東京都の主要交通網として存在する首都高速道路は、東名や中央道、東北道、常磐道などと接続していますが、なぜ関越道だけはつながっていないのでしょうか。
東京都内や周辺には「首都高速道路」(以下、首都高)が主要交通網として存在します。
首都高は、東京都内へ乗り入れる高速道路のほぼすべてとつながっていますが、唯一「関越自動車道」(以下、関越道)だけは首都高とつながっていません。
1985年10月2日に全線開通した関越道は、東京都練馬区の練馬ICから埼玉県や群馬県を経由して、新潟県長岡市の長岡JCTへ至る高速道路です。
首都高から関越道へ向かうには、いったん一般道路に降りて練馬ICから関越道に入るか、東京外環自動車道(外環道)を経由して大泉JCTから乗るかの主に2択が考えられます。
東名高速道路(東名)、中央自動車道(中央道)、東北自動車道(東北道)、常磐自動車道(常磐道)、京葉道路(京葉道)、東関東自動車道(東関東道)などは首都高とつながっていますが、関越道と首都高をつなぐ動きはないのでしょうか。
実は、関越道と首都高の接続計画がないというわけではありません。
首都高は、関越道との接続計画について、「国が首都圏の道路等の整備に関する事項を定めた『首都圏整備計画』において、中央環状線と関越道を結ぶ『高速練馬線』として、調査を推進する路線に位置づけられています」と説明しています。
首都圏整備計画は、2006年9月に国土交通省によって発されたもので、東京都を中心とした、横浜市や水戸市、宇都宮市など、首都圏の整備に関する総合的な計画となっています。
首都圏整備計画のなかでは、関越道と首都高をつなぐとされる高速練馬線について、以下のように記載があります。
「首都高速道路(中央環状品川線、中央環状新宿線、晴海線)、高速1号線、同練馬線、同都心新宿線、同2号線、同内環状線、第二東京湾岸道路等について事業中の区間の整備を推進するとともに、その他区間の調査を推進する」
首都高も述べているように、2006年に首都圏整備計画が作成された際には、高速練馬線と称して、首都高と関越道をつなぐ計画は確かに推進されていました。
では、なぜ未だに高速練馬線は実現していないのでしょうか。
首都高のホームページでは、高速練馬線の建設について「都市計画等の諸手続がまだおこなわれていません。計画の具体化については、今後、国や東京都によって検討されていくものと考えています」と記されています。
実際に、首都高の広報担当も「現段階では計画の具体化は図られておりません」と話しており、計画から15年経過した現在でも、まだ高速練馬線の建設計画は始動しておらず、今後の動きも未定とされています。
■計画保留に関係しているのは圏央道? 近隣住民の声?
では、高速練馬線の建設計画が進まないのには、どのような背景があるのでしょうか。
本来、高速練馬線が建設されるならば、首都高5号池袋線と江戸川橋付近で分かれて西へ進み、中央環状線と交差して関越道の練馬ICへ至る見込みでした。
しかしそうなると、現状でも交通量の多い池袋線がさらに混雑することが予想され、大きな懸念点となりました。
さらに、1996年には「首都圏中央連絡自動車道」、いわゆる圏央道が開通しており、その圏央道が渋滞緩和に一役買っていることも関係しているといえます。
圏央道は、都心から約40kmから約60kmを広くつなぐ大規模な環状の高速道路のひとつで、東名や中央道、関越道などを結んでいます。
そのため、ユーザーはあえて首都高から複雑な経路を経て関越道へ向かわずとも、圏央道から埼玉県の鶴ヶ島JCTを利用することで、関越道へスムーズにアクセスできるようになっています。
圏央道は渋滞も比較的少なく円滑に走行できるため、混雑のリスクを考えると、新規に高速練馬線を建設する必要性は高くないといえるでしょう。
また、もうひとつ、高速練馬線の計画をストップさせている理由といえるのが、近隣住民の声です。
練馬区が公表する「外環の都市計画変更案に関する練馬区意見(素案)に対する区民等からの意見の概要および区の見解について」によると、区民からは「環境宣言をしていながら、ICを造るのはおかしい」「料金所や坂道部分では排気ガスがまん延する。大泉地区は最悪の生活環境になる」といった環境汚染を心配する声が多く見られました。
さらに、「ICはクルマを呼び込み、逆に交通混雑するのではないか」「交通集中によるデメリットが広範囲にわたる」などといった、渋滞を懸念する意見も挙げられています。
こうした、近隣住民からの反対意見も高速練馬線の計画に動きがない要因のひとつとして考えられます。
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このように、首都高と関越道の接続は、計画そのものはあくまで存在しているものの、進んでいない状態となっています。
今後の計画の推進については、周辺道路の混雑への対応や、近隣住民への適切な説明や理解を示してもらえるような根拠が必要になるでしょう。
計画自体が破棄されているわけではないので、高速練馬線の実現の可能性もゼロではありません。