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「ハイエース」改造のキャンピングカーに熱視線? トヨタも全国展開模索!? アウトドア強化続出の訳

くるまのニュース 2021年3月17日 9時10分

近年のアウトドア需要の高まりを受け、トヨタ「ハイエース」をベースとしたキャンピングカー事業に全国各地のトヨタ系販売店が続々と参入しています。一時はトヨタがメーカー側としても参入していたというのですが、なぜ現在はおもに販売店の取り組みとなっているのでしょうか。

■販売店が手掛けるハイエースのコンプリートカーとは?

 車中泊やキャンプ、そしてサーフィンやスノボのトランスポーターとして、最近改めてトヨタ「ハイエース」の存在が注目されています。そうしたなか、トヨタの販売店で新たな動きが起こっているというのですが、いったいどのような状況なのでしょうか。

 直近でキャンピングカーショーを見回すと、キッチン、シャワールーム、トイレなどの生活必需装備を満載したキャブコンと呼ばれるモデルがある一方で、ミニバンや商用車をカスタマイズするバンコン(バンコンバージョン)への需要が高まっています。

 バンコンのベース車として圧倒的なシェアを誇っているのがハイエースです。全国各地にあるカスタマイズ専業メーカーが各社オリジナルのコンプリートカーや用品を販売しています。

 なかには近年事業が急拡大し、テレビの全国放送で紹介されるメーカーもあるなど、バンコンは社会現象化してきました。

 一方、トヨタの動きを見てみると、ハイエースの新車カタログ上では、ハイエースの基本ボディ区分であるバン、ワゴン、コミューターの3種類のなかで、キャンピングカー仕様コンプリートカー(特装車)のラインナップはありません。

 唯一、アクセサリー・カスタマイズカタログのなかで、トヨタ関連会社のトヨタカスタマイズ&デベロップメントのブランド「モデリスタ」が手掛けるコンプリートカー「MRT(マルチ・ロール・トランスポーター)」が存在します。

 MRTは2種類あり、Type1(床仕様)が、バンのDX(デラックス)“GLパッケージ”とスーパーGLに、またType2(床およびトリム仕様)がスーパーGLに設定されています。

 装備品としては、工場出荷時に架装される出力350Wの補助バッテリーシステムや、販売店オプションとして荷室部分の折り畳み式ベッドキットなどあります。

 とはいえキャンピングカー専業メーカーが手掛けるような、荷室が家かマンションの一室に変身するような大幅なカスタマイズというイメージではなく、MRTはあくまでも商用車の乗用トランスポーター仕様という範疇に止まっています。

 やはり、トヨタとしてはキャンピングカーもチューニングカー分野と同じように、新車のカスタマイズに対しては車両のメーカー保証を踏まえて、ボディ本体に大きな穴あけ加工を伴うような大幅な改良にまで手をつけることは難しいようです。

 ところが、トヨタ車販売店の立場になると状況は少し違っています。

 2020年代になり、全国各地のトヨタ車販売店でキャンピングカーを中心としたアウトドア関連事業を強化する動きが続々と出てきたのです。

 背景にあるのは2020年5月1日付で実施された全販売店全車種併売化の影響です。

 トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店という販売チャンネルのどの店舗でもすべてのトヨタ車を販売できるようになりました。

 2020年5月以前、ハイエースはトヨペット店の専売で、またネッツ店でハイエースバンをベースとしたレジアスエースを扱ってきましたが、そうした販売環境が刷新されたのです。

 そのため、ハイエースに限らず、各都道府県で販売店間での新車販売の競争が激しくなり、販売店とっては新車販売のほかに新たなる収益源を求める傾向が強まってきました。

 そのなかで、1台当たりの付加価値が高く、またいわゆる「コトづくり」分野での収益性が見込めるハイエースのバンコン・コンプリートカーの開発・生産(加装)をしたり、またはキャンピングカー専業メーカーと連携するなどする動きが一気に加速しているのです。

 むろん、トヨタ販売店がおこなう正規事業ですので、メ―カー保証や販売店による各種保証を担保した商品となります。

 すでに実現している事例ついてトヨタ本社に直接聞いたところ、以下が2020年に始まった主な動きです。

●岡山トヨペット
 ハイエースコンプリートカーショップ「HAC BASE(ハックベース)」を2020年2月オープン。同社の旧店舗跡地に開設し、キャンプグッズなども展示・販売。

●横浜トヨペット(ウエインズグループ)
 クルマと趣味を楽しめる新業態店舗「U-BASE(ユーベース)湘南」を2020年11月オープン。オリジナルキャンピングカーの展示のほか、GRなどのカスタマイズにも注力。屋上に中古車展示場やサービス工場も併設。

 また、2020年以前からハイエースのキャンピングカー関連の事業や、SUV事業を強化しているのは次の販売店各社です。

●埼玉トヨペット
 トイファクトリーとのコラボでハイエースのキャンピングカー「Green Buddy」を販売。

●群馬トヨタ
 クロカン車両のチューニングやカスタマイズが得意で、専用体験コースの「RVパーク」も設置。

●宮崎トヨタ
 SUVを活用した遊び方を提案する専門店「SUV BASE」をオープン。

●モビリティ神奈川(KTグループ)
 ハイエースやタウンエースをベースとしたオリジナルキャンパーシリーズ「アルトピア―ノ」を製造・販売。同車ユーザーが無料体験できるキャンプ施設「アルトピア―ノ蓼科」を開設。総合アウトドアショップ・GOOD OPEN AIRS myXを運営。

 このほかにも、キャンピングカーカーやアウトドア関連事業への新規参入を考えているトヨタ販売店が数多くあり、上記の各販売店には全国からの視察が増えているといいます。

■キャンピングカーらしい世界観の「リラクベース」とは?

 じつは全販売店全車種併売化というトヨタ車販売店にとって大きな展開となる前にも、トヨタはじわじわと広まり始めていたキャンピングカーブームを先取りしようと、トヨタ車販売店(当時はトヨペット店)でハイエースなどを使ったカスタマイズ事業を一気に広めようとした時期がありました。

 それは、2017年11月末のことでした。

 ハイエース生誕50周年を機に、第5世代の一部改良がおこなわれたのと同時に、モデリスタからキャンピングカーのイメージを強調したコンプリートカー「Relaxbaxe(リラクベース)」が発売されたのです。

 トヨタが報道陣や販売店関係者などを東京・メガウェブに集めて開催したハイエース生誕50周年記念・記者会見には、筆者(桃田健史)も参加しています。

 その際、ハイエースの開発者やトヨタ国内営業の関係者らは「全国の販売店の一角に、ハイエースや各種SUVをアウトドア向けにカスタマイズできる専用スペースを設けていきたい」と、今後の抱負を語っていました。

 しかし、そうしたトレンドが全国的に大きく展開されるまでには至らず、現在のように一部の販売店が独自の経営方針のなかでキャンピングカーやアウトドアの事業を展開するにとどまっています。

「リラクベース」以降、モデリスタやトヨタ関連ブランドから、キャンプをイメージしたコンプリートカーは発売されていません。

200系と呼ばれる現行型のトヨタ「ハイエース」

 では、今後もこの分野は200系ハイエースが主役であり続けるのでしょうか。フィリピンなどで先行発売された、300系「グランエース」は、ボディサイズが大きいなどの理由から日本導入はないのでしょうか。

 業界内での“各種の噂”では、日本では当面200系継続といわれているようで、そのためにトヨタ販売店各社も200系での各種事業展開を強化しているとも考えられます。

 そのうえで、近い将来には商用車と乗用車の垣根を超えたようなハイエースサイズの新型車、例えるならばホンダ「N-VAN」のような発想のトヨタ大型商用車が登場する可能性が考えられます。

 トヨタ本社ではいま、レクサスを含めて「コトづくり」に対するさまざまなプロジェクトが動き出そうとしている気配を感じます。

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