梅雨の時期は、雨に濡れずに移動できるクルマを利用する機会が増えます。雨が降ると事故が増えるというデータもありますが、雨の日の運転はどのようなことに気を付けたら良いのでしょうか。
■雨の日の事故は晴天時の4倍も増える!?
新型コロナ感染対策のひとつとして、3密を避けて移動できることからクルマの利用が再注目されています。さらに梅雨に入って雨の日が増えると、ますますクルマを利用する機会が多くなりそうです。
雨に濡れずに目的地まで移動できることはクルマのメリットではありますが、その半面、雨の日の交通事故件数が晴れの日より大幅に増加すると報告されています。
雨の日の運転ではどのようなことに注意したら良いのでしょうか。
まず、雨の日にどれくらい事故が増えるのかということに注目してみます。
首都高速のウェブサイトには2015年から2019年の交通事故件数の推移が掲載されています。
雨天時間は年間での総時間の約6%程度ですが、2019年のデータでは全体の事故件数が9587件に対し、雨天時の交通事故発生件数は1769件と18.5%を占める結果になっています。
これは1時間あたり3.34件発生していることになり、晴天時の0.95件と比較して約4倍も事故が多いことがわかります。
さらに興味深いのは、晴天時の事故比率が「追突(46.7%)」「車両接触(30.6%)」「施設接触(14.1%)」となっているのに対し、雨天時では「追突(34.6%)」「車両接触(20.3%)」と他車との事故が減少している一方、「施設接触(41.5%)」が急増することです。
「施設接触」による事故の約6割が60km/h以上の走行中に発生しており、とくにカーブ区間での速度超過が原因とされるケースが多いとされています。
上記の結果から、雨天時の走行はタイヤのグリップ力が低下し、カーブを曲がりきれなくなった結果、事故になっているケースが多いようです。
さらに交通事故総合分析センター(ITARDA)の統計では、雨天時の17時以降に死亡事故が増えるという結果もあり、なかでも深夜1時から2時の雨天がもっとも死亡事故が多いといいます。
ITARDAによると、一般道では右折時に横断歩道の歩行者を巻き込むケースが増えているという分析もあるのですが、ワイパーの向きにより、フロントウインドウの右側に水膜が発生したことで死角が増え、右折時の事故が多いことが指摘されています。
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雨の日の運転では、適切な排水能力を発揮できるタイヤとクリアな前方視界の確保が重要だということがわかります。
■タイヤは溝の深さだけでなく経年劣化にも注意
雨の日の走行ではタイヤの影響が大きいと考えられますが、走行前に愛車のタイヤの状態をチェックすることが大切だといえます。タイヤ量販店のスタッフに詳しく話を聞いてみました。
タイヤの状態で真っ先にチェックしたいのが溝の深さです。クルマを購入してからタイヤの交換をしていない場合は、できるだけ早く確認したいところです。
「タイヤの排水性に大きく影響するのが、路面と接するトレッド面に刻まれた溝です。新品タイヤの溝は約8mmといわれていますが、タイヤが摩耗して溝の残りが1.6mmになると、限界にまですり減ったという『スリップサイン』が出てくる構造になっています。
スリップサインはトレッド面に複数設置されているのですが、これが1か所でも出ているタイヤはいわゆるツルツルの状態になっていますし、車検も通りません」(タイヤ量販店スタッフ)
しかし、スリップサインが出てから交換するのではなく、そこまで摩耗する前に交換したほうが良いといいます。
「一般的なタイヤは4万km程度の走行距離で消耗することを想定して作られています。あくまで目安ですが、5000km走行するとトレッド面が約1mm摩耗するといわれており、ハイグリップタイヤなどはさらに摩耗が進みやすいとされています。
ただし、タイヤメーカーの実験によると、溝の残りが3mm程度になると雨天時のグリップ力が低下し、制動距離も大幅に伸びしてしまいます。そのため3万km以上走行したタイヤはスリップサインが出ていなくても交換したほうが安全です」(タイヤ量販店スタッフ)
また、タイヤには消費期限が設けられています。タイヤの寿命ともいえる消費期限は製造から10年程度といわれていますが、実際は4年から5年でかなり硬化し、ひび割れが発生したりグリップ力も低下してしまったりすることから、各メーカーは5年以内での交換を推奨しているようです。
しかし「タイヤが新しければ安全」ともいい切れないのが雨の日の運転の難しいところだといいます。雨天時の運転で気を付けたいポイントはどのようなことなのでしょうか。
「やはり雨の日では、速度を落とすことが最大の安全策です。とくに高速道路では、カーブの手前の直線部分で十分に減速してください。
また、コーナリング中のブレーキはできるだけ控えることも大切です。コーナーでブレーキを踏むと、ただでさえ雨でグリップ力が低下している状態を、さらに不安定にさせてしまう可能性が高いです」(タイヤ量販店スタッフ)
もうひとつ注意したいのが、路面にできた水たまりです。これもできる限り避けたいところですが、避けきれない場合は速度を落とすことで安全に通過できるといいます。
「本当は水たまりを避けて走行したいところですが、雨天時はそこまでハンドルを細かく操作するほうが危険です。路面が濡れてときはタイヤと路面の間に水の膜があり、摩擦が低下している状態です。
この水膜が大きくなってタイヤが浮いたような状態になるのが『ハイドロプレーン現象』で、ブレーキを踏んでも止まれなくなってしまいます。そうならないためにも大きな水たまりを通過するときは慎重に走行してください。
また、雨の日は前走方車が跳ね上げる水しぶきにも注意が必要です。水しぶきによって前方の視界が遮られることもありますので、十分な車間距離をとって、水しぶきの影響をできる限り減らすような運転を心がけていただければと思います」(タイヤ量販店スタッフ)
タイヤと同じくゴムを主成分とし、雨の日の運転に欠かせない装備なのがワイパーです。晴れの日は使用しないため劣化してもなかなか交換しないパーツの代表格でもあります。劣化していると十分に水はけできないため、前方の視界が確保できず危険です。
「ワイパーも使わなければ大丈夫というものではありません。ワイパーはタイヤ以上に劣化しやすく、すぐに硬化したり、ゴミを拭き取ることで傷が入ってしったりすることもあります。
ワイパーのゴムは種類がいろいろありますが、高価なものを長く使うより、安くてもできるだけ新品のものに交換したほうが良いパーツだといえます」(タイヤ量販店スタッフ)
ちなみに、ワイパーは純正品のほかにさまざまな効果をうたった社外品が数多く販売されています。とくに撥水効果を持たせたワイパーは、拭き取りの必要なくワイパーを使用するだけで窓に撥水コーティングをしてくれる便利グッズ。これだけでも随分と雨の日の視界が改善されるので、一度使ってみても良いかもしれません。
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雨の日の運転はいつも以上に気を遣うものですで、「急」がつく操作をしない、速度はいつもより落とし気味にすることで、事故の発生率を下げることができます。
タイヤやワイパーの状態も万全にして、安全に十分配慮して運転しましょう。