トヨタは、フィリピンにて新型「ハイエース」を海外向けに展開すると2019年2月18日に発表しました。日本でも高い人気を誇るモデルということもあり、その後の動向に注目が集まっていましたが、現状ではどうなっているのでしょうか。
■新型ハイエース発表から2年 まだ日本では発売はされないの?
2019年2月18日、トヨタは「ハイエースに海外向け新シリーズを投入、フィリピンで世界初披露」と題して、新型「ハイエース」を発表しました。
日本でも高い人気を誇るモデルということもあり、海外向けといいつつも、大きな話題となりました。その後、2021年4月現在も日本でハイエースがフルモデルチェンジするという話は聞こえてきません。
ハイエースは、1967年に初代を発売して以降、世界約150か国で累計624万台以上販売されているトヨタのグローバルモデルです。
日本では、現行ハイエースが2004年8月23日に発売され、2021年4月時点で17年目を迎えるロングセラーモデルです。
一方、海外では主にアジア、中東、アフリカ、オセアニア、メキシコ、中南米地域で販売され、長年にわたって高い耐久性と信頼性を強みにバンやミニバス、プライベートの移動手段として活用されています。
前述の新型ハイエースは、刷新された専用プラットフォームをベースに、快適性を大幅に向上させるとともに、優れた安全性を実現。
海外向けに導入される背景について、新型ハイエース発表時にトヨタは次のように説明しています。
「昨今、自動車市場が拡大し続ける新興国・地域においては、物流に加えて、観光用ミニバス、乗合バス等の乗客輸送の需要が拡大しています。
ハイエースの新シリーズは、このような多様なニーズに柔軟にお応えするために開発されました。
新興国を中心とした国・地域に順次投入していきます。なお、市場環境が異なる日本においては、従来モデルのハイエースを継続していきます」
この時点で、日本においては現行ハイエースを継続販売することを明かしていました。では、約2年経った現在において状況は変わっているのでしょうか。
首都圏のトヨタ系販売会社の担当者は次のように話しています。
「ハイエースは、現在も安定した販売台数を誇っています。とくにこれまでは運搬や送迎といった商用車本来の用途で購入されるお客さまが多かったです。
しかし、近年ではアウドドア需要や車中泊への関心が高まり、ハイエースをベースに自分好みの仕様に仕立てる人も増えております。
フルモデルチェンジの情報は現在も入ってきていませんが、最近の状況を考えるとまだまだ商品力があるためこのまま販売されるのではないかと思います。
また、海外向けに出ている新型ハイエースは現行ハイエースよりもボディサイズが大きいと聞きます。そのため、日本の道路環境に合うかは難しいと思われ、商用車として考えればこのままが良いのかもしれません」
※ ※ ※
また、関西圏のトヨタ販売店のスタッフは次のように話します。
「ハイエースは長く安定した人気を誇っており、1度購入されると長く乗られるお客さまが多いです。
また、買い替えの際も使い勝手が分かっている同じハイエース(グレード)を購入される人もおり、商用車という意味ではそのような『変わらない信頼性』という部分も重要なのかと思います。
なかには、『このままフルモデルチェンジしないで欲しい』という声もあり、乗用車と同じように新しくなれば良いとは限らないのかもしません」
■送迎需要に応えるために発売された「グランエース」とは?
海外向けの新型ハイエースが登場してから約8か月後の2019年10月8日にトヨタは日本国内向けに新型「グランエース」を発表し、同年11月25日に発売しました。
グランエースは、海外向けの新型ハイエースをベースにした乗用車となり、上質かつ快適な移動空間としてワイドなサイズを活かした圧倒的な存在感を有するフルサイズワゴンです。
新型ハイエースと同じくセミボンネットのパッケージを採用し、3列シート6人乗りと4列シート8人乗りの2タイプを設定。上質な乗り心地や優れた操縦安定性を備えた高い基本性能とゆとりの室内空間が特徴となっています。
グランエースは、ハイエースと同じ商用車としての使用ではなく、送迎用途に重きをおいたモデルです。導入背景について、トヨタは次のように説明しています。
「グランエースは、送迎ニーズを想定したモデルです。
ベースは、海外向けの新型ハイエースで、全長5m超えとかなり大柄なサイズです。
しかし、タイヤがかなり切れるので一回り小さい『アルファード』より小回りが利くなどの特徴があります。
また、日本で新型ハイエース自体を導入するわけではないので、既存のハイエース(200系)はそのまま商用バンとして販売していきます」
※ ※ ※
日本で販売されているグランエースは、あくまで乗用車として送迎ニーズに応えることを目的としたことが分かります。
その一方で現行ハイエースは継続されることがアナウンスされるなど、前出の販売店スタッフが話すように、ハイエースは簡単にフルモデルチェンジできるクルマではないのかもしれません。