いまや新車で販売されているクルマの99%がAT車といわれており、それほど一部の車種を除いてMT車を見かけることは稀になりました。実際の販売現場におけるAT車とMT車の売れ行きの違いはどうなっているのでしょうか。新車販売ディーラーと中古車販売店にATしか売れていないのか聞いてみました。
■MTを多く設定するマツダ 新車のMT車って売れてるの?
日本の新車市場ではATなどの2ペダル車(以下、AT車)がほとんどを占めており、その比率は99%ともいわれています。
海外に目を向けると、MTのイメージが強い欧州では現在でも80%以上がMT車でAT車は2割弱、中国でもAT車の普及率は5割強。AT普及率が高いと思われているアメリカでは、MT車は3%程度となっています(国際クリーン交通委員会調べ)。
日本のAT比率が極めて高いことがわかりますが、最近ではあえてMT車を設定するメーカーもあります。
現在の国産車でMT設定に力を入れているのはトヨタとマツダです。
トヨタは「86」や「カローラシリーズ」「ヤリス」「C-HR」といったモデルにMTという選択肢を残し、マツダは「ロードスター」だけでなく、SUVの「CX-3」「CX-30」「CX-5」や「マツダ2」「マツダ3」「マツダ6」にもMTを設定していますが、それでも日本人のMT車離れは進んでいるようです。
実際の新車販売の現場ではどのような状況になっているのでしょうか。MT車を多くラインナップしているマツダの営業マンに話を聞いてみました。
「MT率が約7割というロードスターは別格ですが、CX-5やCX-30などSUVにもMTを設定している強みもあって、お問い合わせや試乗希望はいただいています。ただし実際にご購入となると、やはりATを選ばれる人が多くなります。
SUVの場合は人気ジャンルということもあり納期が1か月から2か月となっておりますが、希少なMTモデルはどうしてももう少しお待たせしてしまう状況になっています」
ちなみに日本自動車販売協会連合会のデータでは、ロードスターのMT比率が68.6%なのに対し、CX-5やCX-30は3%程度。単純計算で30台のなかにMTは1台という、非常にレアな存在ともいえます。
「もともと輸出向けにMTが用意されていたこともあって、うちでも数字以上に人気は高いようです。ただしお客さまのご事情などもあり、ご家族でお乗りになる場合はATを選ばれる人が圧倒的に多いです。
半面、ロードスターは2シーターオープンという趣味性の高さもあり、純粋な指名買いのお客さまでMTを選ばれるケースが多いです」(マツダ営業マン)
スポーツカーでは根強い人気があるMT車ですが、それ以外のモデルではかなりマニアックな選択肢となっているようです。
■中古車市場でのMT車の現状は?
それでは中古車市場はどうなっているのでしょうか。埼玉県で輸入中古車を中心に扱う販売店のオーナーに話を聞いてみました。
「純粋なMT車が非常に少なくなりました。いまやフェラーリやポルシェも2ペダルの時代ですから、基本的に100%近くがAT車といっても間違いない状況です。
最近では人気の欧州車はほとんどがATで右ハンドルしか流通しておらず、オークションなどでもクルマの状態を優先して選ぶため、どうしても売れ筋のAT車ばかりの仕入れになっています」
ひと昔前なら、MT車は探せばそれなりにありましたが、現在の中古車市場ではごく一部の車種のMT車しか流通していないといいます。
「でもMT車のニーズは確実にあります。実際、車種と希望を聞くとMT車を探されているお客さまもいらっしゃいます。
中古車というジャンルを選ぶお客さまは趣味性を大切にしている人が多いので、MT車があれば選ぶ割合は新車より高いかもしれません。
ただ、中古車の場合は予算と程度が優先されるため、結果的にAT車を購入する人も多いです」(中古車店オーナー)
興味深いのは、新規免許取得を目指す全国の教習所では、MTも運転できる「普通免許」コースが選択する人が32.4%もいることです(2019年度 運転免許統計より)。
男女別では、男性の約7割がMT可能な普通免許コースを受講するのに対し、女性の8割以上が「AT限定」コースを選択。MT車は女性に嫌われているようです。
AT車しか運転できない人が増え、新車もほとんどがAT車になったことから中古車市場もAT車が多くを占めるようになりました。
その結果、一部のスポーツカーなどを除いてAT車しか流通しない日本独自のマーケットが形成されたといえるでしょう。
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現在やこれからの時代を考慮すると、MTにこだわる理由がなくなっていくのは仕方ないのかもしれません。これもクルマに対する意識が大きく変化している証拠だといえそうです。