高速道路などにおいて運転をアシストする「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」ですが、一部モデルでは時速30キロなでは解除されることがあります。なぜ、渋滞時など役立つはずのACCは低速時に解除されるのでしょうか。
■長距離の走行も楽々!ACC機能に速度域が定められているのはなぜ?
近年では多くのクルマに採用が見られる「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」。
最近では、全車速対応モデルが増えてきていますが、少し前のモデルでは、30km/hまたは50km/h以下ではシステムが解除されることもあります。
高速道路などで使用する場合、渋滞時など速度域が低下した場合の運転アシストが重要な印象がありますが、なぜ低速域では作動しないのでしょうか。
近年では、クルマが周りの危険を自動で感知したり、ペダルの踏み間違えによる急加速を抑制したり、運転の快適性や安全性が向上するあらゆる機能が登場しています。
そんななかでも比較的多くのクルマに搭載が見られるのが「定速走行・車間距離制御装置」、別名「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」という機能です。
ACCは、一般道路ではなく、基本的に信号や交差点のない高速道路や自動車専用道路などで活用することを目的として開発され、その名の通り、クルマを一定速度で走らせたり、前方車両と適切な車間距離を保ちながら追従させたりすることができます。
ACCの普及率は時代とともに上昇しており、実際に国土交通省が2018年12月に公表した「新車総生産台数に占めるACC装着率」によると、2012年に5.3%だったACCの新車装着率は、2017年には47.5%まで上昇しています。
そんなACCですが、モデルによって全車速追従のものもあれば、追従可能な速度域が30km/hから100km/hまでというように決められているものもあります。
運転者の運転を快適にするはずのACC機能で、なぜ速度域が限定されているものがあるのでしょうか。
ホンダの広報担当者は、ACCについて、「ACC機能における全車速追従は、現在上位車種から順次展開している状況です」と話します。
また、MT車の新車発売を意欲的におこなうマツダの広報担当者は、以下のように話します。
「マツダでは、現在多くのモデルに追従機能である『MRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)』を搭載しており、AT車の場合は全車速追従、MT車の場合には、30km/hから高速域まで対応しております。
MT車の場合に速度域が限定されているのは、MT車では運転者自身にシフトチェンジをおこなっていただく必要があるため、万が一のエンジンストールを防止するために、下限値を設けています」
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このように、速度域の設定には、各メーカーにより異なる事情や状況があるようです。
一方で、低速時にACC解除される背景には、採用しているブレーキ構造が関係しています。
最近では、電子パーキングブレーキが主流となり、同時に「ブレーキホールド」機能なども定番化しつつあります。
しかし、手動サイドブレーキを採用している場合、低速時のブレーキ操作が難しいといい、各社では電子パーキングブレーキと全車速ACCがセットとなっているようです。
■ACC、突然解除されても危なくない?
前述したように、全車速追従のACC機能はまだすべてのモデルに搭載されておらず、速度制限のあるものは、下限の速度に達してしまった際に、自動的に解除されるようになっています。
ACC機能の自動的な解除され、手動運転に切り替わった場合、運転者や乗員に危険を及ぼす可能性はないのでしょうか。
実は、ACC機能解除時には、アラートやディスプレイの表示で、運転者に機能の解除が警告されるようになっているようです。
ACC機能機能解除時のアラートについて、前出のホンダの広報担当者は、「ACCの解除時には、警告音とあわせて、メーターにも『ACC機能OFF』が表示される」といいます。
解除時のアラートは、メーカーやモデルによっても異なるようですが、例えばホンダ「N-BOX」では「ピー」という警告音、マツダ「マツダ3」では警告チャイムとして「ピロン」という音が鳴るようです。
また、両車とも警告音とあわせてディスプレイへの表示もおこなわれるように設定されています。
このように、ACCの解除時は、アラートやディスプレイへの表示がおこなわれるため、運転者が注意を払っていることで、「突然解除された!」ということにはなりにくいと考えられます。
また、ホンダの広報担当者は、ACCなどを含むホンダの安全機能「Honda SENSING」について、以下のように話します。
「Honda SENSINGはドライバーの運転支援機能であり、各機能の能力には限界があるため、各機能の能力を過信せず、つねに周囲の状況に気をつけ、安全運転をお願いします」
ホンダに限らず、各メーカーのACC機能を含む安全機能は「運転支援機能」としてクルマに搭載されています。
例えば、トヨタでも同車の安全機能として展開する「Toyota Safety Sense」について、「運転者は各システムを過信せず、つねに自らの責任で周囲の状況を把握し、ご自身の操作で安全を確保してください」とホームページにて啓発しています。
また、同じように日産やマツダでも、各メーカーのホームページなどにおいて、システムだけに頼った運転はせず、周囲のクルマや歩行者の確認など、運転者自身が安全運転を心がけるよう呼びかけています。
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速度が限定されたACCは自動的に解除されるものではありますが、機能の解除時には運転者へ知らせるシステムになっていることが一般的です。
ACCを含む安全機能は、運転者自身が安全運転を心がけていることを前提として搭載されているため、安全機能に運転を任せず、自分自身で安全確認をするようにしましょう。