昨今、日本独自の規格である軽自動車の電動化も進みつつあります。登録車では、電気自動車(EV)のラインナップも増えてきましたが、今後の軽EVはどのようになっていくのでしょうか。
■2022年以降、軽自動車のEV化が加速
電動化が進む昨今、電気自動車(EV)のラインナップも増えてきました。
そんななか、日本独自の規格である軽自動車の電動化も進みつつあります。今後、軽EVはどのようになっていくのでしょうか。
脱炭素社会の実現に向けて、自動車産業では電動化が世界的なトレンドとなっています。
「電動化」という言葉にはハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などが含まれます。
しかし、多くの人がイメージするのは、エンジンを持たず、バッテリーとモーターで動くEVでしょう。
実際、この10年でEVのラインナップはかなり拡大されました。
1000万円を超えるような高級EVが輸入車ブランドからリリースされ、国産メーカー各社も500万円前後のEVを相次いで発表しています。
このように、着実にEVシフトが進みつつある昨今ですが、その一方で多くのユーザーにはまだEVに現実味を感じられないのも事実です。
日本の新車販売のおよそ40%を占めるという軽自動車に、EVという選択肢がほとんどないからです。
日本独自の規格である軽自動車は、ボディサイズやエンジンの排気量が制限されている代わりに税制優遇などが得られるというメリットがあります。
近年では登録車を凌ぐほどのそ装備を持っているものもあり、車両価格は上昇傾向にありますが、それでも200万円以内で購入可能な場合がほとんどです。
多くの人々の生活を支えている軽自動車ですが、それをそのままEV化するのは簡単ではないようです。
EVの性能の多くはバッテリーに依存しますが、現在のバッテリー技術では、ガソリンの軽自動車と同等の航続距離や価格を実現するのは困難といわれています。
これまでも、三菱「アイ・ミーブ」のような軽自動車規格のEVの例もありますが、100km前後という航続距離や200万円を超える価格などから、一般的な軽自動車の代替となることはありませんでした。
また、2021年11月現在、トヨタからは「シーポッド」という軽自動車規格のEVが販売されていますが、最高速度が60km/hの「超小型モビリティ」に区分されるもので、こちらも多くのユーザーがイメージする軽自動車とは異なるものといえます。
そんななか、日産と三菱から軽自動車規格の新型EVが2022年度初頭めどに日本国内で発表することが明らかにしました。
現在の軽自動車と同様のサイズ感で、なおかつ200km程度の実用的な航続距離を実現しているといいます。
もっとも重要となる価格も、補助金などを考慮した上で200万円程度になる見込みとされており、ユーザーから見れば、まさに現在の軽自動車がそのままEV化したと感じられるものになりそうです。
充電環境の整備など、価格面以外の課題は依然としてありますが、それでも多くの人にとってよりEVを身近に感じられるようになることは間違いないでしょう。
■増える軽EVのラインナップ、各社の動向は
日産と三菱の例を皮切りに、日本の軽自動車規格のEVは加速していくことが予想されます。
例えば、軽自動車を主力商品とするスズキは、補助金込で実質100万円台で購入可能なEVを2025年頃までに発売することが報じられています。
ダイハツも、軽自動車の電動化を進めているといいます。
ただ、ダイハツの場合は一足飛びにEV化するのではなく、まずはEV走行も可能なHVを2023年頃に販売する見込みで、航続距離や価格などの実用面からの判断といえるでしょう。
一方、2040年までにEVおよびFCV専業メーカーになることを宣言しているホンダですが、2021年4月23日に「2024年に軽自動車のEVを投入する」と宣言するなど、軽自動車規格のEV市場に動きが見えていました。
実際に、電動化が進むと、既存の軽自動車とは異なる新しいクルマ(モビリティ)が登場することが予想されています。
また、前述のシーポッドや、出光興産とタジマによって設立された出光タジマEVも、2022年中に小型EVを発表するとしています。
これらのEVは、超小型モビリティに属するものであり、現在販売されている一般的な軽自動車と同等に考えることはできませんが、多くのユーザーの日々の移動を支えるという点においては、活用される余地は十分です。
また、利用方法が限定されやすい商用車のほうが、電動化は早く進むと考えられています。
実際、トヨタ、ダイハツ、スズキは軽商用EVの開発を共同で進めており、乗用車よりも早いタイミングでリリースされる見込みです。
さらに、中国系EVメーカーであるHWエレクトロは、2021年11月に軽自動車規格の商用EV「エレモ」を発表しており、軽商用車の電動化が活発化しています。
現在ではまだ一般的とはいえない軽自動車規格のEVですが、2022年以降、超小型モビリティも含めてさらにラインナップが拡大する見込みです。
航続距離や充電インフラなどの課題は残りますが、それでも多くのユーザーにとってより「電動化」が身近になることでしょう。
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小型EVのメッカである中国では、日本円にして100万円以下のものも多く登場しています。
もし、そうしたEVが日本へ導入されたら、既存の自動車メーカーにとっては脅威となります。
軽自動車という日本独自の規格ですが、EVの時代は世界と戦わなければならなくなるかもしれません。