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「グリルにしめ飾り」が新年の定番だった!? いまでは消滅した「クルマの年末年始」3選

くるまのニュース 2022年1月1日 16時10分

昭和、平成、令和と移り変わるにつれ、さまざまな伝統が消えつつあります。クルマにまつわる風習も時代とともに変化していますが、かつて年末年始に定番だった事柄もいつの間にかなくなったものがあります。

■かつてのクルマの「年末年始の風習」にはどんなことがあった?

 月日が経つのは早いもので、「年末年始の風習」と思っていたことが、いつの間にか昔のことになっていたり、全国的なことが一部地域のことになってしまっていたりします。

 良い例が、「凧あげ」ではないでしょうか。「凧あげは電線のないところで」「凧が電線に引っかかったら電力会社に連絡する」といっていたのも昔の話。

 今や凧あげは一部地域のお祭りだけになってしまいました。

 クルマにまつわる風習もいつの間にかなくなってしまったことがあります。クルマ関係の年末年始の風物詩にはどのようなものがあったのでしょうか。

●クルマを洗車してしめ飾り

 新年を祝うために、大掃除の後に門松としめ飾りを飾っていました。クルマも家の大掃除のついでに洗ったものです。

 そして洗車の後、ラジエーターグリルには「しめ飾り」を装着します。クルマ用のしめ飾りは玄関用しめ飾りと一緒に、街かどに出来た臨時の店舗で購入しました。

 そして年始になると、今度は初詣で交通安全のお守りやお札、そしてクルマの後部に貼る「交通安全ステッカー」を購入。

 お守りはフロントガラスに吸盤で張り付けたり、ウインカースイッチなどにぶら下げたりしたものです。

 交通安全ステッカーはテールランプ近くに貼るのですが、隙間なくずらっと貼り、かえって危険なクルマもありました。

 しかし、いずれも過去の風景になりつつあります。

 しめ飾りは、平成の初め頃から欧州車風スタイルのクルマが増えて似合わなくなってきたことや、構造上装着が困難なクルマが登場したことなどから、徐々に減少してしまいました。

 そして現在のクルマのフロントグリルエンブレム裏には、衝突被害軽減ブレーキ装置用のミリ波レーダーが装着されており、しめ飾りの装着はお勧めできません。

 また、EVはフロントグリルがなかったり、充電口が装着されている場合があるために、しめ飾りを装着することはできなくなっています。

■いまでは消滅! 暴走族の初日の出暴走とは?

●初日の出暴走

 1970年代後半に社会問題となった「暴走族」は、一時減少していました。ところが1990年代初めに景気が悪化した頃、再び「初日の出暴走」が社会問題となりました。

 大みそかから元旦にかけて、暴走族が高速道路を低速で走行したり、料金所を突破するなど、通行を妨害する行為を当時マスコミが報道しました。

1990年代に「初日の出暴走」が社会問題化

 例えば関東では、中央自動車道の初日の出暴走が有名でした。

 彼らは八王子インターチェンジや談合坂サービスエリアを事実上占拠。初日の出を狙い、富士五湖方面を目指して低速で走行するのです。

 このとき暴走族は、渾身の力を込めて改造したクルマで乗り付けます。

 改造のポイントとして、サスペンションのスプリングを外して車高を大幅にダウンしたり、フロントバンパーには大型のチンスポイラー、通称「出っ歯」を装着。ダミーのオイルクーラーを装着し、フロントマスクをいかつくします。

 リアは、マフラーを外して大きな排気音を出し、さらにクルマの左右からは後方斜め上方に向かって、煙突のように複数の管を出した「竹やりマフラー」を装着したものもいました。

 ボディカラーは派手な色で、なかには屋根を切ってオープンカーにしてしまう者すら現れました。

 当然、保安基準などどこ吹く風です。これらのクルマは、暴走の後には廃棄することを前提に、これらの改造車を製作していたようです。

 暴走行為はテレビの警察スペシャルなどで度々取り上げられ、彼らの活動は年々エスカレート。

 そして高速道路のマヒは帰省する人の足や物流網も止めてしまうことから、当然、警察による対策がおこなわれました。

 当初は不正改造に対する検挙しかできなかったようですが、その後低速での暴走行為の取り締まりが強化出来るようになり、2000年代半ば頃には沈静化していったのです。

●小売業と初売り渋滞

 小売業では、いつの間にか元旦初売りが一般的になっていました。

 1990年代に住宅展示場が家族の来場を促すために元旦オープンしたのが由来といわれていますが、自動車販売店も大みそかまで営業したり、2日から開店するようになっていました。

 これは年末年始でもユーザーのクルマの故障に備え、家族連れでの来場を狙っていたのです。

 また、1980年代の「一億総中流」時代は、初売りには公共交通機関で開店前に駆け付け、開店と同時に各売り場に走って福袋を購入。店内階段で仲間と物々交換する風景が見らました。

 都市部のデパートでは、初売りで購入したものや福袋を積むためか、駐車場にはクルマの列が長々と出来ました。列には輸入車や高級車などが多数いて、富裕層の都市集中を感じさせたものです。

 このように、元旦に高級車でデパートに行き、悠々と買い物をすることは、平成の一種のステイタスだったのかもしれませんが時代は変わりました。

 今や、福袋は年内にネット予約して年始に宅配で受け取れます。年始にクルマでデパートに行って買い物をすること自体が、古い行動になったようです。

 自動車販売店も、大みそかまで営業しても補修部品が流通していないので、結局修理はできません。

 さらには、自動車保険付帯のロードサービスも一般的になったことから、自動車販売店は必ずしも年末年始に営業する必要はなくなりました。

 しかも昨今の自動車整備士不足から、整備の需要が少ない日は店休日とし、整備士の生活を守る方向へと変わってきています。

 その結果、多くの小売業は少なくとも元旦、または三が日は休む傾向になり、「お店もお客もお互いさま」の傾向が強まっていきました。

※ ※ ※

 クルマを中心とした年末年始の状況が変化しはじめたのは2000年代前半頃で、しめ飾りが消え、クルマを大切にしない人は洗車すらせず、初日の出暴走が報道されなくなりました。

 そのうちに「若者のクルマ離れ」が報じられるようになるなど、時代とともにクルマとの関わり方も変化しているようです。

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