2021年4月19日に中国で開催される「上海モーターショー2021」にて、トヨタ一汽が「ハイランダー」の姉妹車として「クラウンクルーガー」を発表すると明かしたことが大きな話題となりました。今回、上海モーターショーに先駆けて「クラウンヴェルファイア」なるミニバンが中国で受注が開始されました。
■SUVの次はミニバン!?「クラウン・ヴェルファイア」中国で発表
中国市場における「クラウン」の後継車としてSUVとなる「クラウン クルーガー」(中国名:皇冠 陸放、huang guan lu fang)が上海モーターショー2021で発表されることが話題となっています。
今回、クラウンシリーズ第2弾ともいえる「クラウンヴェルファイア」の受注が開始されたといいます。
日本でも販売されるヴェルファイアとは何がことなるのでしょうか。
クラウン クルーガーは、基本的に内外装ともに北米などで販売されている「ハイランダー」のXSEグレードと共通しており、違いはクラウンのエンブレムなどにとどまります。
そして中国限定のクラウンシリーズ第2弾として、今度は日本でも販売されているミニバンの「ヴェルファイア」をマイナーチェンジし、外装変更や名前を「クラウン ヴェルファイア(中国名:皇冠 威尓法、huang guan wei er fa)」に改称して販売されることがわかりました。
すでに深センの一汽トヨタディーラーでは予約受付が開始されるなど盛り上がっている状況です。
中国市場におけるヴェルファイア(中国名:威尓法、wei er fa)は、2019年4月の上海モーターショーにて投入が発表されました。
日本のHYBRID Executive Lounge相当のグレードが用意され駆動方式はE-Four方式の四輪駆動のみです。
一方、「アルファード(中国名:埃尓法、ai er fa)」は2010年より中国市場で販売開始となり、近年はとくに異常といえるほどの高人気を博しています。
同時期に投入が発表されたレクサス「LM」と共に、高まる高級ミニバン市場への需要に応えてヴェルファイアが投入される形となりました。
輸入販売をおこなうのはいずれもトヨタが設立した中国での合弁会社で、アルファードが広汽トヨタ(広州汽車とトヨタの合弁)、ヴェルファイアが一汽トヨタ(第一汽車とトヨタの合弁)のディーラーで取り扱っています。
中国市場でSUVとミニバンに新たに冠された「クラウン」の車名。
ここで気になるのは中国市場でのクラウン(中国名:皇冠、huang guan)の立ち位置です。
中国では1964年4月に最初のクラウンが輸入され、80年代から90年代にかけて人気を博しました。
香港でも一般用のみならず、「クラウン」は香港の象徴的な存在である香港タクシー(香港的士)として長きに渡り採用され続けた代表的な日本車として認識されています。
販売の低下を受けて一旦は中国本土へ輸出がおこなわれなくなりましたが、2003年からは一汽トヨタが中国国内での生産を始め、再び中国本土に王冠のエンブレムが舞い戻りました。
その後、2020年4月までのおよそ17年間にわたり、生産・販売を継続。中国市場におけるクラウンの生産販売終了は、高級セダンの需要がアルファードやLMなどの高級ミニバンへと取って代わられたことも一因です。
今回、約1年間空白となっていたクラウンのポジションを埋め合わせるために、もっとも人気なボディタイプであるSUV(クラウン クルーガー)とミニバン(クラウン ヴェルファイア)にクラウンという名前を冠し、後継車として販売することとなったのでしょう。
とくに、同時に発表されたクラウン クルーガーは、対をなす合弁企業である広汽トヨタが生産・販売するハイランダー(中国名:漢蘭達、han lan da)のポジションが一汽トヨタには無かったことも影響しています。
トヨタの思惑としては、アルファードやLMと共食い状態になっているヴェルファイアを、惜しくも絶えてしまった伝統のある「クラウン」の名前を冠して再登場させることで、さらなるイメージアップ、販売アップを狙っていきたいということでしょう。
■アルヴェルもLMも新車価格を超える驚愕の中古車価格
ところでアルファードとヴェルファイアはいずれも日本からの輸入車なので関税(15%)ほか、高い税金や手数料などが課せられており、中国での新車価格は81万9000人民元(邦貨換算:1364万2000円)からとなっています。
日本でのHYBRID Executive Loungeが759万9000円から販売されていることからも、中国国内での販売価格の高さがわかります。
なお、実際の販売価格はさらに高額です。中国ではディーラーが価格を決めるシステムなので人気のアルヴェルは新車価格+500万円から1000万円前後の新古車、低走行車も珍しくありません。
アルファードではナンバープレートが交付されていない新古車で軒並み150万人民元(2425万円)前後、6万キロ近く走ったヴェルファイアも新車より高い90万人民元(1454万円)という高価格で販売されています。
中国市場で2010年から販売されてきた歴史があるアルファードと、最上級の豪華さを備えたLMに板挟みにされたヴェルファイアは、中国市場での売れ行きは芳しくなかったようです。
アルファードとのキャラクター性の違いも日本でははっきりと分けられていますが、中国市場では明確な差別化が図られていなかったのも一因でしょう。
今回は車名の改称だけでなく、外装デザインのマイナーチェンジも含んでいます。
2019年に投入されて以来、中国市場のヴェルファイアは日本におけるV/VLやXグレードが持つ、マイルド目なフロントマスクを全グレード共通で設定していました。
ですが、それでは既存のアルファードが持つフロントマスクとそれほど違いがなく、先述のようにキャラクター性の差別化が図れなかったのでしょう。
そこで、今回のマイナーチェンジでは名称の変更とともに、日本でのZグレードに相当するスポーティなフロントマスクへ変更されることとなりました。
バンパー左右に大型のインテーク風ガーニッシュを取り込んだこのデザインであれば、アルファードに比べてより特徴的な見た目で勝負できそうです。
ちなみに中国におけるヴェルファイアには「皇冠座駕」というキャッチコピーが付けられていました。「皇冠」は「トヨタ クラウン」を表す固有名詞のため、直訳すれば「クラウン級ショーファーカー」を意味します。
このキャッチコピーは2019年4月の発表時点で既に付けられていたため、そのときから既に「ヴェルファイアはトヨタ クラウンのような快適な乗り心地のクルマ」としてアピールされていたのです。2年後に「クラウンヴェルファイア」へ車名変更することが決まっていたかは定かではありません。
2年後にクラウン・ヴェルファイアに車名変更することが決まっていたかは定かではありませんが……。
なお、「アルファード」という車名は中国においては絶対的で、「トヨタ」「レクサス」などのブランド名と同様の認知度を誇ります。
「アルファード」に比べるとやはり「ヴェルファイア」のブランド力はまだまだなので、今回、「クラウン」の名前を冠することでより高級なイメージを植え付ける狙いもあると考えられます。