クルマの外装に取り付ける灯火類は、ライトの色や色温度、取り付け位置などが規定により細かく決まっています。その一方で、車外ではなく車内に電飾を施しているクルマも見受けられます。では、車内のライティングについては規定があるのでしょうか。
■車外への取り付けは禁止事項あり! では車内のライティングは自由?
ヘッドライトやフォグランプといった、クルマの外装に取り付ける灯火類は、それぞれ色や色温度(ケルビン)、個数、取り付け位置が定められており、好きな色の電飾を自由に取り付けることなどは違反になる可能性があります。
例えば、フロント部分に取り付けるフォグランプは、道路運送車両法の保安基準第199条により「同時に3個以上点灯できない」や「白か淡黄色しか使用できない」と定められています。
特にトラックなどは、ボディのサイドにマーカーランプなどを装備していることがありますが、こうした灯火類については取り付ける間隔や個数も細かく決められています。
一方で車内に目を向けると、ルームランプ、足元を照らすフットランプといった灯火類が設置されており、そういった車内の灯火類を紫やピンクなど派手なカラーの電飾に変更している人も見受けられます。
では、外装の灯火類のように、車内のライトも色や個数などの規定はあるのでしょうか。
「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」第62条には「制動灯や方向指示器等を除き、後方を照射し若しくは後方に表示する灯光の色が橙色である灯火で照明部の上縁が地上2.5m以下のもの又は灯光の色が赤色である灯火を備えてはならない」と記されています。
つまり、車内のライトでも後方を照射していると判断された場合には、赤色やオレンジ色(橙色)のライトは違反になる可能性があるということです。
さらに、同法には「自動車の前面ガラスの上方には、灯光の色が青紫色である灯火を備えてはならない」とも記載されており、ルームランプがフロントガラスの上部に設置されている場合は、青紫に近い色も違反となります。
このように、色については、赤・オレンジ・青紫の3色が具体的に挙げられていますが、色の詳細や基準については法令で定められておらず、色味が近いものについては基本的に違反になると考えたほうが良いかもしれません。
また、同法のなかには「次に掲げる灯火を除き、点滅する灯火又は光度が増減する灯火を備えてはならない」とも記されており、方向指示器や非常点滅表示灯など以外には、点滅するような灯火類、光の明るさが増減するような灯火類を設置してはいけないと定められています。
しかし、法律ではフットランプといった足元付近の灯火類については記載が見受けられません。
■足元周辺の灯火類は違反になる?
足元に自分でLEDなどの電飾を施したり、フットランプの色を好きな色に変更したりすることは違反にならないのでしょうか。
警察関係者は、足元周辺の灯火類について以下のように話します。
「フットランプなどが純正でも装備されているように、足元に灯火類を設置してはいけないという法律はなく、どういった灯火類なら足元に設置しても良いかという基準も基本的にはありません。
しかし、足元の灯火類が視界を幻惑して運転に危険性を及ぼし、事故を起こした場合には道路交通法の『安全運転の義務』に違反することになります」
道路路交通法の第70条には安全運転の義務として、「運転者は、ハンドル、ブレーキ等を確実に操作し、道路や状況に応じて他人に危害を及ぼさないように運転しなければならない」と定められています。
人間の目には瞳孔といわれる部位があり、暗い場所では少ない光でも見ようと瞳孔が開き、一方で明るい場所では入ってくる光を絞るために瞳孔が縮むようになっています。
よって、例えば夜間やトンネル内などの暗い場所でルームランプをつけると、比較的大きく開いていたドライバーの瞳孔が収縮して暗い周囲が見えにくくなってしまい、走行に支障をきたす可能性もあります。
さらに、車内のライティングが窓ガラスに反射し、周囲の安全確認を確実におこなえないという事態も懸念されます。
そのためルームランプや、自身で施したLEDライトなど、車内の灯火類をつけたまま走ることは、運転時の視界に影響を及ぼすものとして、安全運転の義務違反となる可能性もあり得ます。
安全運転の義務違反では、違反点2点、大型車は1万2000円、普通車は9000円の反則金が科せられます。
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夜間に車内で物を探す場合などには、ルームランプをつける必要がありますが、その際は一度安全な場所で停車するようにしましょう。
カスタムの一環として、前述の道路運送車両の保安基準の細目を定める告示の第62条の範囲内でLEDなどの灯火類の設置を楽しんでいる人もいるかもしれませんが、安全運転の義務を考慮すると、一概に合法であるとはいえないでしょう。
また、車内の灯火類に限らず、あらゆるカスタムについては、自分では安全運転の義務に違反していないと考えていても、ほかのクルマにとっては危険性の高いものになっている可能性もあります。
危険性の高い、不適切なカスタムであると判断されないように、不要なクルマのカスタムはおこなわないのが最善かもしれません。