ひと昔前は家族が乗れる国民車としてトヨタ「カローラ」をはじめ小型セダンが売れていた時代がありましたが、現在はその役割を「コンパクトトールワゴン」が担っているようです。そんなコンパクトトールワゴンの魅力を検証してみました。
■新たな国民車として人気を高める「コンパクトトールワゴン」
かつて、一般的なクルマといえばトヨタ「カローラ」といわれるほど、小型セダンがバカ売れした時代がありました。
「国民車」とも呼ばれたほどの人気を誇った小型セダンでしたが、最近は扱いやすいサイズに広々とした車内空間が特徴の「コンパクトトールワゴン」が、その役割を担っているようです。
コンパクトトールワゴンが人気を集める理由にはどのようなことがあるのでしょうか。
一般社団法人「日本自動車販売協会連合会」が発表している2021年度上半期(1月から6月)の新車販売ランキング(登録車)では、トヨタ「ルーミー」が2位にランクイン。
ホンダ「フリード」が9位、トヨタ「シエンタ」が10位、スズキ「ソリオ」は14位と、各社のコンパクトトールワゴンが軒並み上位にランクインしている状況です。
ちなみに、この期間におけるトップはトヨタ「ヤリス」でしたがこれは小型SUV「ヤリスクロス」とコンパクトハッチの「GRヤリス」までを含めた数字です。
ルーミーは2016年にデビューして、2020年にマイナーチェンジを受けました。現在販売されている2代目フリードも同じく2016年に登場して2019年にマイナーチェンジしており、いわゆる「新車効果」で売れているわけではありません。
純粋にそのクルマのコンセプトと性能や価格に納得したユーザーが多いことが予想されます。
コンパクトワゴンの魅力としてあげられるのは、やはりコンパクトであるということです。
全長は4m前後とハッチバックスタイルのコンパクトカー並みの全長で、取り回し性は良好。全高は1.7m前後を採用するケースが多く、同クラスのセダンやハッチバックと比べて頭上空間にも余裕があります。
さらにスクエアなボックススタイルのため、さらに車内空間に余裕を感じることができます。
全高の高さや自在にアレンジ可能なシートレイアウトなどにより、短い全長にも関わらず、十分な積載能力を確保するワゴンに仕立てられました。
似たようなカテゴリーに軽自動車の「スーパーハイトワゴン」があります。ホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」といった人気車ぞろいのカテゴリーですが、コンパクトトールワゴンは、軽スーパーハイトワゴンが軽自動車枠ということで超えられなかった弱点を解消したことにより、売れているといえます。
軽トールワゴンの弱点である「軽規格による全幅の狭さ」は、登録車であれば1.7m(5ナンバーサイズ)まで拡張できます。
同じく軽の660ccのエンジンも、1リッター以上のエンジンを搭載してパワー不足を解消するとともに、燃費性能に優れるハイブリッド採用モデルも多数用意されています。
さらに便利なのは、後部座席へのアクセスがしやすいスライドドアを採用していること。子供や高齢者でも乗り降りしやすく、狭い駐車場でのドアの開閉も容易におこなえます。
また、先進安全運転支援システムをも搭載するなど高い安全性を確保しつつ、手が届きやすい車両価格を実現するなど、ファミリーカーに求められる要素を詰め込んでいるのです。
扱いにくい豪華や必要以上のスペースなどなく、その一方で高い実用性を確保して長距離でも街乗りでも疲れにくいという快適な移動空間なクルマだからこそ、コンパクトトールワゴンが大人気になっているのでしょう。
■トヨタ・ホンダ・スズキを代表するコンパクトトールワゴンとは
では、いま人気のコンパクトトールワゴンを3台紹介します。
●トヨタ「ルーミー」
前述のように、2021年上期の登録車販売ランキングで2位にランクンした「ルーミー」は、ダイハツ「トール」のOEM車。
もともとは、ルーミーと「タンク」というふたつのモデルが存在しましたが、2020年のマイナーチェンジでルーミーに一本化され、タンクのデザインを踏襲したグレードがルーミーに組み込まれました。
ルーミーは全長3700mm×全幅1670mm×全高1735mmと5ナンバー枠に収まるだけでなく、全長の短さもあって最小回転半径はわずか4.6m。軽からの乗り換えでも違和感が少ないこともヒットの要因のひとつかもしれません。
パワーユニットは69馬力の1リッター直3エンジンが主力で、カスタムモデルのG-T系には98馬力までパワーアップした同ターボを搭載。NAエンジン搭載車はFFと4WDが選択できます。
充実した安全装備も魅力となっており、マイナーチェンジで安全運転支援システム「スマアシ」がさらに進化し標準装備化されました。
●ホンダ「フリード」
「リッターカー以上ミニバン未満」の絶妙なポジションで人気モデルとなっているのがホンダ「フリード」です。2021年上半期の販売ランキングではホンダの登録車のなかではトップに君臨しています。
フリードは全長4295mm×全幅1695mm×全高1710mmと、サイズ的にも少し大きい印象がありますが、コンセプトはコンパクトトールワゴンそのもの。ホンダのミニバン「ステップワゴン」と比較して395mm(約40cm)も短い全長を持ちます。
それでいて3列シート7人乗りのフリードは、コンパクトでありながら多人数乗車にも対応。2列シート5人乗りの「フリード+」もラインナップしており、用途に合わせて選ぶことができるのもポイントです。
前述した2019年のマイナーチェンジでクロスオーバー風の「クロスター」も設定され、より一層選択肢が広がりました。
フリードおよびフリード+のパワーユニットは、1.5リッター直列4気筒エンジンと1.5リッターエンジン+モーターを採用したハイブリッドが設定され、どちらもFFと4WDが選択できます。
●スズキ「ソリオ」
スズキ「ソリオ」はまさにコンパクトトールワゴンの元祖ともいえるモデルです。軽トールワゴンのヒットモデル「ワゴンR」の大型版「ワゴンRワイド」の後継モデルがソリオで、現行モデルは2020年に4代目へと進化しました。
全長3790mm×全幅1645mm×全高1745mmのボディは、ワゴンR譲りの2BOXトールワゴンそのもの。
1.2リッターエンジン搭載モデルと、同エンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせたモデルで構成され、FFモデルは1000kgという軽量ボディであることも特徴です。
これによりマイルドハイブリッド搭載車は19.6km/L(WLTCモード)という低燃費を実現しました。
安全面でも抜かりなく、予防安全技術「スズキ セーフティサポート」をさらに進化させ、スズキのコンパクトカーとしては初のカラーヘッドアップディスプレイを採用。
またカスタムグレードとなる「ソリオ バンディット」は往年の「ワゴンRステイングレイ」をほうふつとさせる薄型の吊り上がりヘッドライトが迫力をプラスしています。
軽トールワゴンからの乗り換えはもちろん、一般的なコンパクトカーから乗り換えても満足できる完成度の高さを誇り、安定した人気モデルとなっています。
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軽トールワゴンの弱点を克服したコンパクトトールワゴンは、コンパクトカー市場では定番ジャンルとなっています。
利便性の高さと運転のしやすさにより、毎日乗っても満足度できるコンパクトトールワゴン。その人気はますます高まっていきそうです。