ガソリン価格が高騰している昨今、クルマの燃費が重視されています。エコカーに買い替えるなどではなく、いま乗っているクルマで燃費を良くする方法はあるのでしょうか。
■意外とシンプル!? 燃費を良くする方法とは?
クルマを乗るうえで、「燃費」は重視される要素です。低燃費を実現する技術の進化や環境問題とも密接な関係があるだけに、ドライバーにとっても関心がある項目といえます。
現在ガソリン価格が高騰しており、少しでも燃費を向上させたいと思う人も多いでしょう。
エコカーに買い替えるのもひとつの方法ですが、いま所有しているクルマの燃費を上げる方法はないのでしょうか。
都内で国産・輸入車を問わず販売からメンテナンスまで手がける販売店のオーナー N氏に話を聞いてみました。さまざまなコンディションの中古車を幅広く見てきたN氏が考える燃費を稼ぐ方法は、至ってシンプルなものでした。
「まず運転では、できる限りストップ&ゴーを減らすようなルートを選ぶことでしょう。クルマは発進と加速でエネルギーを多く使いますので、この部分をどれだけ抑えるかが燃費に大きく影響すると思います。時間帯によっては信号の少ない裏道を走るより、大きい幹線道路のほうがスムーズに走れることもあります。
もうひとつは、走行に必要のない荷物を極力減らすことです。ラゲッジスペースやトランクに不必要なものを積載しているケースは意外と多く、ひとつずつはたいした重さでなくても、数が多くなれば10kg以上になることもあり、子ども1人分の重量物を無駄に乗せて走っている計算になります」
同様に、クルマのコンディションを良好に保つことが燃費の向上に役立つと教えてくれたのは、栃木県で整備工場を営むT氏。
国産車の整備や修理を多く手がけるなかで、まったくメンテナンスされていない結果、故障になったクルマが時々持ち込まれるそうです。
「購入してから何もメンテナンスされていないクルマの内部はかなりマズいことになっているケースが多いです。
エンジンオイルやATフルードも未交換、タイヤも購入時のまま、ただ燃料を入れて走行を続けていたというクルマは、オイルも劣化していることからエンジンの性能が引き出せず、燃費が悪化していることがほとんどです」
よくエンジンオイルは人間の血液に例えられるケースが多いのですが、血液がドロドロなら心肺機能が弱まり、運動能力が落ちるのも当然です。これと同じことがクルマでも起こっているといえます。
「オイルなど消耗品の交換を定期的にしておけば、エンジンも良好な状態を維持できます。オイル交換は決して安くはありませんが、エンジンが故障してしまえばその何十倍もお金が必要になることも考えると無駄ではないと思います」(整備士 T氏)
つまり、クルマにとって優しい運転や、定期的なメンテナンスで良好なコンディションを維持することで、かなり燃費は違ってくるそうです。
さらに、燃費に大きな影響をもたらすといわれるのがタイヤです。バリエーションも豊富になっている「エコタイヤ(低燃費タイヤ)」などは、やはり燃費にかなり貢献してくれそうです。しかし、ここにも注意すべき点があると整備士 T氏はいいます。
「エコタイヤはよく転がる(回転する)ことで同じ燃料でもより距離を稼げるということで、燃料の消費とCO2の排出量を減らすことができるといわれています。
ただし、転がりが良いとグリップ性能が低下してしまうため、このバランスをどう取るかが重要です」
一般的には転がり抵抗が良くなるとウェットグリップ性能が低下し、逆にウェットグリップ性能が良くなると転がり抵抗が悪化するといわれています。
最近では転がり抵抗とウェットグリップ性能を両立したエコタイヤも多く登場しており、タイヤを選ぶ際は性能をしっかりチェックすることをおすすめします。
ちなみに、タイヤの燃費に関する寄与率は、一定の速度での走行では20%から25%、加速抵抗が多い市街地などでは7%から10%程度。
転がり抵抗値が20%下がれば、タイヤの燃費への寄与率20%なら4%燃費が改善、寄与率が10%なら2%燃費が改善するという計算になります(JATMA「一般社団法人日本自動車タイヤ協会」HPより)。
「ここからが少し難しいところで、最大で4、5%の燃費改善するためのエコタイヤは、適正な空気圧があってはじめて性能を発揮できるということです。
適正値よりも空気圧を高めにすればさらに抵抗値は下がるでしょうが、グリップ力も下がります。またタイヤの一部分に負荷が集中するため、偏摩耗の原因にもなります。
エコタイヤこそ適正な空気圧を維持するためにマメにチェックする必要があるということです」(整備士 T氏)
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結論として、できる限りストップ&ゴーを減らす運転を心がけるとともに急発進や急加速を控え、エンジンオイルの定期的な交換や、タイヤは適正な空気圧を保っているかチェックするだけでも、多少燃費を改善することができそうです。
燃費のためにも、クルマを労わる運転や定期的なメンテナンスで数値を改善できることからはじめてみるのもいいかもしれません。
■実燃費により近づけたのが現在の「WLTCモード燃費」
燃費の指標として、以前はよく使われていた「10・15モード」ですが、それが「JC08モード」へと変わり、現在は「WLTCモード」となっています。
もっとも新しいWLTCモードは最近のクルマしか公表されておらず、かつての10・15モードやJC08モードをどう換算すればWLTCモードになるのでしょうか。
1991年から2011年3月まで採用されていたのが10・15モードと呼ばれる測定方法です。
この測定方法は当時の自動車を取り巻く環境をもとに走行パターンが定められていたのですが、計測前にエンジンを暖気するなど(エンジンにとって)良好なコンディションで数値を測定していたことから、実燃費とカタログ数値が乖離しているといわれていました。
そこで2011年4月から導入されたのがJC08モードです。これは暖気なしのコールドスタートや、計測する平均速度や最高速度を引き上げ実際の走行パターンに近付けた方式。
10・15モードより10%程度低い数値にはなったものの、それでもやはり実燃費との違いが指摘されており、JC08モードの約7割程度の燃費だと出せれば御の字とされました。
そこで2018年10月から導入されたのが「WLTC(Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle)」と呼ばれる試験方法で、国連傘下の「自動車基準調和世界フォーラム」で策定された国際基準です。
このWLTCモードはJC08モードよりさらに実走行に近づけるべく、計測する平均速度と最高速度の引き上げ、暖気前スタート率の増加、積載重量や走行距離の増加に加えて、「市街地モード(WLTC-L)」と「郊外モード(WLTC-M)」、「高速道路モード(WLTC-H)」という3つの走行シーンを想定して測定した平均値を記載する方式になりました。
これにより、かなり実燃費に近い数値がカタログに表示されるようになったといわれています。
10・15モードの数値をWLTCモードに置き換えるとき、10・15モードの1割減となる約90%がJC08モードの数値で、そしてさらに70%程度がWLTCモードの数値とされることから、10・15モードの約63%の数値が実燃費に近いといえます。
当時のハイパワー車などのカタログ数値で「8km/L」と書かれていた数値をWLTCモードに換算すると「5.04km/L」ということになります。
現在のWLTCモードの表記がない古い車種でも、おおよその実燃費を知ることができます。