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「ワゴニア」に「ハマー」「ブロンコ」…消えたアメ車の名前が続々と復活する理由とは

くるまのニュース 2021年3月16日 12時5分

2021年3月11日、新型「Jeep Wagoneer(ワゴニア)」と新型「Jeep Grand Wagoneer(グランドワゴニア)」が世界初公開された。30年ぶりに復活した車名だが、2020年7月にはフォード「ブロンコ」が24年ぶりに、同年10月にはGMC「ハマー」が10年ぶりに復活している。なぜこのところ、アメリカンSUVで懐かしい車名が蘇っているのだろうか。

■「昔の名前で出ています」復活したアメリカ車の車名

 2021年3月11日、新型「Jeep Wagoneer(ワゴニア)」と新型「Jeep Grand Wagoneer(グランドワゴニア)」が世界初公開された。

3月11日に世界初公開されたジープ新型「ワゴニア」のエンブレム

 2021年後半からアメリカ国内で販売されるワゴニア/グランドワゴニア。この車名は、1991年にグランドワゴニアが生産終了されてから、30年ぶりとなる復活になった。

 それだけではない。2020年7月、フォードは1996年に生産を終了していたSUV「ブロンコ」の復活を発表、このモデルはすでに生産が開始されている。また同年10月、GMCから「ハマーEV」も発表され、2021年内の販売を予定している。

 このように、相次ぐ昔の名前の復活。そこには、どのような理由があるのだろうか。

* * *

 まず、話題の3台はどのようなクルマなのだろうか。そこから説明していこう。

 ワゴニアの歴史は古く、初代は1962年に登場した。このモデルはオートマチックトランスミッションが組み合わされた最初の4WD車で、近代的なSUVのパイオニアとして知られている。

ジープ「グランドワゴニア」

 また1984年にはロングボディのグランドワゴニアがデビュー。このモデルは本革シートやエアコン、ステレオラジオなどを装備し、現代に続くプレミアムSUVの原点とも呼ばれている。

 フォード・ブロンコは、1966年に誕生し、1996年まで生産されていたSUVだ。

フォード「ブロンコ」

 初代モデルのライバルは、民生クロカンの祖といえる「ジープ」。その後もブロンコは、2ドア+荷室という質実剛健な本格派として代を重ねていた。そして、24年ぶりの復活となる新型も、その内容は本格派のオフローダー。タフな4WDとして再デビューを果たす。

 ハマーは、アメリカ軍の軍用4輪駆動車「ハンヴィー」をルーツに持つ大型SUVだ。

GMC「ハマーEV」の走り

 1992年に実際の軍用車の民生版として「H1」の名称で販売が開始され、1999年より「ハマー・H1」と名称を変更。2002年より乗用SUVベースに代替わりし(ハマー・H2)、2006年にハマー・H3が登場し、2010年に生産が終了となる。軍用車をルーツにするだけあって、その強面のルックスが最大の特徴であった。

 そんなハマーがEVとなって復活した。発売は2021年後半を予定している。

 プレミアムSUV、本格クロカン、強面のEVという、どれも個性の強い3台。コロナ禍で意気消沈するアメリカ自動車業界としては、明るいニュースとなることだろう。

※ ※ ※

 そんな3台のように、生産終了となっていた旧型モデルの名称が新型で再び採用される、こうした“昔の名前で出ています”という復活劇は、今回の3台にとどまらず、じつは広く世界中で見られる光景だ。

 日本でいえば、ダイハツの軽自動車「タフト」やコンパクトSUVの日産「キックス」、ダイハツ「ロッキー」も、すべて復活した名称だ。

 ダイハツ・タフトは、1984年に生産終了。日産・キックスは、2008年から2012年に生産されていた軽自動車。またダイハツ・ロッキーも、2002年に生産終了となっていたSUVだった。

 さらにいえば、過去2、3年の話題のクルマにも、そうした復活の名称が数多く存在する。トヨタの「スープラ」、ホンダの「インサイト」もそうである。海外ブランドでいえば、2019年に誕生したランドローバーの新型「ディフェンダー」も、3年の生産終了期間を挟んでの復活となる。

■世界的なSUV人気で各社ラインナップの拡充が急務

 そもそも、そうした名称の復活劇が多いのは、いくつかの理由が挙げられる。

かつて人気だったアメリカンSUVで、最近復活した3台。上から「グランドワゴニア」「ハマー」「ブロンコ」

 最大の理由は「知名度」だろう。誰も聞いたことのなかった新しい名称を広く知らしめるのは、非常に手間もコストも時間もかかるもの。とくに飲料品などは売り上げを伸ばすのには膨大なマーケティング費用がかかり、計算してみると商品の販売価格の9割がそうした費用になるという笑い話さえある。

 そうした費用と時間を一気に短縮できるのが、すでにある知名度の高い名称を再利用するという方法だ。とくに旧型の人気が高いほど、その効果が大きい。レクサスのスポーツモデル「LC」の知名度が、トヨタの「スープラ」ほど高くはないというのも、このような歴史があるなしの差ともいえるだろう。

 また、車名には商標という問題がある。自動車メーカーというものは、数多くの車名の商標を取得しており、誰もが知っていそうな言葉を新型車に使うのは、意外と簡単ではない。

 ルノーの「クリオ」が、日本で「ルーテシア」の名称を使うのは、すでにホンダがクリオという名称を商標登録していたからだ。

 そして、もうひとつ注目してほしいのは、ブロンコやグランドワゴニアをはじめ、ディフェンダー、タフト、キックス、ロッキーという、これらの復活劇の名称がすべてSUVというところだ。

 これは端的にいえば、時代のトレンドというのが理由だろう。

 いま、日本で人気を集めるのはSUVとなる。2020年の新車販売ランキングでは、強豪ライバルを抑えSUVの「ライズ」が「ヤリス」に次いで2位に入っている。

 また、日本だけでなく、SUVの注目は欧州や中国でも非常に高まっている。さらにいえば、アメリカは、もともとSUVの人気が非常に高い。ピックアップトラックのフォードF150が、約30年にわたって乗用車も含めて販売台数ナンバーワンになるお国柄だ。

 そこに世界的なSUVブームが到来したのだ。自動車メーカーとしては、売れ筋であるSUVのラインナップをさらに拡充したいと考えるのは当然のこと。

 そして、過去に同様のコンセプトでディスコン(終売)になったモデルがあれば、誰も知らない新しい名称を使うよりも、名称を復活させることを選ぶだろう。

 SUVのブームが到来したことで、SUVの車名復活が増えた。それが、とくにSUVで多くの復活がある理由といえるだろう。

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