中古車を購入する際、車両のチェック項目としてタイミングベルトの交換歴に気を使う人は多くいます。しかし最近のクルマに採用されるタイミングチェーンなら、切れる心配はなく安心といわれています。はたして、タイミングチェーンなら100%安心といえるのでしょうか。
■「タイミングベルト交換済み」は中古車選びの重要項目?
中古車選びの際、よく目や耳にするチェックポイントにタイミングベルトの交換歴があります。「タイミングベルト交換済み」などと書かれていることもあり、クルマの品質判断に重要なポイントであることがわかります。
しかし、最近のクルマはタイミングベルトではなくタイミングチェーンの採用が増加しています。
かつてのタイミングチェーンは騒音が大きかったのですが、コンパクトかつ静音のサイレントチェーンが開発されたことによって騒音の問題もクリアでき、タイミングチェーンが主流になりました。
タイミングチェーンならば、タイミングベルト切れで懸念される、エンジンに致命傷を負わすような事態にはならないとして安心してよいのでしょうか。
一般的にタイミングチェーンは、ベルトよりも長寿命で強度も高く、切れる心配も圧倒的に少なくなるといわれています。
タイミングベルトの説明を簡単にしておくと、エンジンの燃焼室への気体の出入りを制御するバルブを駆動するカムシャフトと、エンジンの回転を同期させる重要な部品です。
タイミングベルトが切れてしまうとバルブとピストンの動きが同期せず、エンジンが動かないばかりでなく、ほとんどのエンジンではバルブとピストンが衝突して内部が損傷し、最悪はエンジンが全損するなど高額な修理代がかかってしまいます。
タイミングベルトは、ボンネットを開けるとすぐ見える、エアコンのコンプレッサーや発電機などの補機を回すVベルトと間違われることもありますが、エンジンに付随するカバー内にあり、通常は目にすることができません。
交換時期はメーカーやエンジンにもよりますが、概ね10万kmごとが推奨されていることが多いです。
簡単に切れる部品ではなく、指定時期に交換していていればそれほど恐れるものではありません。
しかし、切れた場合には金額的に廃車を検討するほどの致命傷になるため、中古車購入の際は、タイミングベルトのメンテナンスについて神経質な人は多いでしょう。
そして、しばらく前からタイミングベルトから金属製のタイミングチェーンを採用するエンジンが増え、低年式の中古車を買う以外にベルト切れの心配はあまりなくなったといえます。しかし、タイミングチェーンは切れないと安心してよいのでしょうか。
タイミングベルトはゴム製ですがギザギザの歯が付いており、歯車のようなプーリーと噛み合わさって動きを伝達します。
もし、噛み合いがずれてしまえば切れた場合と同じことが起こります。そのため、ベルトの張力を維持するテンショナーという部品が付いています。
テンショナーはタイミングベルトだけでなくタイミングチェーンにもあることから自動車修理・販売店のスタッフはタイミングチェーンなら絶対安心というわけではないと話します。
「タイミングチェーンを採用しているエンジンはベルト切れがなく安心なことも多いです。
ただ、なかにはテンショナー周辺部品の耐久性に問題があるエンジンもあり、テンショナーが壊れてチェーンと歯車が噛み合わず、タイミングベルト切れと同じようにエンジンを壊すことがあります。
タイミングチェーンでもすべてが安心なわけではありません」(自動車修理・販売店スタッフ)
■オイル交換がタイミングチェーンの寿命に影響
長寿命と呼ばれるタイミングチェーンも、何十万kmも走行すれば当然寿命を迎えます。多くは切れるのではなくチェーンが伸びてしまい、テンショナーの状態によっては同期がずれてしまうといわれています。
タイミングベルトは乾いた状態で回っていますが、タイミングチェーンはエンジンオイルに浸された状態で動くため、エンジンオイルの汚れがひどいと劣化が早く進むことがあります。
タイミングチェーンの増えた現在では、エンジンオイルもタイミングチェーンの摩耗対策を施したものが指定されることがあります。
エンジンオイルの質でよく見かけるAPI規格でも2020年に施行された最新の「SP」グレードのものはタイミングチェーン摩耗の評価も含んでいます。
また、以前からメーカー指定のオイルではタイミングチェーンの劣化対策が施されていることもあります。
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一般的にはタイミングチェーンのほうが耐久性が高く、タイミングベルト交換のようなメンテナンスの必要もないといわれていますが、絶対安心ではないことが分かります。
一方のタイミングベルトでも、きちんと管理していればそれほど心配することはありません。
加えて、エンジンのチェック項目やウィークポイントはタイミングベルトだけではなく、ほかにも定期的なメンテナンスや交換が必要な部品もあります。
車種やエンジン形式ごとに違いが大きいので、エンジンのメンテナンスや中古車選びは一点だけ注視するのではなく、専門家と相談して総合的に判断することをおすすめします。