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トヨタの「秘策」新ビジネスが始動! 新車工場でリフォームも!? KINTO社長が描く「新しいクルマの売り方」とは

くるまのニュース 2021年12月29日 19時10分

トヨタとKINTOが新サービス「KINTO FACTORY」を始めます。サブスクサービスで知られるKINTOが“第二のステージ”に乗り出すことになりますが、小寺社長はどのような展望を描いているのでしょうか。

■肝は中古車のリフォーム

 トヨタとKINTOが2022年1月下旬から始める新サービス「KINTO FACTORY」に、自動車業界の注目が集まっています。

 主なサービス内容は、「アップグレード」と「リフォーム」です。

 アップグレードは、インテリジェントクリアランスソナーやブラインドスポットモニターの後付けなど、運転支援に関する装備を最新化するサービスです。

 こうした事業は一部、すでにトヨタ販売店でも取り扱っていますが、近い将来に「KINTO FACTORYの事業として一本化を目指し、合わせてサブスク化に持っていきたい」(KINTO小寺信也社長)といいます。

 もう1つのリフォームについては、日系自動車メーカーのみならず、世界的にみても前例がほとんどないビジネスで、トヨタとして新たなるチャレンジとなりそうです。

 今回の発表では、リフォームの具体的なメニューとして、シート表皮やクッション部分、ステアリングホイールの本革への交換など、作業工程や作業時間が比較的短いものを挙げています。

 一方で、こうしたKINTOが関わるリフォーム事業が多岐にわたる可能性があることを、トヨタ自動車側がすでに示しています。

 実は2021年6月11日にトヨタが開いた「未来を拓く大切なものづくり」というオンライン発表会で、チーフ・プロダクション・オフィサーの岡田政道氏が示唆していました。

 KINTO事業で取り扱う中古車について「中古とは思えない質感、あるいは他にはない外観や内装の提供など、お客さまにとって自分だけの1台をお届けする」として、既販車に対するリフォームとパーソナライズについて触れています。

 その際の質疑応答の中で、新車の生産ライン工場に既販車を持ち込んでリフォーム作業などを行う可能性についても指摘しました。

 今回の発表会見で、この点についてKINTOの小寺社長に質問したところ、「(今回提示したようなアイテムは)ユーザーにとって販売店で取付作業をすることの利便性が高い」とした上で、将来的には「大がかりなものについては、トヨタが全国各地に持つサービス分室に持ち込む。または、新車の製造工場内に専用のサブラインを設置する可能性がある」とさまざまな可能性を示しました。

 自動車産業の常識としては、新車を最終組立工場から販売店向けに出荷し、販売店からユーザーに新車が届いた後、そのクルマが自動車メーカーの工場に戻ってくることは基本的にありませんでした。

 年式がかなり古いビンテージカーの領域では、ドイツのメルセデス・ベンツや、日本ではマツダがメーカーによるレストアサービスをおこなっています。一方で、KINTO FACTORYの場合、想定しているクルマは新車販売から10年前後までが主体となるため、単なるレストア事業ではない、まったく新しいビジネス領域と考えるべきだと思います。

 2022年1月下旬のサービス開始時点では、対象車種はトヨタ車が「アクア」「プリウス」「プリウスα」「アルファード」「ヴェルファイア」の5車種、レクサス車が「UX」「NX」の2車種とし、施工店舗はトヨタ車がトヨタモビリティ東京(芝浦店、U-Car荒川店、U-Car足立島根店)とトヨタユーゼック(カーロッソ浜松)、レクサス車がトヨタモビリティ東京(レクサス荻窪、レクサス東京ガレージ荻窪)の6店舗に絞ります。

 小寺社長は「全く新しいサービスであり、まずスモールスタートで顧客ニーズを精査することから始める」とし、状況に応じて今後、展開する車種、アイテム、地域を適宜拡大する予定だといいます。

 また、KINTO FACTORYはまず日本でスタートし、将来的には海外展開も視野に入れていると説明しました。

■「KINTO ONE」とはまったく別物

 さて、KINTOというと、2019年3月に始まった新車のサブスクリプションサービス「KINTO ONE」がありますが、「KINTO FACTORYと、KINTO ONEはまったく別物」(小寺社長)という解釈です。

 そもそもKINTOは、トヨタの豊田章男社長が小寺社長にいった「新しいクルマの売り方を考えろ」という命題を解くための、トヨタにとって新たなチャレンジの総称という位置付けなのです。

「KINTO FACTORY」は2022年1月下旬に開始予定

 自動車産業界を見ると、「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリングなどの新サービス、電動化)と称される要素や技術を原動力として、販売のあり方の変革が世界レベルで起きています。一方で、消費者のニーズとしては、クルマをもっと気軽に楽しみたいという側面があります。

 なかでも、トヨタにとって課題の1つは、クルマ所有者の高齢化です。それに対してサブスクとしてKINTOは着実な実績を上げています。

 KINTOによると、2019年の3月(サービス開始)から12月末までの契約件数は約1200件とKINTO関係者が想定していた数に大きく及びませんでした。

 それが2020年にはプランの追加や対象車種を拡大したことで、契約件数は累計約1万2000件と前年比で10倍近くへと躍進。さらに若者層に向けた宣伝広報活動なども強化し、2021年11月末時点で契約数は累計約2万8000件と大きく伸びています。

 背景として、新たに導入した7年プランが好調なことを挙げました。

 また、契約者の内訳を見ると、これまで一度もクルマを所有していない人が4割強、またトヨタ以外のメーカー所有者が2割程度と、トヨタ車を乗り継ぐ傾向が強いこれまでのトヨタユーザーの傾向とは明らかに違うユーザー層を獲得できています。

 さらに、年齢層についても20代と30代が合わせて4割超となっており、トヨタの思惑と合致します。

 その他、2020年4月から、モビリティサービスを「ことウリ」として提供する「モビリティ・マーケット(モビマ)」を開始。契約企業は約50社、プログラムは約110に及び、なかでもキャンピングカーレンタルやオフロードコース体験などが人気アイテムといいます。

 また、KINTOの契約者同士でクルマをシェアする「わりかんKINTO」も好評とのこと。

 さらに、今後強化する分野としては、ユーザーの運転特性に合わせたソフトウエアのパーソナライズについても、できるだけ早期の実用化を目指すとしています。

 KINTO誕生から約3年。KINTO FACTORY登場でKINTOは「多くの人たちがクルマの楽しむことができる新しいプラットフォーム」を目指して、事業としての第二ステージへと進化します。

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