かつて「オメガ」や「アストラ」「ヴィータ」などヒットモデルが登場したオペルが日本市場から撤退したのは2006年のこと。それから15年、2021年中にオペルブランドが日本に再参入する。まずは3車種を展開するというが、そのなかの注目車種は「コルサ」だろう。ドイツでは2020年に小型車セグメントでもっとも販売されたコルサとはどんなクルマなのだろうか。
■かつて日本では「ヴィータ」の名前で人気のモデルだった
現在はステランティス傘下のブランドとなったオペルが、日本市場への参入を発表したのは2020年2月。
直後に新型コロナウイルス感染拡大があり、その影響で導入スケジュールは多少ずれたという情報もあるが、それでも2021年終わりまでには日本でオペルブランドを再展開する予定だという。
その際、日本に導入される予定なのが、「コンボライフ」と「グランドライドX」、そして「コルサ」の3モデルだ。
コンボライフは、スライドドアを備えるコンパクトなミニバンで、いま日本でも人気のプジョー「リフター」、およびシトロエン「ベルランゴ」の兄弟車種にあたる。2018年に誕生した現行モデルの現地価格は1万9995ユーロ(日本円で約260万円)からという。
またグランドランドXは、いま世界的に人気のあるジャンルのCセグメントSUVだ。こちらの現地価格は2万3700ユーロ(約305万円)から。グランドランドXにはプラグインハイブリッド版も導入が予定されている。
そしてもう1台、注目のモデルがコルサだ。オペルのグローバルモデルという立ち位置になるこのコンパクトハッチバックは、いったいどんなクルマなのだろうか。
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初代コルサは1982年、当時GMグループだったオペルから登場した。以来、現行型で6代目を数えるロングセラーモデルだ。
日本では、1995年に2代目がはじめて正規輸入されている。当時商標の問題もあり、欧州名のコルサは使用できず「ヴィータ」という車名で販売された。まもなく日本展開される際も、日本市場ではこのヴィータ名を用いると予想される。
ヴィータは、150万円台からという輸入車としては格安な設定や、5ナンバーの手ごろなサイズ感、またヤナセ取り扱いという安心感もあって、大ヒットモデルとなった。また当時の人気ドラマ「ビューティフルライフ」で、女優の常盤貴子さんが演じる主人公が愛車にしていたことも手伝って、販売台数が伸びたという逸話も残っている。
日本に正規輸入されたのは、2001年に登場した3代目まで。そして2006年5月にオペルブランドが日本撤退している。
その後2006年に登場した4代目、2014年に登場した5代目と続き、現行型コルサは2019年のフランクフルトモーターショー(IAA)で世界初公開された6代目となる。
■サイズ的には「マツダ2」や「アクア」とライバルのコンパクトカー
現行型コルサは、全長4060mm×全幅1765mm×全高1435mm、ホイールベース2538mmのBセグメント5ドアハッチバックだ。サイズ的にはトヨタ「ヤリス」やホンダ「フィット」よりも若干大きく、トヨタ「アクア」(全長4050mm)、マツダ「マツダ2」(全長4065mm)のライバルとなる。
欧州では2019年11月にフルモデルチェンジ。スペインのサラゴサ工場では、すでに30万台の現行型コルサが生産されたという。
アダプティブクルーズコントロールやフロントカメラによる交通標識認識、5km/hから85km/hでアクティブになる歩行者および自転車検知機能を備えた自動被害軽減ブレーキ、アダプティブクルーズコントロール、サイドブラインドスポットアラート、180度カメラなどの先進運転支援システム(ADAS)が搭載され、さらにセグメントとして初のLEDマトリクスヘッドライトを装着している。
オペルのラインナップのなかで最小モデルとなるコルサは、ドイツでは2020年の小型車セグメントでもっとも販売されたモデルになり、英国ではすべてのセグメントのなかでナンバーワンになった。2021年もその勢いが続いているという。
欧州以外でも需要が高く、2020年の売上高は前年比でおよそ3倍に伸びている。中東/アフリカ、ラテンアメリカおよびアジア太平洋地域では2021年の最初の2か月ですでに2倍以上になった。
またフルEVの「コルサe」も欧州市場では人気だという。50kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、WLTPモードで337kmの一充電航続可能距離を誇るコルサeは、2020年にもっとも人気のある小型車として「ゴールデンステアリングホイール賞」を受賞している。
この電動化モデルも日本導入がアナウンスされている。コルサの欧州での価格は1万3990ユーロ(約172万円)から。コルサeは2万9900ユーロ(約390万円)となっている。欧州での販売価格を見ると、日本車と遜色ないレベル。
ドイツのプレミアムブランドとは異なる価格帯で、日本に再参入することは間違いないだろう。車両価格的には国産車とも十分に競合できるものになりそうだ。