ダイハツは軽商用車「ハイゼットカーゴ」「アトレー」を17年ぶりにフルモデルチェンジ。こまかな部分までこだわる背景には「軽No.1」の称号がありました。
■軽ナンバーワンの積載量! 新型「ハイゼットカーゴ」のこだわりとは?
2021年12月20日、ダイハツは「ハイゼットカーゴ」、「アトレー」を17年ぶりにフルモデルチェンジ。さらに「ハイゼットトラック」をマイナーチェンジしました。
そのなかで、新型ハイゼットカーゴのカタログを見ると、荷室サイズを説明するページには「軽No.1」という表記が並びます。
全長や全幅の寸法が決まっている軽自動車にとって室内を広げることは容易ではありませんが、新型ハイゼットカーゴはそれを実現したのです。
実際の寸法を見ていましょう。新型ハイゼットカーゴの荷室の数値は以下の通りです。
●2名乗車時の荷室長1915mm(1910mm)
●2名乗車時の荷室床面長1965mm(1955mm)
●4名乗車時の荷室幅1410mm(1385mm)
●荷室高1250mm(1240mm)
カッコ内はガチンコライバルであるスズキ「エブリィバン」の数値です。
いずれ新型ハイゼットカーゴのほうが上回っています。つまり荷室の“長さ”“幅”そして“高さ”のいずれもクラス最大というわけです。
気になるのは、車体サイズの上限が決まっている軽自動車でどうやって室内寸法を広げたのかということでしょう。
まずは、車体をスクエア化したことです。
真正面や真後ろから見ると、新型モデルは先代モデルに比べて車体の側面が垂直に近いことが分かります。
上部の絞り込みをなくした、より“箱”に近い車体としました。
これは上記で示した荷室の広さの基準となる数値には現れませんが、荷室空間の広さは確実に増しています。
そのうえで、横方向は荷室幅を広げるために壁を薄くしているのがポイント。
新型モデルでは後席サイドウインドウの上下昇降機構が上級タイプの「アトレー」でも省かれていますが、それは上下昇降のための機構を排除してまでも壁を薄くするためなのです(フリップ式の開閉機構をアトレーに標準採用しカーゴの上級モデルにオプション設定)。
また、それは壁を薄くするだけでなくパワーウインドウスイッチや窓を上げ下げするハンドルを無くすことで、壁から突起をなくしてフラットにする意味も含めても選択。こだわりはそこまで徹底しているのです。
長さ方向に関しては、荷室長を増やすためにおこなったのがテールゲートを薄くすることで、テールゲートの厚みを削れば、そのぶん前後空間が広がるという理屈です。
先代モデルと新型モデルを見比べれば一目瞭然ですが、先代モデルはテールゲート左右の角を削っているのに対し、新型モデルはほぼフラットで平面的。これもテールゲートを薄くするための工夫のひとつです。
また、新型はこれまでリアウインドウの下に組み込まれていたリアワイパーがリアウインドウ上の装着となりました。
何を隠そう、これもテールゲートを薄くするためのアイデアで、ワイパーを動かすためのモーターはテールゲートを厚くする要素となります。
だから、そのモーターを荷物積載の邪魔になる高さではなく、天井に近い高い位置とすることでわずかとはいえテールゲートの厚みを削っているのです。
さらに、荷室には寸法には現れない工夫も。ドア昇降機構がなくなったことで壁の出っ張りがないといいますが、同様の工夫は床面にもあります。
シートは倒したときに、それを倒すためのロック解除レバーなどが床面に出っ張らないように配慮。
そのおかげで畳んだシートの床面部分からは小さな部品による張り出しがなく、先代までは存在した細かい突起を排除しました。細かい部分まで含めた完全フラット化を実現したのです。
新型ハイゼットカーゴの商品企画は「商用軽ワンボックス」としての原点に立ち戻って、実用性を磨くことに注力。
その結果得た広さナンバーワンは、開発者のアイデアと涙ぐましい努力の結晶といっていいでしょう。