1980年代に国産メーカーは海外にも生産拠点を置き、現地のニーズにマッチしたクルマの生産を開始。そして、1990年代になると海外生産のモデルを日本でも販売するようになりました。そこで、海外生産のスタイリッシュなモデルを3車種ピックアップして紹介します。
■海外で生産された個性的なモデルを振り返る
国産メーカーが本格的に海外進出を果たしたのは1960年代の終わりごろで、日本車の品質や性能の高さが認められはじめました。
そして、1970年代から1980年代初頭にかけては大量の日本車が輸出されるようになり、とくにアメリカと日本の貿易摩擦という問題がクローズアップされ、家電製品と並んで日本車は矢面に立たされたほどです。
この問題を打破するために先陣を切ったのはホンダで、1982年に他メーカーに先駆けてアメリカに工場を設立し、現地生産を開始。
その後、他メーカーも次々と海外に生産拠点をつくり、いまでは世界中で日本車が生産されています。
海外生産のモデルのなかには現地のニーズに対応する海外専用車も数多く存在し、1990年代には日本にも輸入されるようになりました。
いわゆる逆輸入のひとつにあたりますが、国産車と趣が異なるデザインのモデルもあり、一定の人気を獲得。
そこで、海外生産されたスタイリッシュで個性的なモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「アコードワゴン」
1976年に発売されたホンダ初代「アコード」は「シビック」の上位機種としてデビュー。当初は3ドアハッチバッククーペのみでしたが後に4ドアセダンが加わり、セダンが主力となります。
代を重ねて1989年に登場した4代目からはセダンを基本とし、1991年にはアメリカで生産されたステーションワゴンの「アコードワゴン」をラインナップ。
好景気という背景やステーションワゴンブーム、アメリカ製というバリューは大いに魅力的だった時代ということが相まって、好調なセールスを記録しました。
そうした状況から1994年には2代目アコードワゴンが、先代と同様にアメリカで開発と生産がおこなわれた輸入車として日本で販売されました。
スタイルは全車3ナンバー化されたワイドなボディで、セダンのデザインを生かした流麗で存在感のある力強いウエッジシェイプにより、スタイリッシュなフォルムを実現。
また、ステーションワゴンとして荷室の使い勝手も考慮され、段差のないフラットなデッキ、バンパーのすぐ上から開くテールゲートなどが採用されています。
当初、搭載されたエンジンは2.2リッター直列4気筒SOHCのみでしたが、1996年のマイナーチェンジで190馬力を誇る2.2リッター直列4気筒DOHCエンジンが追加され、走りの性能も向上しました。
アコードワゴンは人気車種としてその後も販売されましたが、次第にステーションワゴン人気が低下していったことから、2013年にアコードワゴン(最終モデルは「アコードツアラー」)の生産を終了。海外でも消滅してしまいました。
●トヨタ「キャバリエ」
1996年に発売されたトヨタ「キャバリエ」は、まさに日米の貿易不均衡是正の象徴のようなクルマです。
トヨタはGMと提携してシボレー「キャバリエ」を日本で発売することになり、製造はGMが担当し、トヨタにOEM供給してトヨタブランドで販売するという「日米産業協力プロジェクト」の一環で誕生。
日本仕様では右ハンドル化やウインカーレバーの移設、灯火類などが細かく改良され、各エンブレムもシボレーからトヨタのものに変更されています。
ボディは2ドアクーペと4ドアセダンをラインナップし、サイズは全長4595mm×全幅1735mm×全高1395mm(セダン)と、純粋なアメリカ車ながら日本の道路事情にマッチしていました。
外観は当時のアメリカでのデザイントレンドを色濃く反映しており、トヨタ車の雰囲気は感じられませんでしたが、曲面を組み合わせた流麗なフォルムはスタイリッシュです。
搭載されたエンジンは150馬力を発揮する2.4リッター直列4気筒で、トランスミッションは4速ATのみ。
キャバリエはCMキャラクターに所ジョージを起用して販売促進に力が入れられ、価格も181万円(消費税含まず)からとかなり安価に設定されましたが、ヒットすることなく2000年には輸入が打ち切られて販売を終了。
ちなみに、同様な取り組みで誕生したモデルとしてトヨタ「ヴォルツ」がありますが、こちらも短命でした。
■今でも通用しそうなスタイルの豪州産ハッチバックとは?
●日産「ブルーバード オーズィー」
日産は1967年にダットサン「510」(日本名:ブルーバード)をアメリカで販売し、大成功を収めて本格的な海外進出への足がかりとなりました。
その後、1976年にはオーストラリアでも現地法人を立ち上げ販売を開始し、1980年代には工場をつくり、日本国内と同じモデルだけでなく、オーストラリア独自の車種も生産しました。
そのなかの1台が8代目「ブルーバード」の派生車「ブルーバード オーズィー」で、1991年に限定モデルとして日本でも販売。
ボディは一見するとステーションワゴンのようですが、ブルーバード(現地名:ピンターラ)の5ドアハッチバックです。
外観は8代目ブルーバードに準じたフロントフェイスに、ロングルーフに傾斜角を寝かしたリアハッチという現在のクーペワゴンを先取りしたようなスタイリッシュなフォルムを実現。
エンジンは日本仕様専用に140馬力を発揮する2リッター直列4気筒DOHC「SR20DE型」を搭載し、前後バンパーのアンダースポイラー、サイドステップ、リアスポイラーが装着されるなど、走りも見た目もスポーティに仕立てられていました。
スタイリッシュで使い勝手も良いモデルでしたが、当時の日本ではあまり人気とはならず、ブルーバード自体のフルモデルチェンジもあって、当初の予定どおり3か月ほどで販売を終了しました。
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もはや海外生産のクルマを日本で売ることは当たり前の時代になりました。現行モデルだとトヨタ「ハイラックス」、日産「マーチ」、三菱「ミラージュ」、スズキ「エスクード」など、ほかにもまだまだあります。
かつては海外生産というだけで特別な存在でしたが、今はメーカーもとくにアピールすることなく、自分のクルマが海外製だと知らずに乗っている人も多いのではないでしょうか。
それも各メーカーが海外生産でも高い品質を担保するためにおこなった、努力の成果といえます。