ミラノで開催された屋外型モーターショー「Milano Monza Motor Show (MIMO)」では、モンツァサーキットでのイベントも併催された。アルファ ロメオ111周年記念イベントとともにおこなわれたMIMOのサーキットイベントを現地からレポートする。
■ミラノからモンツァまでスーパーカーがパレード
Writer:NOGUCHI Yuko(野口祐子)
Photographer:MIMO
2021年6月10日から13日までの4日間、「Milano Monza Motor Show (MIMO)」が開催された。2日目となる6月11日(金)は、朝9時にミラノ市内の南に位置する地下鉄2番のロモロ(Romolo)駅に向かった。その日、このロモロ駅前のLargo Antonio Alberto Ascari(ラルゴ アントーニオ アルベルト アスカリ)では、ミラノ自動車連盟寄贈のAlberto Ascali(アルベルト アスカリ)のモニュメントのセレモニーがおこなわれたからである。
Alberto Ascari(アルベルト アスカリ)はミラノ出身のドライバーだ。1952年、1953年とフェラーリでF1チャンピオンとなったF1界のレジェンドで、その他数々の記録を残している。そうしたこともあり、セレモニーでは、イタリア人としてモータースポーツ界の発展に貢献した彼の偉業を称え、ミラノ市長からの言葉も添えられた。
モニュメントを出発地点とし、ミラノのドゥオーモから北北東におよそ18kmほどの距離にあるモンツァサーキットまで、各国から参加のジャーナリストパレードがおこなわれた。交通警察の完璧な誘導のもと、スムーズにモンツァサーキットに到着することができた。
●ダラーラ・ストラダーレのレーシングモデルが走行を披露
その後、参加者全員でサーキットのメインストレートまで歩いて行き、MIMOのモンツァ編のオープニングセレモニー、テープカットがおこなわれた。無観客のなかでおこなわれた静かなセレモニーの方が、むしろサーキットとの距離が縮まったような気がする。サーキットならではのオープニングに相応しいロケーションだった。
突然、主催者のアンドレア・レヴィからサプライズのアナウンスがあった。
その日のメイン・スペシャルイベントとなる、「ダラーラ・ストラダーレ レーシングバージョン」の開発車EXPの初走行がおこなわれるとのこと。
アナウンスが終わった途端、白と黒のバーコードデザインでカモフラージュされたEXPが私たちの前に現れた。こうした突然のサプライズもサーキットイベントの醍醐味のひとつだ。
マルコ・アピチェッラがハンドルを握ったこのクルマは車重890kg、最高速時のダウンフォースは1.25トン以上、コーナーリングGが2.7G以上というサーキット走行のために作られたクルマだ(詳細に関しては9月の発表以降ということ)。
モンツァサーキットは2022年の100周年記念のために、今では使用されなくなっていたバンクを含めたサーキット全体の改修を現在おこなっている。そしてその日は待ちに待ったバンクでの走行もおこなわれた。目の前の少し恐怖も感じる急斜面、もちろん私たちが運転するクルマでは上部の方は走行禁止で下部のみの走だ。それでも前方を走るクルマを見るとバンクの存在感に圧倒される。
軽いランチの後、数々の走行プログラムが続いた。もちろん、無観客だ。
午後4時、Fondazione Macalusoのコレクションのランチア「LC1」、「LC2」、「ベータ モンテカルロ」の同時走行がおこなわれた。流れるような赤、青、水色、白の高貴なマルティーニカラーのラインが3台並んでの走行は、身震いがするほど美しかった。貴重な3台のスペックは次のとおりだ。
ランチア「ベータ モンテカルロ」(1980年)車両重量850kg、1400cc4気筒ターボ、420HP
ランチア「エンデュランス LC1」(1982年)車両重量640kg、1400cc4気筒ターボ、430HP
ランチア「エンデュランス LC2」(1983年)車両重量850kg、2599ccV型8気筒(then3014cc)680HP(850-1000 in qualifying with turbo)
その後は夜まで各走行が続き、最後はスーパーカーパレードで終了。
■アルファ ロメオ生誕111周年パレード開催!
2021年6月13日(日)、MIMO最終日。
先ずはモンツァサーキットに向かった。この日は各クラブから新旧800台以上のクルマが集まり、走行がおこなわれた。私はスクーデリア デル ポルテッロとRIARの合同のアルファ ロメオ111周年記念のパレードに友人と「4C」で参加。アルファ ロメオだけで500台以上が集まった。
そこには珍しい1950年から1955年生産のアルファ ロメオの四駆「Matta(マッタ)」が10台が並んだ。マッタは1950年の終わりごろからアルファ ロメオがイタリア軍の偵察車両入札に応募するためにジュゼッペ・ブッソが開発を始めた車両だ。
「1900」のツインカムエンジンを搭載するオフロード車で、総計2075台が生産されたが、軍の入札はフィアットの開発した車両に決まったため生産はその時点でストップした。マッタは軍にも納入されたが大部分は警察、カラビニエーリに納入されている。
●憧れのモンツァサーキットのバンクを走る!
それにしてもこの日の気温は35度はゆうに超え、しかもアスファルトで太陽燦燦の光を浴び体力消耗。こんな日でもスクーデリア デル ポルテッロのメンバーはレーシングスーツを着て、クーラー無しのレーシングカーに乗り込んでいる。さぞかし大変な1日だっただろう。
その他、Aci StoricoからVW「マッジョリーノ」が70台、その他、各クラブから約300台集まった。この日もパレードでバンクを走行。誰にとってもこのバンク走行は夢だったに違いない。どんなに暑くても、憧れのバンクを走れただけでもこのイベントに参加した価値はあっただろう。
夕方になると暑さで疲れ切ってしまった人が続出、気がつくと参加車はかなり減っていた。
私達は17時頃にサーキットを出て、ミラノへと戻ることにした。しかしなんと信じられないことに、アルファ ロメオ4Cが道端で止まってしまったのである。オルタネーターの故障らしい。多分あの暑さに耐えられなかったのだろう。クルマはそのまま修理工場へ。
6月10日から始まったMIMO。最終日の夜23時までクルマは展示されているというので、展示されているクルマたちとの最後の別れをすべく、ミラノの中央に向かった。
夜の光に包まれて幻想的なドゥオーモの大聖堂の周りに並ぶスーパーカー。この歴史ある建造物と最新のスーパーカー、この光景は、ここミラノでしか見られない貴重な経験だ。来年おこなわれるであろうMIMO開催まで、この美しい映像を心に大切にしまっておこう。
2021年、パンデミックという見えない敵と共存しながらの開催となった第1回ミラノ モンツァ オープンエア モーターショー(MIMO)。長い自粛生活のなか、久しぶりに人々の心に光が当たった気がした。この光がずっと続くことを願うばかりだ。