によって凍結する恐れがあるといいますが、軽油の凍結とはどのようなものなのでしょうか。
現在の日本市場において、クルマの種類はガソリン車(レギュラー/ハイオク)、ディーゼル車(軽油)、燃料電池車(水素)、電気自動車(電気)が展開され、それぞれ必要とするエネルギー源は異なります。
なかでも、ディーゼル車は過去10年ほどでクリーンディーゼル車として世界的に普及しているパワートレインです。
とくに日本では軽油の価格は、レギュラーより約20円、ハイオクより30円ほど安価となっていることもあり、日々の燃料代を抑えることが可能なことから、一定の人気を誇っています。
しかし、降雪地帯などの寒冷地では、冬場に軽油が凍ってしまう恐れがあるといいます。
軽油について、石油元売会社の担当者は次のように説明しています。
「軽油は、成分にワックス分が存在し、低温になると結晶が分離します。
この結晶が多くなると燃料ポンプのフィルタが詰まった結果、エンジンが始動出来なくなります。この現象を凍結といっております。
凍結を防ぐためには、季節と地域によって凍結しないように製油所で数種類を作り分けて出荷しています。
軽油の種類はJIS規格によって『特1号、1号、2号、3号、特3号』に分類され、数が大きくなるほど低温流動性は良く、凍結しにくくなります。
切り替わる地域や時期の目安については、日本工業規格の発表する『JIS K 2204:2007軽油』内の解説『軽油使用ガイドライン』に地域および各月において、推奨する軽油の種類が記載されております。
それぞれの条件によって軽油を切り替えているため、寒冷地においては現地のガソリンスタンド(SS)で給油することをお勧めします」
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なお、凍結しづらいとされる『3号軽油、特3号軽油』は以下の条件で推奨されています。
3号軽油は、「12月:北海道全域、東北、中部地方山岳部」や「1月から3月:道南、東北、中部地方山岳部」。特3号は「1月から3月:北海道(道南を除く)」です。
また、ディーゼル車の取扱説明書には、「寒冷地に移動する際は到着するまでに燃料の残量が1/2以下になるようにしておき、なるべく早く現地で燃料を補給することを推奨します」という内容が記載されています。
万が一、燃料タンクの軽油が凍ってしまったら、気温の上昇を待ったうえでロードサービスを利用するのも確実です。
なお、レギュラーやハイオクなどは軽油とは異なり、凍結することはないといいます。
■軽油以外にも凍結する場所は…どこ?
寒冷地では、軽油以外にも凍結する可能性があるものがいくつか存在します。
クルマに関わる液体関連でいえば、ウォッシャー液や冷却水(LLC:ロングライフクーラント)も条件によって凍結するといいます。
降雪時の走行では、視界を確保するためにワイパーを作動させますが、ガラス面が汚れていた場合にウォッシャー液を用いることも考えられます。
しかし、外気温が低い寒冷地ではノズル内のウォッシャー液が凍結することがあるほか、専用のウォッシャー液ではなく水道水などで代用している場合には、ウォッシャータンク内まで凍ってしまうこともあるようです。
そのため、ウォッシャー液の濃度を高めにしておくか、寒冷地仕様のものに交換しておくことが大切です。
次に冷却水でも凍結対策をしておく必要があります。冷却水の濃度は30%から50%が一般的です。
しかし、この濃度では30%で-15度、50%は-36度で凍結するため、寒冷地などでは濃度を濃くしていたほうが凍結防止に繋がります。
そのほか、積雪後の凍結が考えられる場所としては、道路の凍結が想像しやすいですが、それ以外にもフロントガラスやワイパー、ドアノブなども凍結する可能性があり、それゆえのトラブルも多発しています。
寒冷地での凍結防止策について、東北地方で中古車業を営む整備士は、次のように話します。
「寒冷地に住んでいる人の冬対策として、タイヤ交換やチェーンの準備をする人、ガラスが凍った場合のスクレーパーやドアノブ用のスプレーを車内に常備する人などは多くいますが、ウォッシャー液やLLCまで気にする人は少ないかもしれません。
また、バッテリーやエンジンオイルも寒さによって性能が低下することがあります。
そのため、クルマ全体の冬準備として、凍結防止グッズの確認やクルマ自体の点検しておくのがいいかもしれません」