巷では、「年度末になると道路工事が多くなる」というイメージが存在します。では、ホントに道路工事は年度末に集中しているのでしょうか。
■実はかなり少ない年度末の道路工事 その理由とは
路面の舗装やインフラ整備のために必要不可欠ともいえる道路工事。
SNSでは道路工事について「年度末に多い」というイメージを持つ人が多いようです。
実際に年度末は道路工事が多くおこなわれているのでしょうか。
道路工事は、路面の舗装をはじめ、水道・ガスなどのライフライン整備のためにも必要不可欠ともいえる重要な工事です。
その一方で、道路工事がおこなわれると、車線が制限されたり、一時通行止めになったりと、道路の利用が制限されることもあります。
そんな道路工事ですが、SNSでは「年度末なのに今年は道路工事見かけないな」「年度末にかけて道路工事って増えるよね」というように、「年度末に多い」というイメージを持つ人が多いようです。
また、その理由については、「年度末に道路工事が多いのは予算消化のためって本当?」「道路工事は年度末で予算使い切らないと来年度分の予算が減るらしい」「工事計画自体が年度末に終わるように作成されているからでしょう」というようにさまざまな憶測が見られます。
とくに、「予算消化」と「工事計画」が関係していると考えている人が多く見られますが、実際にそうした理由から道路工事は年度末の実施が多いのでしょうか。
国土交通省の道路局担当者は次のように話しています。
「実際のところ、年度末に道路工事は決して多くありません。
たしかに昔は道路工事が多くおこなわれていましたが、現在は削減に努めており、全体的にかなり少なくなっています」
国土交通省が公表している「令和元年度 全国の直轄国道における月別の路上工事時間」では、もっとも工事が多い11月の23.5万時間に対して、年度末である3月は9.6万時間しか工事がおこなわれていません。
これは、2019年の1年間を通してみても、1年で1番少ない工事時間となっており、「道路工事は年度末に多い」というユーザーのイメージを覆す結果といえるでしょう。
■全体の道路工事も縮減 工事を減らす背景にはさまざな取り組みが
前出の国土交通省担当者が話すように、全体の工事時間も過去に比べて、現在では大幅に削減されています。
国土交通省が公表する「全国の直轄国道における道路管理延長あたりの年間路上工事時間」によると、2002年に比べ、2019年は約57%も道路工事の時間が減っています。
では、17年間で50%以上もの工事時間を削減できた背景では、どのような取り組みがなされているのでしょうか。
国土交通省の近畿地方整備局はホームページで、道路工事を縮減するためのさまざまな取り組みを紹介しています。
まず挙げているのが、各関係機関との綿密な計画調整です。道路の掘り返しをなくしたり、最小限にするために、警察、道路管理者、ガス・水道などの事業者の3者が計画について協議します。
また、ガス・水道などのライフライン整備を最小限かつ円滑におこなうために、「共同溝」を地下に設置しています。
この共同溝にライフラインの各基盤を埋め込むことで、掘り返す箇所を道路の1点に集約させます。
同様の原理で、電線類の一部も地下に埋め込まれています。
これは、電柱を減らして街の景観を良くするとともに、そのぶん道路を広くとれるため、災害時の避難経路の確保にもつながります。
さらに、工事期間も関係機関で合わせることで、同じ区間の工事を同じ期間に一斉におこない、期間が短くなるようにしているようです。
工法も工夫しています。地上ではなく、「推進工法」といった地下で工事をおこなう方法を採用し、道路の規制を最小限におさえています。
このように、道路工事も日々進化しており、工事時間の短縮はもちろん、ユーザーに負担がかからないよう、工事の方法も工夫されています。
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国土交通省のホームページでは、道路工事の情報を配信しており、車線規制や通行止め、対面通行などの規制内容を確認できるようになっています。
普段よく利用している道路でも、道路工事によって交通状況が変化していることがあるため、あらかじめ工事の状況を把握し、時間に余裕を持って行動するように心がけましょう。