新型車が登場すると、一般的に2年から3年ほどでマイナーチェンジがおこなわれ、商品としての魅力を補って売上増につなげようとします。マイナーチェンジでは車種によってさまざまな改良が図られますが、なかには大胆にデザイン変更をおこなうケースも存在。そこで、マイナーチェンジでカッコよくなったクルマを、5車種ピックアップして紹介します。
■マイナーチェンジでデザインがテコ入れされたクルマを振り返る
毎年、各メーカーから数多くの新型車が登場しますが、発売して2年から3年ほどで低下した商品力を補う意味で、テコ入れであるマイナーチェンジをおこなうのが一般的です。
マイナーチェンジによって改良するポイントは車種によって異なりますが、装備のアップデートやエンジン性能や燃費性能の向上。ほかにもグレードの追加や廃止といったラインナップの変更もおこなわれます。
また、重要なところでは内外装のデザイン変更で、小変更から大規模な変更まであり、なかにはフロントフェイスを一新するケースも珍しくありません。
そこで、デザインが不評だったことからマイナーチェンジでフロントフェイスを刷新したモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「インテグラ」
ホンダ「インテグラ」は、「シビック」と「アコード」の間を埋めるモデルとして1980年に誕生した「クイント」がルーツのモデルです。
その後、車名が「クイントインテグラ」に変更され1989年に発売された2代目からはインテグラとなり、1.6リッターで160馬力を発揮するVTECエンジンを初めて搭載するなど、スポーティな面を強調。
同様なコンセプトで1993年に登場した3代目では、フロントグリルレスで丸形4灯プロジェクターヘッドライトと、当時としては斬新なフロントフェイスが採用されました。
しかし、そのフロントフェイスは日本では不評で、1995年のマイナーチェンジでは一部グレード除き、横長でシャープなデザインの異型ヘッドライトに変更され、フロントフェイスを一新。
ちょうど1980年代の終わりから1990年代のはじめはプロジェクターヘッドライトがトレンドで、ホンダもその流行をキャッチアップしたかたちで新しさを表現しましたが、ユーザーには受け入れられなかったということでしょう。
●日産「シルビア」
かつて日産のスペシャリティカーラインナップで中核を担っていた「シルビア」ですが、1988年に発売された5代目(S13型)が大ヒットしたことで大きな転換期を迎えたといえます。
この5代目のコンセプトを踏襲するかたちで、1993年に6代目(S14型)が登場し、ボディは5代目と変わらず2ドアクーペとされました。
1989年に税制改正によって3ナンバー車の自動車税が大幅に減額され、さらに排気量で税額が決まる制度になったことから、1990年代はボディの大型化が流行。
そのため、6代目シルビアもボディサイズを全長4520mm×全幅1730mm×全高1295mmまで拡大して全車3ナンバーとなりました。
しかし、すでにクーペ人気に陰りが見え始めていたのに加え、5代目に対して大型化して丸みを帯びた6代目のボディはスポーツカーながら重たそうな印象が拭えず、販売台数は5代目から大きく低下してしまいました。
そこで、1996年のマイナーチェンジでフロントフェイスをシャープな印象のデザインに一新。
CMでもツリ目をアピールするなどヘッドライトは直線基調となり、同時にフロントグリル、前後バンパー、フロントフェンダーのデザインが修正されました。
後期型の6代目シルビアは精悍なイメージの2ドアクーペへと変貌して好評でしたが、大きくヒットするまでには至らず、1999年に7代目へとモデルチェンジしました。
●スバル「インプレッサ」
1992年に誕生したスバル「インプレッサ」は、ラリーマシンとして初代「レガシィ」の後継車という重責を担い、トップグレードの「WRX」によって高性能なセダン/ステーションワゴンというイメージが確立されました。
そして、2000年に登場した2代目は初代のコンセプトを引き継いで開発されつつも、フロントフェイスを刷新することで大きくイメージチェンジが図られました。
2代目の初期型ではヘッドライトとウインカー、ポジションライトを内包した斬新な丸型コンビネーションライトを採用。
しかし、デザインのインパクトはあったもののユーザーの評価は賛否が分かれ、2002年のマイナーチェンジでは一部のモデルで流行していた「涙目」型のヘッドライトに変わってフロントフェイスを一新しました。
ところが、このフロントフェイスもシャープさに欠けていると評されたことから、さらに2005年のマイナーチェンジでは、「スプレッドウィングスグリル」と呼ばれるスバル車共通のイメージを反映したフロントグリルのデザインが採用されました。
それにあわせて「鷹目」と呼ばれるツリ目のヘッドライトに変更して、精悍な印象へと変貌を遂げます。
マイナーチェンジで2度もフロントフェイスが大きく変わるというのは非常に珍しいケースですが、当然ながらボンネット、ヘッドライト、フロントバンパー、フロントフェンダーが作り変えられ、スバルにとってコスト的には痛手だったのではないでしょうか。
■マイナーチェンジで大きく変わった現行モデルの2台とは?
●レクサス「CT200h」
現在、レクサスのエントリーモデルとして販売されている5ドアハッチバックの「CT200h」は2011年に発売され、すでに発売から10年を経たロングセラー車です。
CT200hはハイブリッドのみのプレミアムコンパクトというコンセプトで、パワートレインや主要なコンポーネントは3代目「プリウス」などと共有していますが、内装や走りの質感はレクサスならではの上質さが優先されました。
そして、発売から3年後の2014年のマイナーチェンジでは、フロントフェイスを一新。
当初はフロントグリルが上下2段に別れたデザインでしたが、現在のレクサス車のデザインコンセプトである「スピンドルグリル」が適用され、プレミアム感を増しつつシャープな印象となりました。
さらに2017年にはスピンドルグリルの一部意匠変更がおこなわれ、より質感を高めるアップデートを実施するとともに、先進安全技術も搭載されて現在に至ります。
前述のとおりCT200hは10年のロングセラーであり、今後の去就が注目されています。
●三菱「ミラージュ」
1978年に三菱初のFF車として初代「ミラージュ」が誕生。コンパクトながら張りのあるスタイリッシュなの2BOXボディでたちまち人気車となります。
そして、1982年のマイナーチェンジ時に、クラス初のターボエンジンで1.4リッターから105馬力(グロス)のパワーを発揮する「ミラージュIIターボ」を発売すると、同クラスの馬力競争の発端となった記念すべきモデルでした。
その後もミラージュはスポーティなイメージを重視したハッチバック/コンパクトセダンとして代を重ねますが、2000年に5代目をもって生産を終了して系譜が途絶えてしまいます。
しかし、2012年にタイで生産されるグローバルコンパクトカーとしてミラージュが復活。5代目までのスポーティ路線ではなくベーシックカーへと変貌し、低燃費かつ日本での価格も99万8000円(消費税5%込)という低価格が大いに話題となりました。
6代目ミラージュは2015年にバンパーとグリルによる小規模なフロントフェイスの変更がありましたが、大きな改良がないまま販売が継続され、存続が危惧されていました。
ところが、2020年に先進安全技術の搭載とともにフロントフェイスを一新。三菱のデザインコンセプトである「ダイナミックシールド」が導入されて精悍な印象へと変わりました。
この変更は2019年にタイ仕様で先行導入されたものでしたが、国内でのミラージュの延命が図られたことになります。
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マイナーチェンジでフロントフェイスを含め、デザインが一新されたクルマはほかにも数多く存在します。近年で話題となったのは現行モデルの4代目プリウスで、前後デザインが変わって販売台数の回復に成功しました。
クルマのデザインは販売を左右するもっとも重要な要素のひとつであることから、各メーカーとも優秀なデザイナーを雇い、多くのプロセスと時間をかけて最終決定されています。
しかし、かならずしもユーザーから高評価が得られるとは限らず、マイナーチェンジでデザインの変更がおこなわれる事態となるなど、デザインの難しさが垣間見えるのではないでしょうか。