毎月一定の金額を支払って乗用車に乗る自動車サブスクリプションが、複数の自動車メーカーから登場しています。既存のカーリースやレンタカーとどう違うのでしょうか。また各社のサービスはどのような違いがあるのでしょうか。
■「クルマに乗る」ハードルを低くするサブスク
乗用車を、買うのではなく、毎月定額で使えるサブスクリプションサービス(以下、自動車サブスク)が、自動車メーカー各社から登場しています。
自動車サブスク市場は今後、急速な成長が予想されていますが、現状のサービスにはどのような違いがあるのでしょうか。
日本能率協会総合研究所は2021年3月、自動車サブスクの市場規模が、2025年に500億円まで伸びるという予測を発表しました。2019年の20億円から6年で25倍に成長する計算です。
この予想は、サービスのエリアやプランの拡充、認知度向上などにより市場が拡大する見込みだといいますが、自動車サブスクはどういった特徴があるのでしょうか。また、従来のカーリースやカーシェアと何が違うのでしょうか。
これまで、クルマは販売店で購入して所有するものでしたが、自動車サブスクは、契約期間中に毎月決まった金額を支払い、クルマを保有するというものです。
基本的に月額料金には、車両本体、車検やメンテナンス、諸税、保険などの費用も含まれています。
自動車サブスクは、2016年ごろに中古車の買取・販売企業がサービスを開始し、その後、自動車メーカーも相次いで参入しました。
国産自動車メーカーで先陣を切ったのは、トヨタです。2019年2月に「KINTO」をスタートさせました。名前は、乗りたいときにすぐ乗れて、思いのままに移動できる「西遊記』の筋斗雲が由来といい、トヨタ、レクサスの新車に乗れます。
契約期間は3、5、7年の3種類(レクサスは3年のみ)ですが、トヨタ車は手数料を払えば期間中に別のモデルに乗り換えることも可能です。
例えば、コンパクトワゴン「ルーミー」を7年契約すると月額3万3000円(税込。ボーナス併用払いなし)。
月額料金には自賠責保険のほか任意保険も含まれるため、保険料が高くなりがちな若年層にはメリットが高いかもしれません。
日産の「ClickMobi(クリックモビ)」は、2020年3月にスタートしました。申し込みから納車までネットで完結するのが特徴。
任意保険が含まれない分、料金はトヨタよりひと回り安く設定されています。契約期間は3、5、7年の3種類。
軽自動車「デイズ」を7年契約すると月額2万7500円(税込。ボーナス併用払いなし)での利用が可能です。
同じ2020年3月には、ホンダの「ホンダマンスリーオーナー」も始まりました。
このサービスの最大の特徴は、契約期間が短いことです。最短1か月から最長11か月まで1か月単位で設定が可能。
中古車では月額料金に任意保険も含まれます。
軽自動車「N-BOX」は期間の長さにかかわらず月額2万9800円(税込)からです。
スバルの「スバスク」は、2021年3月に始まったばかりのサービスです。対象は「インプレッサ スポーツ」と「XV」の2種類の中古車です。
期間は12か月と24か月の2種類ですが、延長が可能です。「インプレッサ スポーツ」で24か月契約の場合、月3万9820円(税込)。
料金には任意保険も含まれます。ただしサービスの提供地域は少なく、2021年4月現在、神奈川県と新潟県のみです。
■国産車だけじゃない! 輸入車サブスクでボルボ、メルセデス・ベンツにも乗れる!
輸入車メーカーでもさまざまなサブスクリプションサービスを展開しています。
ボルボはトヨタより早い2017年に個人向けリースプラン「ブリッジスマボ」を導入。
2019年にリニューアルし、2020年1月には「スマボ」の対応車種が「V40」を除く全車種に拡大しました。
3年契約で2年後から乗り換えられる「スマボ2/3」と、5年契約で3年後から乗り換えられる「スマボ3/5」の2種類を用意。「スマボ3/5」は月6万円台から利用できます。
また、登録後18か月、走行距離1万2000km以内の認定中古車が対象の「セレクトスマボ」も設定。頭金(登録諸費用)が必要ですが、月額は2万円台からと低く抑えられています。
メルセデス・ベンツもリースプランを用意。期間は3、4、5年で、クルマは新車全モデルに加え認定中古車からも選べます。
フラッグシップモデル「Sクラス」の場合、頭金・ボーナス払いなしだと月15万7080円(税込)です。
これらのサブスクサービスは、税金や保険の手続きや出費額の上下を意識することなく、毎月一定の金額で利用できるのがメリットです。
しかし、クルマを利用するサービスとしては、サブスクリプションのほかにも、カーリースやレンタカー(カーシェア)があります。何がどう違うのでしょうか。
違いとしては、契約期間や借り方が挙げられます。サブスクやリースは年単位が多く、またクルマは期間中自由なタイミングに使えます。
一方でレンタカーは借りる期間が日や時間単位、カーシェアとなると分単位もあり、また、クルマは別の人の予約が入っていると借りられません。
料金体系も大きく異なります。サブスクやリースは月額のブラン料金を支払います。駐車場代(駐車場所)や燃料代は、基本的に契約者の負担。カーリースは料金に任意保険を含んでいないことがほとんどです。
一方のレンタカーやカーシェアは料金を借りるたびに支払います。使う時間が比較的短いカーシェアは、燃料代が含まれているプランもあります。
契約期間中の解約や乗り換えは、サブスクは対応しているサービスがありますが、カーリースは少ない傾向です。
このように一概に「クルマを使う」「クルマを借りる」といっても、そのサービス形態はさまざまです。
サブスクでも、クルマが禁煙だったり、途中解約金が請求されたり、走行距離の上限などが定められていたりと、ルールが少しずつ異なります。
そのため、自分の生活やクルマの使い方にあわせて、事前によく比較検討することをおすすめします。