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除雪車の運転手不足が深刻化! 雪国に欠かせない存在はなぜ減少傾向にあるのか

くるまのニュース 2021年2月7日 9時30分

冬に見かける雪国での除雪車の作業風景。近年では担い手が少なく人手不足により、作業が追いついていないことが問題となってきています。では、実際の除雪作業とはどのようなもので、どのような問題が発生しているのでしょうか。

■除雪作業の人員はなぜ不足しているのか?

 2021年になってから積雪地域では連日多くの雪が降り積もり、2021年1月中旬には宮城県の東北道で雪によるホワイトアウトが影響で、多重事故が発生したというケースも見られています。
 
 そんな積雪地域での除雪作業はライフラインに直結する重要な仕事です。しかし近年、除雪業者が事業から撤退し、除雪作業の人員不足が問題となっていますが、現状はどうなっているのでしょうか。

 除雪業者は、毎年の積雪量によって作業時間や負担も変動するため予測がしにくい点や、人員の確保、除雪機械を維持し続ける莫大な管理費の負担などに経営リスクを感じる点が事業から撤退する主な理由となっています。

 また、除雪車のオペレーターの高齢化が進み、現場ではあと数年で定年を迎え、引退するオペレーターが作業員のメインとなっている点も指摘されています。

 日本建設機械化協会北陸支部が発表する「除雪オペレーターの年齢構成の推移(北陸3県)」を見ると、1998年には31歳から40歳までが23.6%、41歳から50歳までが30.3%、51歳から60歳までが27.2%でした。

 2009年では、31歳から40歳までが22.1%、41歳から50歳までが23.6%、51歳から60歳までが32.4%となり、当時30代・40代だった除雪オペレーターが、月日が経つに連れて年を重ね、50代の割合が増えています。

 一方で、21歳から30歳までは1998年には15.7%だったのに対し、2009年には7.1%と、若い世代の数値は大幅に減少しており、除雪事業自体が撤退していることが原因により若い人材が雇用できずオペレーターの確保や育成が大きな課題となっています。

 除雪作業の人員不足について、北海道の土木工事業に勤務するある男性は以下のように話します。

「除雪業者の人員不足は毎年会社の課題となっています。各業者との意見交換会をおこなう際もメインの議題として上がるのは人員不足の話題です。

 求人広告を頻繁に出し、工夫しているものの若い人からの応募はほとんどありません。

 今は私の会社で扱っている機械の10台はこの時期にすべて除雪で使用していますが、あと5年もすれば人手が足りず10台が回らないと思います。

 そもそも最近の若い人は仕事の安定や休日が取れる仕事を探している人が多いようです。

 除雪作業のような仕事は冬場の間の休みは限られかなり不規則な仕事のため、そういった勤務条件も応募が少ない理由といえます。

 また、大きなクルマを扱う魅力や乗りたいといった気持ちを持っている若者も少なく、建設業界自体に若者が少なくなっていると聞きます。

 免許や資格が必要な車両もあるため技術が必要ですが、能力給を設けているので成長した分給料に反映されますし、とてもやりがいのある仕事なので若い人たちにはぜひ来てほしいと思っています」

 また、高速道路上の除雪作業についてNEXCO中日本の広報担当者は、次のように説明しています。

「除雪作業の仕事は本当に予測がつきません。雪の降るとき、降らないときの差が激しく、2年間除雪作業が必要なかった時期もありました。

 そういった状況から、必然的に昔からお願いしていた人が残り年齢層も高くなっています。

 また、除雪作業は大きな車両を使って動かすので慣れも必要で、若い人が入ったとしても経験が少ない状況となっていました。

 そこで弊社では2020年11月に除雪車両のオペレーターを育成する『車両操作シミュレーター』を開発しました。

 今後、名神高速道路や北陸自動車道などの担当する彦根基地でこのシミュレーターを導入して、オペレーター未経験の人や経験の少ない人でも練習ができるような訓練を開始予定です。この製品で若い人の経験不足を補い、育成を図っています」

※ ※ ※

 さらに、NEXCO東日本ではオペレーターの運転操作を視覚的に支援する「除雪車運転支援システム」が2017年より導入しており、今後は走行運転の自動化にも取り組み、除雪作業の自動化を目指す方針となっています。

 少子高齢化が進み、人口自体が減ってきており、除雪作業の人員不足は避けられない問題だといえます。

■除雪の作業は誰がどのようにおこなっているの?

 積雪地域に欠かせない除雪作業ですが、除雪車には特殊な運転資格が必要となっています。

 道路除雪用機械には除雪トラック、ロータリー除雪車、除雪グレーダ、小型除雪車などの種類があり、それぞれの除雪機械に対して、特殊車両の運転資格免許と講習受講義務が課されています。

 また、秋田県が提示している除雪機械運転員資格基準には、除雪トラックの場合大型免許が必要で、大型自動車の運転経験が1年、除雪グレーダの場合は大型特殊免許(装輪式)が必要で、建設機械施行技師(3種)または技能講習修了の資格が必要と定めており、大型特殊自動車(装輪式)の運転経験を2年と定めています。

 たとえ資格を取得したとしても、実際に除雪作業をおこなうには各地域が定めている車両の運転経験年数が必要です。

 では、実際に除雪作業はどのようにしておこなわれているのでしょうか。

 通常、除雪作業は交通量が多くなる時間を避けておこなわれます。

 道路幅の広い幹線道路では、除雪グレーダや除雪トラックを使って路面の新雪を走行車線から取り除き道路脇に寄せ、道路幅の狭い生活道路では、タイヤショベルが使用されます。

 圧雪で凸凹になった路面を平らにする作業も同様に、道路幅に合わせてそれぞれの車両を使って氷盤を削り取ります。

 状況によってさまざまな車両を使い分け、高速道路の場合では梯団除雪と呼ばれる複数の車両がそれぞれななめに走行し除雪を行う作業方法がとられています。

 また積雪量によっては日中に作業する場合があり、天候によって不規則に除雪がおこなわれます。

 NEXCO東日本北海道支社の広報担当者は、毎年の除雪作業について以下のように話します。
「とくに高速道路の除雪作業は、ただ免許を持っていても細かい知識や技術がないと動かすのは難しいです。

 弊社の場合は、毎年冬に農家の人に除雪作業をおこなっていただいています。冬は農家もおやすみになるので、空いた時間に稼ぎたいという方が契約して仕事をしてもらっています」

過酷な環境下のなか、除雪作業をする仕事は簡単とはいえないが大切な仕事です。

 また、北海道在住のある農家の男性は以下のように話します。

「わたしが住んでいる地域では、役場の職員が除雪作業をおこなっています。

 その職員は、冬は除雪作業、それ以外の季節は道路整備や施設の運転手などの仕事をおこなっているようです。

 農家ではトラクターを持っているところがほとんどで、トラクターに除雪する機械を取り付けることができるため、近辺は各々で除雪作業をおこなっている場合もあります」

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 除雪作業は天候の状況によっても作業量が異なります。また、ただ免許を持っていてもある程度訓練を積んでいないと除雪作業の仕事をおこなうことは困難といえます。

 積雪地域に住む人々と除雪は切っても切り離せない関係のため、今後も除雪作業ならび対策がスームズにおこなえる工夫が必要といえるでしょう。

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