昨今のキャンピングカー市場は年々拡大しています。主流となるのはトヨタ「ハイエース」などをベースとしたバンコンですが、密かに巨大なキャンピングトレーラーも注目されているといいます。日本では扱いにくいキャンピングトレーラーの需要とはどのようなものなのでしょうか。
■日本ではけん引不可? 巨大キャンピングトレーラーとは?
日本のキャンピングカー市場はここ10年、右肩上がりに成長しています。
とくに新型コロナ禍以降は人との接触を避けるという目的から、キャンピングカーの需要が急速に拡大しているといいます。そんななか、密かに注目されているキャンピングトレーラーとは、どのようなものなのでしょうか。
移動する旅が定着しているアメリカでは、キャンピングカーはRVというカテゴリーで呼ばれています。
RVには自走式、けん引式があり、自走式は日本でいうところのキャンピングカー、けん引式はキャピングトレーラーです。
アメリカのRV需要は年間約50万台といわれていますが、自走式はその内の3割に過ぎず、ほとんどがキャピングトレーラーだといい、これにはアメリカならでは自動車事情があるといいます。
アメリカの自動車市場を支えているのはピックアップトラックで、農業大国である同国において、アグリカルチャーカーとしてのピックアップトラックは欠かせない道具です。
さらに、税制や保険料という点で優遇されているピックアップトラックは、若年層や低所得層にも人気があります。
理由を聞けば、ピックアップトラックの所有台数が多くなるのは当然のことといえるでしょう。
ピックアップトラックの台数が多い故に、キャンピングカーを購入するときに多くの人が選ぶのが「5TH WHEEL(フィフスホイール)」と呼ばれるカテゴリーのキャピングトレーラーです。
5TH WHEELとは、キャピングトレーラーの前部が突き出ており、トラックに付けたカプラーにそこをかけて引っ張るタイプ。
日本でよく見るようなキャンピングトレーラーは、ヘッド車にトレーラーヒッチを付けて、地面に近い位置で牽きます。
しかし、5TH WHEELはピックアップトラックで引くのが前提な形状になっています。
自走式に比べると価格がはるかに安く、しかもアメリカではけん引免許がないことから大型の5TH WHEELでの旅がごくごく一般的になっているようです。
最近、日本のキャンピングカーショーで多くの人の注目の的になっているのが、ウィネベーゴ「ボヤージュ 5TH WHEEL V3436FL(以下ボヤージュ )」。
その巨大さは、まるで家です。室内に入っても、まさにアメリカの家そのもの。
アメリカではこのような5TH WHEELをピックアップトラックでひいて旅するわけですから、改めてその国の大きさに驚かされます。
残念ながら、日本ではボヤージュのような大きさのトレーラーをけん引して走ることはできません。
日本では、3.5t以上のトレーラー(トレーラーハウス)は制動装置の安全性の点で車両として登録することができません。
移動させるには、特殊車両申請が必要になります。では、日本ではどのように使われているのでしょうか。
ボヤージュの輸入元となるニートRVの営業スタッフは「日本では、住宅や別荘として購入されている人が多いです」と話しています。
トレーラーハウスは、日本でも徐々に普及しており、住宅街や別荘地などで見かけるようになってきました。
■トレーラーハウスは「固定資産税がゼロ」は本当?
日本では「固定資産税などがかからない」、「一般住宅よりも価格が安い」という謳い文句で売られているようですが、必ずしも設置の敷居が低いわけではありません。
建築基準法で建築物と見なされないようにするには、「すぐに移動できる状態にしておく」、「ライフラインが工具なしで脱着できる」、「適法に公道を移動できる自動車であること(車検を受けている)」といった要件が必要だといいます。
しかし、ボヤージュは5t近くあるトレーラーですので、車検を受けることができません。では、どのようにして住宅として使うのでしょうか。
日本トレーラーハウス協会の担当者は次のように説明しています。
「別荘地などに置き、一般の住宅に用途を限るということです。
企業の事務所や店舗などに使うとなれば、建築行政上でさまざまな規制があるため、設置許可がかなり難しくなります。
ですが、家として使うのであれば、行政も細かくいうことはないと思います」
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しかし、一般住宅として用途であっても、地域によっては設置を認めない所も存在します。
関東でいえば、神奈川県の一部では設置が非常に難しいといい、購入を考える場合は、設置場所も十分に検討する必要があるということです。
ちなみにボヤージュのボディサイズは、全長11950mm×全幅2460mm×全高3800mm、就寝定員6名となっています。
室内を見てみると、ラウンジにダイニング、ベッドルームとかなりの広さです。
ギャレーにトイレ、シャワールーム、さらには液晶式のフェイク暖炉まで付いています。
内装もアメリカンテイストで、日本建築とは違う雰囲気。単身者や二人暮らしであれば、十分快適に暮らせるのではないでしょうか。
車両本体価格(消費税込み)は1232万円。設置移動費やライフライン工事費、土地によっては基礎工事費が発生するため、それらに100万円単位の予算を見なければなりません。それでも一軒家を新築するより遙かに安上がりです。
ちなみに、前出のニートRVに聞いたところ、同モデルはこれまで20台ほど売れたといいます。
けん引して旅をすることはできませんが、旅気分を味わえる隠れ家として使うのは楽しいかもしれません。