夏は、長期休みもあることから、クルマで遠出することの多い季節です。では、高温となる車内に残される精密機器たちは、高熱によって故障することはないのでしょうか。
■動作保証温度は最大85度、しかし中身のカード類は要注意
全国で梅雨明けを迎える地域が増えており、本格的な夏が始まろうとしています。
しかし、日差しを浴びるうえに密閉された車内は、非常に高い温度になり、乗員の健康管理だけでなく、車載装備にも異常をきたす可能性があります。
なかでも近年装備する人の多いドライブレコーダー(ドラレコ)やETC車載器といった精密機器は、高温の車内による影響で故障する可能性があるといいます。
まず、夏場の車内は非常に温度が高くなります。
JAFがおこなったユーザーテストでは、炎天下における車内温度は、3時間ほど経過した時点で50度近くまで上昇することがわかっています。
ダッシュボードは最大で約80度まで温度が上がることがわかっており、車内の精密機器に大きなダメージを与える可能性があります。
車内機器の耐熱性能について、大手カー用品店スタッフは次のように話します。
「まず、車内機器の耐熱性能は『ダッシュボードに直付けかどうか』がポイントとなります。
ひと昔前はカーナビなどをダッシュボードに装着している人も多かったので、トラブルは多く発生していました。
しかし、最近ではインパネに埋め込まれている場合がほとんどですので、熱によりカーナビやデジタルメーターが故障することはまず考えられないでしょう」
車内にある精密機器のうち、インパネに装備されているものに関しては、ダッシュボードほど温度が上昇しないうえ、耐熱性能も高いことから、故障の心配は少ないようです。
では、近年必要性が増しているドラレコやETC車載器はどうでしょうか。後付けで装備することが多いうえ、ダッシュボードへ装着するユーザーも多く見受けられます。
前出のカー用品店スタッフは次のように話します。
「ドラレコについては、耐熱性能がどんどん上がっているものの、購入時はチェックしたほうが良いでしょう。
最近では、-10度から60度まで耐えることができるものが多いほか、商品によっては-25度から85度まで耐えられるというものまで出ています。
ETC車載器については、車載器とカードに分けて考えましょう。
車載器は、約80度まで動作を保証しているものが増えており、熱で故障することは少ないと思われます。
しかし、ETCカードは熱に弱いので危険です。
多くのカードは45度程度までしか動作が保証されていないため、熱でカードが変形したり、磁気に不具合が生じる可能性があります。
機器そのものではなく、カード類の管理には気をつけるべきといえます」
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近年のドラレコの動作保証温度は、最高で60度から85度に設定されているため、基本的に故障の心配はないようです。
しかし、ETCカードの多くは熱によるトラブルの可能性もあるため、防犯上の意味も込めてクルマから離れる際は、カードを抜いて持ち歩くのが安全策といえます。
また、機器の故障以外でも前出とは別のカー用品店スタッフは「ダッシュボードに置かれたメガネなどの光が反射して、煙が出たという例があった」と話しているため、車内の温度に注意を払うことに変わりはないでしょう。
■ETCカード挿しっぱなしは、盗難時に保証されにくい?
熱による故障を防ぐ以外にもうひとつ、クルマから離れる際はETCカードを持ち歩いたほうが良い理由があるようです。
ある国内メーカーの新車販売店スタッフは次のように話します。
「ETCカードが盗難されて不正に利用されても、カード会社が補償してくれないケースはあります。
その理由は、カード会社の利用規約に『会員の過失』によって損害があっても、補償をしないと明記されているケースがあるからです。
盗難される危険があるにも関わらずカードを放置したことは、カード会社によっては持ち主の過失とされることがありますので、補償が適用されないのです。
実際のお客さまで、盗難されたクレジットカード機能付きETCカードが不正利用されても、補償されなかったケースがありました」
実際、「会員の過失」が認められた場合、補償の対象外となるケースは多いようです。
ヤフーカードの利用規約において、「補償の対象とならない損害」をみると、以下の記載があります。
「保険契約者、被保険者またはこれらの者の法定代理人の故意もしくは重大な過失または法令違反によって生じた損害」
ETCカードの放置は、この過失に当てはまる可能性があるため、クルマから離れる際は必ず持ち歩くようにしましょう。
なお、前出の販売店スタッフによれば、最近ではクレジットカード機能が付いてないETCカードを選ぶユーザーが増えているとのことです。
例えば、全国の高速道路会社6社が共同して発行するETCパーソナルカードは、あらかじめデポジット(保証金)を送金しておくことで、ETCが利用できるようになります。
盗難が不安な人は、クレジットカード機能のないETCカードも選択肢に入れると良いかもしれません。