1990年代の初頭にステーションワゴンはブームとなり、各メーカーから次々と新型車が発売。なかにはハイパワーなエンジンを搭載したモデルも存在し、高い人気を誇りました。そこで、1990年代に登場した高性能ステーションワゴンを3車種ピックアップして紹介します。
■ツインターボエンジンを搭載した高性能ステーションワゴンを振り返る
アウトドアレジャーやスキー人気を背景に、1990年代の初頭にはステーションワゴンブームが起こりました。そのため、各メーカーとも次々と新型ステーションワゴンを発売し、豊富なラインナップを展開します。
そうして誕生したステーションワゴンは実用性を重視したモデルが主流でしたが、なかにはハイパワーなエンジンを搭載したモデルも存在。
そこで、今では希少なツインターボエンジンを搭載した高性能ステーションワゴンを、3車種ピックアップして紹介します。
●スバル「レガシィ ツーリングワゴンGT-B Sエディション」
まさしくステーションワゴンブームの火付け役となったのが、1989年に発売されたスバル「レガシィ ツーリングワゴン」です。
新開発の水平対向4気筒エンジンを搭載し、発売当初はセダンのみにターボエンジンを搭載していましたが、追ってツーリングワゴンにも設定され、高性能ステーションワゴンのイメージを確立しました。
そして、1998年に発売された3代目レガシィは、2代目と同様に5ナンバーサイズのスリムなボディで登場。初代、2代目の薄型ヘッドライトから上下2灯式の大型ヘッドライトとしたことで、フロントフェイスのイメージを一新。
トップグレードの「GT-B」には2代目から継承された2ステージツインターボの「EJ20型」が搭載され、最高出力は280馬力(5速MT車)を発揮。駆動方式は全車4WDです。
その後、さらなる改良と数々のチューニングモデルが設定されましたが、モデルライフ末期の2002年に発売された特別仕様車で、印象深いのが「ツーリングワゴンGT-B Sエディション」です。
エンジンを含むパワートレインはGT-Bと同一ですが、フロントブレーキは赤く塗装された対向4ポットブレーキキャリパーを装備し、15:1のクイックステアリングギヤレシオ、フロントヘリカルLSD(5速MT車)を専用に搭載するなど、走行性能の向上が図られました。
さらに外装は専用のカラーリングを設定し、内装ではアルミパッド付スポーツペダル、チタン調パネル、チタン調リングのMOMO製ステアリングホイールなどを装備し、スポーティに演出。
Sエディションは短命でしたが、3代目レガシィにおける進化の集大成といえるモデルです。
●三菱「レグナム VR-4」
三菱「レグナム」は、1996年にミドルクラスセダンの8代目「ギャラン」の姉妹車として登場したステーションワゴンです。
前出のレガシィ ツーリングワゴンに対抗して発売されたモデルで、外観は8代目ギャランと同じ意匠の精悍なフロントフェイスと、伸びやかにデザインされたキャビンが特徴です。
また、世界初となる量産ガソリン直噴エンジン(1.8リッター)をギャランとともに搭載するなど、技術的にも先進的でした。
トップグレードの「VR-4」には、最高出力280馬力を発揮する2.5リッターV型6気筒ツインターボエンジンを搭載し、フルタイム4WDシステムを組み合わせています。
この駆動系にはリアの左右駆動力配分を電子制御して旋回性能を高める「AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)」を装備。さらに足まわりには4輪マルチリンクサスペンションを採用するなど、動力性能だけでなく高い運動性能を誇りました。
さらに1998年には、専用の大型エアロパーツ、ラリーアート製スポーツマフラー、ハイグリップタイヤ、MOMO製本革巻ステアリングホイール、レカロ製バケットシートなどが装備された「スーパーVR-4」を発売。
レグナムはベーシックなモデルから高性能モデルまで、さまざまなニーズに対応したことで人気となりましたが、三菱の経営状態の悪化とステーションワゴン人気の低下から、2002年に生産を終了し、後継車はありませんでした。
■スカイラインGT-Rのコンポーネンツが移植された至高のステーションワゴン
●日産「ステージア オーテックバージョン 260RS」
1968年に発売された日産3代目「スカイライン」以降、クーペ、セダン以外にステーションワゴンもしくはライトバンがラインナップされました。
しかし、1989年に登場した8代目(R32型)で、ステーションワゴンが廃止されました。
そこで、日産は新たなミドルサイズ・ステーションワゴン専用車として、1996年に初代「ステージア」を発売。
シャシやパワートレインなど主要なコンポーネンツは9代目(R33型)スカイラインと共通で、エンジンは全グレードに直列6気筒の「RB型」を搭載。
ステージアには発売当初からターボエンジンを搭載する高性能グレードがラインナップされていましたが、1997年にライバルを圧倒する高性能モデルの「ステージア オーテックバージョン 260RS」が登場します。
ステージア オーテックバージョン 260RSはオーテックジャパンによって開発・生産されたコンプリートカーで、「R33型 スカイラインGT-R」のエンジン、ドライブトレイン、ブレンボ製ブレーキ、サスペンションなどを移植。
エンジンは280馬力を発揮する2.6リッター直列6気筒ツインターボの「RB26DETT型」で、トランスミッションは5速MTのみとされ、スカイラインGT-R譲りの4WDシステム「アテーサE-TS」を搭載し、補強パーツの追加によってシャシ剛性の向上も図られました。
外装はスポイラー形状のフロントバンパー、サイドステップ、リアハッチに大型スポイラーが装着されるなど、迫力ある外観を演出。
内装では専用のスポーツシートやステアリングホイールを装備する程度の変更に留まっていますが、10000rpmまで刻まれたタコメーターはドライバーの高揚感を高めています。
走行性能はスカイラインGT-Rに匹敵しながらもステーションワゴンとして使い勝手の良さがあり、オールマイティに使える高性能モデルとして人気を獲得し、1998年にはマイナーチェンジモデルを発売。2001年まで継続して販売されました。
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一時は隆盛を極めていたステーションワゴンですが、2000年代には人気の低迷から大きく数を減らしてしまいました。
しかし、ステーションワゴンの特徴であるユーティリティやドライビングプレジャーの高さが失われたわけではなく、スバル「レヴォーグ」やトヨタ「カローラ ツーリング」など、国産モデルでも復活の兆しが見えてきました。
まだラインナップは増える状況には至っていませんが、ステーションワゴンが見直される時が来るかもしれません。