昨今、トヨタ「ハイエース」を用いたさまざまなカスタマイズ手法が存在します。アウトドアや車中泊、趣味などに特化した仕様が多いなかで、カー用品店のオートバックスが手掛けたバンライフに寄り添うモデルとは、どのようなものなのでしょうか。
■リアルウッドを室内全面に使ったハイエースとは
近年、世界中で新たなライフスタイルのひとつに成りつつある、「バンライフ」。
日本でも、車中泊やキャンピングカーの関心が高まるなかでバンライフという言葉を耳にする機会が増えています。
そんななかで、商用バンの代名詞といえるほか、キャンピングカーのベースとしても注目されるトヨタ「ハイエース」に新たなカスタムモデルが登場しました。
欧米から端を発したバンライフは、某有名ブランドのデザイナーだったフォスター・ハンティントン氏が愛車のフォルクスワーゲン「ヴァナゴン」を改造し、クルマのなかで生活をしていた様子をSNSで発信したことで周知されました。
日本でも2、3年前から、そのカスタムスタイルが巷で流行し始め、オーバーランド的な車中泊旅と融合。
昨今ではキャンピングカービルダーがバンライフ調のモデルをリリースするなど、ひとつのカテゴリーとして定着しています。
バンライフ・カスタムの特徴は、内装にウッド材を使うことで、ハンティントン氏がヴァナゴンの内装に自分で木材などを張ったことに影響を受けているようです。
そもそも日本は木造建築の文化で、木の風合いをこよなく愛する国。そういう点から考えると、カスタムとしてのバンライフは日本人と相性がいいといえるでしょう。
前述のように、市場ではさまざまなバンライフ・キャンパーが売られていますが、そのなかでもセンスの良さが一際光るモデルがありました。
それがゴードンミラー「GMLVAN」シリーズです。ゴードンミラーは、オートバックスが展開するブランドのひとつで、ガレージライフに関するさまざまなプロダクトを販売しています。
オートバックスといえばカー用品店の印象が強いですが、ゴードンミラーはそれに留まらず、ファッションやファニチャー、アウトドアギアなども扱っているのです。
ガレージという空間に留まらず、家でも外でもクルマを楽しもうというコンセプトのようです。
そんな同ブランドが、なぜキャンピングカーを作ったのでしょうか。ゴードンミラーのディレクターである猿渡大輔氏は次のように話しています。
「ゴードンミラーの世界観をガレージからさらに拡張し、外にリビングを持ち出してみたらどんなものができるだろうか考え、こうした企画に結び付きました」
ちなみに、今回のクルマは、ファッションブランド「ジャーナル・スタンダード」の家具部門である「ジャーナル・スタンダード・ファニチャー」とのコラボレーションによるもので、担当者同士で話していたときに、立ち上がった企画だといいます。
■オシャレ過ぎる! ウッドなハイエースとは
GMLVANシリーズには、ハイエースベースのモデルと、日産「NV200バネット」ベースのモデルがあります。
どちらも魅力的ですが、今回とくに注目したのがハイエースベースの「V-01」。エクステリアは、どこかヴァナゴンを思わせる愛らしさを持っています。
「とくにヴァナゴンを意識したわけではなく、リラックスできる車内を考えたときに、自然と柔らかな雰囲気でクラシカルなデザインのエクステリアに辿り着きました」(猿渡氏)
フロントマスクやサイドのアンダーガードなど、ハイセンスなカスタムパーツが奢られています。
もちろん、インテリアはバンライフ調。ジャーナル・スタンダード・ファニチャーの家具に使われているオーク材やトリムをふんだんに使い、柔らかく温かみのあるキャビンに仕上げました。
家具のプロフェッショナルが監修しているだけあって、付け焼き刃感がまるでありません。
ただし、ギャレーなどのキャンピング装備は一切なく、バタフライ式シートとウッドのパネルによって完全フラットになるだけです。
特徴的なのは、ロールスクリーンを装備しており、プロジェクターがあれば映画などを投影できるようになっています。
ここまでシンプルな装備なのも、作り手の思いがあると猿渡氏はいいます。
「極力シンプルな装備にすることで、ミニマルな美を演出するという意図もありますが、ユーザーが自分なりのライフスタイルを持ち込める余白を残すことが、このクルマにとっては大切だと考えました」
なおV-01には、オプションとして、ライノラック製のルーフラックやサイドオーニング、そしてリアラダーが用意されており、拡張性もあります。
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参考販売価格は497万2000円からとなっており、納期は2021年5月時点で約半年。
内外の装備、そしてセンスの良さを考えれば、決して高いプライスではありません。
新しいリラックス空間が欲しいと考えているなら、選択肢のひとつとしてアリかもしれません。