キャンプを趣味とする人では、SUVやミニバンを所有している人が多いようですが、それらの「王道」ではなく、意外なクルマでキャンプに行く人もいるようです。実際にどんなクルマでキャンプを楽しんでいるのか調査してみました。
■バブル期とは違う、現在のキャンプブームの特徴は?
新型コロナウィルスの感染拡大から、「密」を避けられるアウトドアが流行しています。
そのなかのひとつとしてあげられるのがキャンプですが、じつはコロナとは関係なく数年前から注目を集めており、第2次キャンプブームの到来ともいわれているほどです。
バブル期におこった第1次ブームは、火を囲んで大人数でワイワイするようなスタイルでした。
一方、現在のキャンプ人気はSNSでの「写真映え」が原動力のひとつともいわれるだけあって、「お洒落」や「ガチ」がキーワード。人数はあまり関係なく、ひとりで行く「ソロキャンプ」を愛好する人も少なくありません。
そうした背景からか、現代のキャンプでは「モノ」へのこだわりが強い印象です。
かつてのブームのときは有名アウトドアブランドメーカーのキャンプグッズをまるでお揃いのように皆が使っていましたが、いまは海外から個人で取り寄せたり、軍用の装備品を転用したりと、実用性と個性を兼ね備えた思い思いのギアを使用しているキャンパーが目立ちます。
キャンプ場までの移動の足に、あるいはテントや宿の代わりにも使われるクルマもまた、そうしたこだわりの道具のひとつとしてとらえられているようです。
興味深いのは、第1次ブームのころの自動車市場はクロカン四駆が流行し、現在はSUVがブームということ。どちらもオフロードに強いジャンルで、アウトドアにマッチします。
もちろん、ほとんどのキャンプ場はオフロード性能どころか4WDすら必要とせずアクセスできますが、やはりイメージは大事ということでしょう。
では、実際にキャンプを趣味とする人は、どんなクルマに乗っているのでしょうか。
トヨタ「ランドクルーザー」(ランクル)に乗るNさん(20代・男性)は、「ランクルの悪路走破性能はもちろん不要ですが、キャンプ場は自然が豊かで、そういうシーンにハマるのはやはり陸の王者ことランクルだと思います。あと世界中のハードな環境下で使われている『本物』であることも購入した理由ですね」といいます。
シティ派SUVを所有するYさん(30代・男性)のように、「本格的なオフロード車は欲しいのですが、普段使いを考えるといろんな面でちょっとオーバースペック」と考える人も少なくないようです。
そうした葛藤の末Yさんは、「日ごろは一人で乗ることも多いですし、燃費や維持費も考えてホンダ『ヴェゼル』を選びました」とのことでした。
その一方で、近年主流となっているスタイリッシュなSUVに否定的な意見もあります。
Iさん(30代・男性)は「SUVはリアウインドウが寝すぎていて、積載量が少ないんです。うちは家族4人+荷物フル積載でキャンプに行くので、ミニバンという選択肢以外ありません」と、トヨタ「ヴォクシー」でキャンプを楽しんでいることを教えてくれました。
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かつてのキャンプブーム時は、三菱「パジェロ」やトヨタ「ハイラックスサーフ」、日産「テラノ」といったクロカン四駆が支持されるとともに、ちょうどスバル「レガシィ」がヒットしていた時期と重なったことからステーションワゴンも人気がありました。
三菱「デリカ スターワゴン」も人気でしたが、アウトドアシーンにおいてミニバン(ワンボックスカー)は押され気味。しかし現在は、キャンプ場にもよりますが、意外にもミニバンが優勢なところが多いようです。
なかでも増えているのが、ホンダ「フリード」のようなコンパクトサイズのミニバンや、スズキ「ソリオ」のようなトールワゴンです。
トヨタ「シエンタ」に乗るSさん(30代・男性)は選んだ理由を「子供2人が小さいうちはジャストなサイズだから」と話します。「車中泊を考えなければ快適です」と満足度は高いようです。
■輸入車でのキャンプはクール! 意外と多いカーシェアリング勢
アウトドアの風景にマッチし、道具としても使いやすいSUVやミニバン、ステーションワゴンは、キャンプ向けのクルマとしては王道です。
しかし、そうした王道をチョイスすることをヨシとしない層は、いつの時代にも存在するものです。
フィアットの現行「500」でキャンプを楽しんでいるMさん(30代・男性)のイメージは、イメージは仲間と盗んだお宝をたんまり載せて市街地も野山も走りまわるルパン三世だそう。
ただアニメそのままに古いフィアット「500」だと、さすがに小さすぎるのと信頼性に不安が残るので新世代のモデルを選んだそうです。
輸入車では、ルノー「カングー」やミニ「クラブマン」もアウトドア好きに人気があります。
どちらかといえば王道のカテゴリですが、「輸入車だからかちょっと肩の力が抜けていて素敵。次期愛車の候補です」と前出のMさんも気になっている様子でした。
あえてスポーツカーでキャンプに行く猛者も意外と多かったりします。
日産「フェアレディZ」に乗るAさん(20代・男性)は「こだわる、というより欲しいクルマがZだっただけで、複数台は所有できないからこれで何でもやってるだけです。ソロキャンプなら意外とどうにかなります」といいます。
キャンパーの人たちに話を聞いて驚いたのが、キャンプに「カーシェアリング(カーシェア)」を利用している人が想像以上に多いことです。
アウトドア趣味はマイカーがあってこそというのは時代錯誤で、必要なときに必要な分だけ借りるというのがスマートな楽しみ方だといいます。
車種や走行する距離にもよりますが、カーシェアなら1泊2日で1万5000円から2万円が相場です。マイカーを所有して駐車場などの維持費がかかる場合、カーシェアのほうがお得なケースが多いようです。
実際にカーシェアを利用しているKさん(40代・男性)は次のようにいいます。
「キャンプに向いていそうなクルマはあまり数がなかったりしますが、天候次第で当日キャンセルもありえる自然相手の趣味では、キャンセル料がかからないカーシェアはありがたいです。
週末は予約が埋まっていたり、前の枠に利用していた人が事故などをおこして急遽そのクルマが使えなくなったりすることもあります」
お勧めは平日の利用だそうで、予約も空いているし、カーシェア会社によっては平日パックなどお得なプランの設定があることも。もちろん、キャンプ場も空いているそうです。
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キャンプ場に行くと本当にさまざまなクルマが停まっていて、皆さん思い思いにアウトドアを満喫し楽しんでいることがうかがえます。
景観にドンピシャでハマるクルマや使い勝手の良さそうなクルマは確かに「映え」ますが、一見すると場違いなクルマでも、たくさん荷物を積んで「道具」として使い倒している姿は、それはそれでカッコよく見えるものです。
これからキャンプを始める、あるいはキャンプに使うクルマの購入を考えているという人は、まずは今所有しているクルマやカーシェアリングでキャンプに行ってみて、自分にとって何が重要な要素かを見極めるのも良いのではないでしょうか。