ホンダの軽2シーターオープンカー「S660」が2022年3月に生産終了します。最後の特別仕様車も発売されましたが、今後S660のようなコンセプトのクルマが登場することはなさそうなので、「今が買い」だといいます。
■2022年3月にS660が生産終了へ
ホンダの軽2シーターオープンカー「S660」が2022年3月で生産中止になるという。驚くべきはこれまでの総生産台数で、わずか3万2000台です。
御存知の通り、S660って専用設計。このクルマのためだけにプラットフォームを作ったのです。
一般的にプラットフォームまで開発すると、少なくとも600億円掛かるという。1台当たりにすれば開発/生産施設への投資だけで最低187万円ということになる。
これにエンジンの価格や部品の価格、生産に掛かる費用など上乗せしていくと、平均して1台230万円で売っても強烈な赤字ということ。ホンダにとっては厳しいモデルになってしまったといえるかもしれません。
S660の前身ともいえる「ビート」の総生産台数は、奇しくもS660とほぼ同じ3万4000台。やはりまったく売れ行きが伸びず、スズキ「カプチーノ」と共に生産終了になったことを思い出す。
余談になるけれど、S660の試乗会でホンダに「車幅を拡大して3気筒1リッターターボを積めば世界で売れるんじゃないか?」と聞いたけれど、「S660はビートとは完成度が違うから国内だけで十分売れると思う」という回答だった。
250万円で160馬力くらいの1リッターターボ仕様があったら私も間違いなく買っていた。というか世界規模で売れたに違いない。
そもそも私の身長(183cm)だとS660には座れない。なんとなれば頭が金属製のルーフバーに当たってしまうのです。
軽自動車ではなく、車幅を1700mmくらいに設定しておけば、もう少し天地方向に余裕を持たせられたと思う。
とにかく、S660は基本的なコンセプトからして無理が多かった。そういう意味では、電気自動車の「ホンダe」と共通項が多い。
■新車で買うなら今! 中古車も高騰必至!?
S660の生産終了は、前述のように1年後の2022年3月。S660を新車で買うのなら最後のチャンスです。
というか、もはやエンジンで走る2シーターミッドシップなど絶対に出てこないので、S660の将来的な値上がりは間違いないでしょう。
絶版車となると人気が出ることは間違いないため、通常仕様(203万1700円から232万1000円)の6速マニュアルを考えているなら迷うことなくどうぞ。
このタイプのクルマは100%マニュアル車のほうが価値が大きい。5年もすれば、そこから値下がりしなくなると思う。ビートと同じ相場展開です。
ビートと違う点を挙げるなら、29年後の2050年になったら、カーボンフリー燃料は残るもののガソリンの販売が終わってしまうことくらいかと。
ホンダファンなら315万円の特別仕様車「モデューロX バージョンZ」などいかがだろう。こちらはマニュアル車しかありません。
ちなみに、ビートの最終モデルもバージョンZだったことから、S660にも採用したという。
バージョンAが存在したワケでもないのに突如「Z」になるあたり、なかなか“珍”でよいと思う。いずれにしろアルファベットの最後だから、最後のバージョンという意味に他ならない。
そもそもコンプリートカーであるモデューロXは、量産段階で足回りなどのチューニングや専用パーツでカスタマイズしている。
モデューロX バージョンZと標準仕様との違いは、オリジナルのボディカラー「ソニックグレー・パール」や黒いアルミホイール、カーボン調のインテリアパーツなど。
ライトなドレスアップカーといったイメージで、コレクターズアイテムとして考えれば上等です。
私(国沢光宏)が強く望んできたワイドフェンダー+出力アップの5ナンバー登録車仕様は最後まで出てきませんでしたが、そんなクルマをモデューロXで作ったら面白かったと思います。
ノーマルの64馬力じゃ物足りない、というならロムチューンだけで10馬力くらいなら上がる。そこからマフラーなど交換することで80馬力くらい出るようになると思う。
このあたりで楽しんでいれば、毎日の足として十分使えるだろう。頭がルーフに当たるというなら、シート交換することで着座高を下げられる。
ということで、“エンジンで走る”最後のミッドシップ2シーターの軽自動車を買い、いろいろ手を加えながら乗るのは楽しいと思う。
新車だけでなくコンディションの良い中古車をプレミア上乗せ無しで買おうとすれば最後のチャンス。
軽自動車なら維持コストだって安いし、セカンドカーの購入を考えているならぜひS660をリストに挙げてみて欲しい。