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ヘッドライトの黄ばみやくすみの原因は? ゴシゴシ削っちゃダメ!? 黄ばみを除去する正しい方法

くるまのニュース 2021年12月10日 9時10分

クルマのボディはきれいな状態を保てても、樹脂製品やゴム製品の経年劣化は避けられません。とくに目立つのがヘッドライトのカバーで、いわゆる黄ばみや白ボケが発生してきます。そこでヘッドライトの黄ばみやくすみを取り除くための正しい工程をプロに聞いてみました。

■黄ばみの原因はPC樹脂の劣化が原因!?

 日々の洗車やコーティングなどでクルマのボディはきれいな状態を保てても、樹脂製品やゴム製品の経年劣化はなかなか避けられないものです。

 とくに目立つのがヘッドライトのカバーです。直射日光に含まれる紫外線で表面が劣化して黄ばみや白ボケが発生し、目が古ぼけた印象になってしまいます。

 見た目の問題もさることながら、ヘッドライトカバーの黄ばみやくすみが進めば光量が足りず、車検に通らなくなる可能性もあります。

 ヘッドライトカバーはなぜ黄ばんだりくすんだりするのでしょうか。

 これは、使われているポリカーボネート(PC)樹脂の経年劣化が原因です。

 このPC樹脂はガラスより強度があり、成形しやすく破損時にも飛散しにくいという特徴がありますが、日光に含まれる紫外線に弱く、細かい傷もつきやすいという弱点があります。この無数の傷に汚れが溜まり、黄ばみになっていくとされています。

 また、輸入車では「クラック」と呼ばれる表面のひび割れの一種が発生することが多く、これはヘッドライトカバーに塗られたハードコート皮膜が日本特有の湿度や紫外線、寒暖差で劣化することで発生。くすみというより、まるで強烈な砂嵐にあったかのような傷ができてしまうことがあります。

 なお、クラックは国産車で発生することは少なく、欧州で作られたパーツやハードコート皮膜が日本の気象状況に適合していないのが大きな原因といわれています。

 そしてこの黄ばみやくすみ、クラックを除去する方法としてポピュラーなのが研磨です。傷が目立たなくなるまで表面を削っていく作業ですが、これはボディにできた傷と考え方は一緒です。

 ただし、塗装されたボディより、無色透明なヘッドライトカバーのほうが作業はより丁寧におこなう必要がありそうです。

 そこで今回は、神奈川県の整備工場に勤務する整備士のEさんに、プロはどんなことに気を遣いながら作業しているのか、上手に仕上げるためのコツなどがあるのかについて聞いてみました。

「ヘッドライトカバーの黄ばみを研磨する前に、洗剤で汚れをどこまで落とせるか試してからでもいいと思います。

 意外に効果的なのは家庭用のオレンジオイル配合の洗剤で、この黄ばみ成分には油分が含まれていることもあり、オレンジオイルに含まれる『リモネン』という成分が油脂を吸着させる働きがあります。

 研磨するに前に汚れを落とす必要があるので、ぜひ試してみてほしいです」

 ちなみにカーグッズ量販店などで販売されている「黄ばみ落とし」を使ってみても思ったような効果が得られず、諦めたという人も多いのではないでしょうか。市販の黄ばみ落としは効果が弱いのでしょうか。

「確かに効果はあまり強くないかもしれませんが、それは一度で研磨されすぎるのを防ぐ狙いがあると思います。

 一般の方はどうしても一度の作業で結果を求めがちですが、我々でも少しずつ手探りで何度も繰り返し作業しています。

 研磨して表面を削るのですから、できる限り最小限にとどめたい。そのためには何度も少しずつ仕上げていくという気持ちで作業してほしいです」(整備士 Eさん)

■黄ばみ除去の正しい手順とは?

 ヘッドライトの黄ばみ・くすみ・クラック除去はどのような手順で作業したら良いのでしょうか。

 よく聞くのは、ヘッドライトカバーを耐水サンドペーパーで磨く方法ですが、整備士のEさんは耐水ペーパー使用に否定的だといいます。それはなぜでしょうか。

コンパウンドは目の細かいものから順に番手を上げていき、また細かくしていくことで仕上がりが違う

「耐水ペーパーを使用すると不必要な分まで削ってしまうことが多いんです。何度も補修経験があるプロなら問題ありませんが、一般の方ではなかなか上手に削れないと思います。力が入りすぎて、新しい傷を作ってしまう危険性が高いです」

 そこでEさんがおすすめするのは、コンパウンドによる丁寧な磨き作業です。それも数種類のコンパウンドを使い分けつつ、常に状態を確認しながらの作業がおすすめだといいます。

「コンパウンドを使用するときは、ボディの傷を処理するのと同じ手順で、目の細かいものから順番で使用してください。

 いきなり粗めのコンパウンドを使うと表面に不必要な傷を作ってしまう可能性もあるので、1番目の細かいコンパウンドを使用し、傷が消えないなと思ったら次の番手、それでも消えなかったらその次の番手という順序で、徐々に研磨力を高めていく必要があります。

 適正な粗さのコンパウンドで表面を均一にして傷が目立たなくなったら、今度は順番に細かいコンパウンドで仕上げていきます。この丁寧な作業で仕上がりが違ってきます」

 とくにヘッドライトカバーはクリアさが求められるだけに、雑な作業はNG。しかしコンパウンドだと思ったように削れないため、根気も必要そうです。

 また、コンパウンドを使用する際にはボディやバンパー、フロントグリルなどに付着すると傷が付いてしまうため、入念なマスキングを施すことも大事です。

「傷をある程度目立たなくして細かいコンパウンドで仕上げたあとは、必ずコーティングする必要があります。

 表面に施されていたハードコーティングの皮膜を削ってしまっているので、新たな皮膜で保護しないとすぐにまた黄ばみやくすみができてしまいます」(整備士 Eさん)

 研磨後に放置したままだと、半年もしないうちに新たな黄ばみやくすみが発生してしまうため、市販のシリコン系コーティング剤、またはガラス系コーティング剤で保護すると良いそうです。

「ボディ用コーティング剤は耐久性も短く、せいぜい半年程度ですが、洗車時に忘れずにコーティング剤を塗布してあげれば数年は持つと思います」(整備士 Eさん)

 半年以上の耐久性を求める場合は、表面を「クリア塗装する」という方法もありますが、それでも2年程度が限界なのだとか。要はこまめなメンテナンス作業も必要だということです。

 また、最近ネット見かける、家庭用洗剤を洗車やメンテナンスに使用するのは本当に大丈夫なのでしょうか。

 クルマ用洗剤よりも安価で入手しやすい家庭用の研磨剤入り洗剤などで、ヘッドライト磨きができれば手軽です。浴槽用の研磨剤入りクリーナーが使えるという話も聞きますが、実際はどうでしょう。

「使用している素材が似通っているものも多く、研磨する原理も同じなので、基本的に代用はできると思います。

 ただ、ヘッドライトカバーの研磨に関しては、家庭用クリーナーではどれだけの細かさの研磨剤が配合されているかが判断しにくいので、目立たないところで試してからのほうがいいと思います」(整備士 Eさん)

 いきなり全体をやってしまうと、失敗した場合はヘッドライトカバーを新品に交換する必要が出てきてしまということで、やはり慎重に作業する必要があります。

※ ※ ※

 ちなみに、プロに頼んだときの費用は、傷の除去までなら片側で5000円以内。これにコーティングかクリア塗装をするかで値段が変わってくるのですが、両方合わせると1万円+αというところです。

 新品のヘッドライトカバーに交換できるケースでは車種によって値段が変わりますが、部品代+工賃1万円前後が目安となりそうです。

 しかし、ヘッドライトカバーの交換ができない構造のクルマが多く、新品のヘッドライトユニットに交換すると、片側でも数万円の出費を覚悟しなければなりません。

 根気と手間はかかりますが、交換を検討する前に、一度研磨にトライしてみるのも良いかもしれません。

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