2021年8月17日に発売された日産新型「ノート オーラ」が販売好調だといいます。開発にあたって、ベースとなる「ノート」との差別化をはじめ、さまざまなこだわりが詰め込まれたといいますが、具体的にはどんな点が意識されたのでしょうか。
■新型「オーラ」のデザインは「アリア」と“兄弟”?
日産「ノート オーラ」(オーラ)の販売が好調です。ノート オーラは2021年6月15日発表・8月17日に発売された、日産が「全く新しいプレミアムコンパクトカー」と銘打つ意欲作です。発売から3週間で1万台を超える受注がありました(月販販売目標台数は未公開)。
グレードでは、上級グレードの「G leather edition」が全体の45%を占め、また四輪駆動システム「e-POWER 4WD」が「G」および「G leather edition」を合わせて33%と高い比率となっているのが特徴です。
購入年齢層は50代が全体の3割でもっとも多く、40歳以下が3割となっています。
乗り換え車は、国産の有力ハイブリッド車や欧州系小型車が目立つほか、自社銘柄と他社銘柄を問わずミニバンやセダンなど多彩なモデルとなっており、これは日産の狙い通りといったところでしょう。
そうしたなか、日産はメディア向けにノート オーラの技術やデザインなどについてオンラインでの意見交換会を開きました。
エンジニアやデザイナーからは、既存の広報資料では記載がない発言もたびたびあり、そこからノート オーラ人気の背景を垣間見ることができました。
まず、エクステリアデザインについてです。ノート オーラをパッと見て、「アリアに似ている」と感じた人は少なくないでしょう。
この点について、チーフデザイナーの村林和展氏は、次世代の日産デザインとして「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」というコンセプトを持ち、そのなかで「粋(いき)」、「間」、「整」、「傾く(かぶく)」、「移ろい」という5つの要素をオーラに盛り込もうとした結果として、フロントビューとリアビューでアリアのデザインイメージを踏襲することになったと指摘しました。
筆者からの「経営陣からアリアとのデザインでの整合性を求められたという側面はないのか?」という問いに対しては、そうした要求は一切なく、あくまでもデザイン部門としての判断だったといい切りました。
日産の新時代を生きるアリアと、最新のe-POWERを搭載したノート オーラが兄弟という商品イメージになることは、自然な流れであるという解釈です。
また、これまで日産にはVモーションという顔の共通アイコンがありましたが、次世代日産デザインでは、アリアが持つライティングVモーションという考えをベースに、アリアと同じ世代を生きる新モデルにはなるべく同じ印象を与えるように、かつ多様性を感じられるようなデザインを進めるとのことです。
また、インテリアの担当デザイナーは、インテリアについてノートとの共通性を持たせながら、コンパクトクラスとしては異例の12.3インチ アドバンスドドライブアシストディスプレイのデザインやコンテンツ、またシートのステッチを密に入れることで表皮断面を豊かな表現にするなど、「感性品質」に対するさまざまな拘りについて説明しました。
一方で、こうしたこだわりにおけるコスト高をクルマ全体で平準化するため、インテリアの主要パーツは他モデルとの共通化を徹底したといいます。具体的には、メーター、ステアリグ、ナビは北米ローグがベースとで、シフターや電動パーキングスイッチはアリアと共通です。
■第二世代e-POWERでエンジンのかかる頻度はどれほど減少した?
次に、e-POWERの進化についてです。
これまで、キックス向けの改良、そしてノートおよびノート オーラでの第二世代e-POWERに関して日産側からさまざまな形で情報が公開されてきました。
なかでもユーザーが乗ってすぐに感じ取れるのは、発電機としてのエンジンがかかる頻度が大幅に減ったことでしょう。
この点について、チーフビークルエンジニアの渡邊明規雄氏やe-POWER開発関係者は今回、具体的な数値を出してくれました。
それによりますと、第一世代e-POWERに比べると、時速50km走行時で約半分、さらに低速の時速30km走行時では7割近く、エンジンがかかることがなくなっているといいます。
これはノート(2代目)やセレナ(5代目)など、第一世代e-POWER搭載車から得たビックデータを解析し、アクセルを踏むシチュエーションを細かく検証するなど、「極力エンジンをかけないエネルギーマネージメントを心がけた結果だ」といいます。
そのうえで、ノート オーラ同様にノートでも採用している、エンジンをかける場合でもエンジンが気にならないロードノイズが多い時を選ぶように設定しています。
e-POWER開発者は「理論上、ノートとノート オーラは、エンジンがかかる頻度は変わらない」としているものの、ノート オーラは遮音性が強いガラスやルーフ部分に遮音材を強化した点、またドライブシャフトにダイナミックダンパーを採用したことで音の伝わり方も変わっているなどの効果により、ノートと比べてさらにエンジンがかかる際の音が気にならなくなっているといえます。
もう1点は、e-POWER 4WDについてです。
フロントのパワートレインについては、ノートでは初代e-POWERから大きく引き上げ、さらにノート オーラでは最大出力で18%増の100kW、最大トルクで8%増の300Nmとしています。
これに加えて、リアモーターの強靭化によってノートとノート オーラの走りは大きく変わっています。初代e-POWERでは出力3.5kWだったものを、第二世代では一気に50kWまで高めているのですから、体感の差もはっきり出ます。
e-POWER開発者、また4WDに関する開発担当者は「3.5kWでは、いわゆる生活四駆であり、市場からは本格的な電動四駆が欲しいとの声があった」と開発の出発点を振り返りました。
そのうえで、当初は20kW程度を検討していたが、日産が目指す旋回時と加減速時での”上質さを極める次世代電動4WD”を実現するため、50kW・100Nmという設定に至ったとのことです。
モーターとしては、最大で100kW・195Nmと現在の2倍のポテンシャルがあるといいますが「あまりやんちゃ(な動き)にするのではなく、修正操舵なしで快く駆け抜けるため」というのが今回のノート オーラ向けです。
見方を変えると、今後、他の日産新型モデルで本格的なオフロード系SUVやスポーティモデル向けとして、より強力なe-POWER 4WDが生まれる可能性が十分にあるということでしょう。
幸先の良いスタートを切ったノート オーラが、次世代日産の行方を占ううえで重要なモデルであることは間違いなさそうです。