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ダイハツ「ロッキー」&トヨタ「ライズ」に待望のHV追加! 走りも燃費も「お値段以上」!?

くるまのニュース 2021年12月11日 14時10分

コンパクトSUVの人気モデルであるダイハツ「ロッキー」・トヨタ「ライズ」にハイブリッドモデルが追加されました。一体どのようなモデルなのでしょうか。

■エンジンが発電する「シリーズハイブリッド方式」を採用

「流行のクロスオーバーSUVに乗りたいけど、運転しやすいコンパクトなサイズがいい」、そんなユーザーの本音を形にしたモデルが、ダイハツ「ロッキー」とトヨタ「ライズ」です。

 2019年11月の登場から2年、初の改良が実施されました。注目されるのは、良品廉価な電動化パワートレインを目指した「eスマートハイブリッド」の追加です。

 昨今クルマの電動化は著しいですが、アフォーダブルな価格で販売されるコンパクトカーは費用対効果が出にくいのも事実です。

 むしろ「小さくて軽い」クルマにしたほうがCO2排出量低減効果はあるといわれており、実際にダイハツ「ミライース」のCO2排出量はハイブリッド車にも負けず劣らずの数値です。

 しかし、カーボンニュートラル時代に向け、さらなるCO2低減のためには「コンパクトモデルも電動化は必須」という判断から、eスマートハイブリッドを搭載したロッキー・ライズが開発されたといいます。ただし、「価格は抑えて」という制約のなかでです。

 ちなみにダイハツの電動車開発の歴史は古く(1960年代から)、2005年に「ハイゼット・ハイブリッド」を発売。

しかし、販売価格の高さ(211万円)から普及には至らなかった反省から、今回はトヨタグループのメリットを用いて良品廉価なシステムを開発しました。

 そのシステムを簡単に説明すると、エンジンで発電した電力でモーターを駆動させる「シリーズ式」を採用。

 発電用エンジンは新開発された直列3気筒1.2リッター(82馬力/105Nm)で、駆動用モーターは106馬力/170Nmを発揮。

 リアシートクッション下に配置されるリチウムイオンバッテリーは0.73 kWhから0.74kWhの容量となっています。

 気になる重量はガソリン車から80kgから90kg増で、eスマートハイブリッドはまさにコンパクトモデルに最適なシステムといっていいでしょう。

 電動車のメリットである給電機能も抜かりなしで、ディーラーオプションながら最大1500Wまで使えるAC100Vアクセサリーコンセントを用意しています。

 今回は東京都内中心部の一般道と首都高速で試乗をおこないました。その印象を一言でいうと、「電動車らしさ」と「電動車らしからぬ」が良い意味で共存した走りです。

 もう少し具体的に説明していきましょう。

「電動車らしさ」という部分は、モーター駆動特有の発進時の応答性の良さや滑らかなフィーリングといったドライバビリティ、そして電動化のよる重量増を感じさせないどころか余裕を感じる力強さという点です。もちろんバッテリーの残量があれば約40kmまでEV走行も可能です。

 さらに加減速の調整をアクセルペダルで可能にする「スマートペダル(S-PDL)」も用意。

 スマートペダル機能をオンにするとリズミカルに運転はできますが、アクセルを離したときの減速感はメリハリがあるので上手にアクセルコントロールしないと乗員が揺すられる恐れがあります。

 じつは、オフ時でも緩い減速Gが出る設定になっていますが、減速度が少なめながらも滑らかで自然な制御になっており、個人的にはオフで十分かなと思いました。

 逆に「電動車らしからぬ」部分はエンジンが意外と主張している点です。

 バッテリー容量が少ないので発電のために頻繁にエンジンが始動。同じシリーズハイブリッド方式を採用する日産の「e-POWER」はエンジンの存在をできるだけ隠そうとしているのに対し、ダイハツのeスマートハイブリッドは発電中にエンジンがかなり主張します。要するに、車内に入る音はそれなりに聞こえるということです。

 ただ、振動を上手に抑えた上にさり気なくエンジン始動をするので嫌な感じはしません。

 逆にエンジン始動時はアクセル開度に応じてエンジン回転を上手に高める制御で、アクセル開度(50%くらい)までのフィーリングは普通のガソリン車に近いです。

 eスマートハイブリッド搭載車の気になる燃費は、一般道や首都高速を交通の流れに沿って走って28km/Lから29km/Lを記録しました。

■HV、自然吸気、ターボという3つのエンジンをラインナップ

 シャシ側は、もともとロッキー/ライズが用いるDNGAは電動化を視野にいれた設計だったため変更は最小限で、システム搭載による重量増に対応するために、アンダーボディやバルクヘッド周りに補強をプラス。

 これに加えてサスペンションの最適化や、エンジン回りや床下を中心に遮音材/制振材の最適配置などもおこなわれています。

新開発の1.2リッターエンジンを搭載するダイハツ「ロッキー」

 その印象は、ガソリン車で「もう少しこうだったらいいのに…」という部分が解消。具体的にはステアフィールが、とくに中立付近のシッカリ感が増しているのと、操舵初期に上屋がグラッと傾くような動きがなくなっていました。

 この辺りは電動化により重量が増したことによるタイヤの接地性アップや、低重心化や重量バランス改善などが効いているのでしょう。

 快適性も実用域で突っ張った印象が薄れただけでなく、むしろ重さを活かしたシットリとした足の動きで快適性も高められていました。

 価格(消費税込)は通常仕様の「X HEV(2WD)」が211万6000万円、上級仕様「プレミアムG HEV(2WD)」が234万7000万円と、ガソリン車+30万弱となっていますが、個人的には「おっ、値段以上」の価値がプラスされており、まさにニトリのような一台だと感じました。

 電動車の投入に慎重だったダイハツが満を持して投入するeスマートハイブリッド、今後は軽自動車への展開もおこなわれる計画なのでそちらも楽しみです。

 ちなみにeスマートハイブリッド追加に合わせて、ガソリン車のエンジンラインナップも刷新され、FFモデルは同じ直列3気筒ながら1リッターターボが1.2リッター自然吸気に変更。

 1.2リッター自然吸気の「WA-VE型」エンジンは、高速燃焼/燃料の微粒子化促進/効率的なヒートマーネジネントをおこなう構造などにより、87馬力/113Nmのパフォーマンスに加えて全領域で熱効率を大きく向上。

 燃費(WLTCモード)は20.7km/Lと1リッターターボ(17.4km/L)を軽く上回ります。ちなみに4WDモデルは1リッターターボが継続されます。

 個人的には1リッターターボはポテンシャルが高いと評価していたので、今回のエンジン変更は残念に思っていましたが、実際に乗ったら「そりゃ、こんなエンジンできたら替えるよね」を実感。

 実用域のトルクの太さとトルクバンドの広さは1.2リッター自然吸気とは思えないレベルで、D-CVTの巧みな制御も相まって、1リッターターボが完全に霞んでしまうような出来栄えです。

 しかし1リッターターボのように高回転までストレスなく軽快に回るような爽快感はなくなっていますが、クルマのキャラクターや用途を考えると、「日常領域ベスト」のこのエンジン特性は間違っていないと思います。

 1.2リッター自然吸気の気になる実燃費は、一般道・首都高を流れに沿ったペースで走って18km/Lから19km/Lを記録。1リッターターボの実用燃費はあまり褒められる数値ではなかったので、大きな進歩だといえそうです。

 今回はパワートレインの刷新に加えて、装備/機能の充実化も実施。上級グレードに電子パーキングブレーキ(オートブレーキホールド)の採用、「タフト」から採用された新ステレオカメラの水平展開による予防安全機能の性能アップ、新色(スムース・グレーマイカメタリック)の追加などもおこなわれています。

 個人的には電子パーキングブレーキ採用でACCが全車速追従式になったのは嬉しいもののその制御はかなり粗く、前方車両の認識が遅いのでカックンブレーキになりがちなのが気になりました。

 この辺りはカメラの認識力ではなく制御の問題とのことなので、さらなる進化に期待したいと思います。

 eスマートハイブリッドと新開発の1.2リッター自然吸気エンジンは、ロッキー/ライズの魅力をさらに引き上げる「強い武器」といえるでしょう。

 販売面ではこれまでもロッキー/ライズを足すと常にトップ5に位置する販売台数を記録していましたが、今回の進化でさらに伸びるのは間違いないです。

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